〜トヨタ傘下で変わった営業力〜
スバル〜高い技術力がトヨタ傘下になって経営に結びついた
富士重工業は2017年4月1日からSUBARUへ社名変更しました。SUBARUの2016年度累計生産台数は約102万台です。トヨタは単体で約900万台を生産しているので、その1/9にも満たない国内最小のメーカーですが、売上高営業利益率では12.4%と国内メーカーではトップに立っています。
過去、何度も倒産の危機を迎えたスバルでしたが、現在は社歴の中でもっとも絶頂期に達しているといえるでしょう。
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水平対向エンジンと4輪駆動の組み合わせは世界でスバルだけ
スバルといえば水平対向エンジンとフルタイム4輪駆動(スバルはAWDと呼称)が最大の特徴です。水平対向エンジンはポルシェが採用、フルタイム4輪駆動はアウディなどが採用していますが、この2つの組み合わせは世界中のメーカーでスバルしかありません。
水平対向エンジンはクランクシャフトを軸にして対抗するピストンが水平方向に動くエンジンのことです。クランクシャフトに対してピストンが垂直に動く直列エンジンに比べ、対抗ピストン同士が振動を打ち消すので低振動に設計できること、エンジン構造を平らにできるので低重心化が図れることなどのメリットがあります。
対抗して水平に動くピストンがボクシングの打ち合いに似ていることからボクサーエンジン、水平構造からフラットエンジンとも呼ばれます。
「ミニが採用しているので興味がない」という理由
水平対抗エンジンを開発したのはメルセデス・ベンツの生みの親であるカール・ベンツで、スバル以前にもいろいろな車種に採用されており、第二次大戦後のフランスで生まれた大衆車、シトロエン・2CVからフェラーリの最高級車テスタロッサにも搭載されています。
スバルが水平対向エンジンを採用したのは1966年に発売されたスバル1000からですが、水平対向エンジンの他に直列4気筒エンジンを横置きにする案もありました。しかし、それが却下されたのは「すでにイギリスのミニがそのシステムを採用しているので興味がない」という理由からです。いかにも技術者集団のスバルらしいエピソードといえるでしょう。
乗用タイプ4輪駆動は大口顧客のリクエストから実現
1966年に発売されたスバル1000は前輪駆動でした。4輪駆動が生まれたきっかけは積雪地帯での需要からです。当時、東北電力は冬期になると4輪駆動の代表的な存在、ジープを使っていましたが積雪に対する走行性能は高くても四季を通じて走行するクルマとしては実用性が乏しいことから、大口顧客となっていた宮城スバルに乗用車タイプの4輪駆動車の制作を依頼します。
これを受けて宮城スバルはスバル1000をベースに4輪駆動車を開発、試作車を本社に持ち込み、試作車の出来栄えが良かったことから世界初の量産乗用タイプ4輪駆動車、レオーネ・エステートバン4WDが誕生しました。地方の販売店から現在のスバルの基幹となる技術が生まれたというのも、小規模自動車メーカーだから可能になったことと言えるでしょう。
トヨタ傘下で変わった営業力の弱い技術屋集団
水平対向エンジンと4輪駆動を装備したレオーネ・エステートバン4WDは未舗装路が多いアメリカの地方都市で絶大な人気を集め、1970年代後半には生産台数を20万台まで伸ばすほど企業規模を拡大しました。ただし高い技術力はあっても営業戦略が不得意であったことから経営状態は思わしくなく、メインバンクとなっている日本興業銀行(現みずほ銀行)から支援を受けるだけでなく、メインバンクを同じとする日産と資本提携を結び、事実上の傘下企業となっていた時期もありました。
2000年に入ると日産が業績不振からスバル株をGMに売却、さらに2005年にはGMが業績不振に陥り、持ち株をトヨタに売却、その後もトヨタはスバルの持ち株を増やし、現在は16.48%を所有して筆頭株主となっています。このように親会社が二転三転しましたが、業績が向上したのはトヨタの傘下企業になってからのことです。
経営を圧迫していた軽自動車とコンパクトカーの開発を中止してマーケットを北米に絞ったことが功を奏し、前述したように国内メーカーではトップとなる売上高経常利益を上げました。技術屋集団のプライドを傷つけることなく上手にリードする辺りに、トヨタの大人感が伝わってきます。
EyeSightやCVTなどに見られるスバルの革新的技術力
スバルの自動車技術開発は水平対向エンジンと4輪駆動に注目されがちですが、これら以外にも古くから技術革新を行なってきました。たとえば現在、軽自動車や小型車のトランスミッションに使われているスチールベルト式無段変速機、CVTはスバルとオランダのVDT社が共同開発を行なって量産化に成功しました。CVTのライセンスは現在、日産の関連会社であるジヤトコに移行していますが、スバルはその後も独自にCVTを改良、リニアトロニックの名称でレガシィやインプレッサといった上位車種にも搭載しています。
スバル車のボディ剛性は世界中で定評があり、走行性だけでなく安全性にも大きく貢献しています。また衝突安全に対しては早くから取り組んでおり、1965年には日本で最初の衝突実験を実施、1989年には現在の予防安全装置EyeSightに使われるステレオカメラに関する研究が開始されています。
EyeSightは最終的に日立製作所、日立オートモティブシステムズと共同開発を行い、2008年にEyeSightを搭載したレガシィを発売しました。現在、EyeSightはVer.3まで進化しており、米国運輸省道路交通安全局が実施する新車アセスメント(NCAP)並びに日本の自動車事故対策機構が行う自動車アセスメント(JNCAP)で好評価を受け、とくにJNCAPでは予防安全評価で満点の40点を獲得、先進安全車プラス(ASV+)と選定されています。
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国内では類を見ないビッグサイズのSUVミニバン
2016年10月に発売された5代目インプレッサは1ヶ月間で月販目標2500台の約4倍強となる約1.1万台を受注しました。国内最小の自動車メーカーとはいえないほどの好調を見せていますが、その一方でラインナップの中に影の薄い車種もあります。
エクシーガ・クロスオーバー7は7人乗りのミニバンですが、ボンネットを設けたピックアップ型で、最低地上高は170mm、全幅は1800mm、全長は4780mmと国内では異例の大型ボディを持つクロスオーバーSUVに仕上げられています。他メーカーと一線を画するミニバンを作る、というコンセプトにスバルらしさが感じられますが、さすがにこのサイズのミニバン需要は少なく、2015年4月から12月までの販売台数は約3,000台強に留まっています。
ただし、単に大きいだけでなくミニバンは必要だけれど走る楽しさをスポイルしたくない、というニッチな需要には十分なコストパフォーマンスを発揮する車種です。
スバルの現行モデル中古車は全体的に高値傾向
スバルの中古車は最近、人気が高くなってきたことから全体的に高値傾向となっています。4ドアセダンのレガシィB4は新車販売価格が約294万円〜であることに対し、現行モデルでは2015年登録車走行距離1〜2万kmの場合でも下落幅はほとんどなく、280〜300万円で販売されています。
先代モデルになると下落幅はやや大きくなり、2013年登録車走行距離2.5〜3.5万kmの場合、190〜220万円が相場となります。現行モデルは高く、先代モデル以前になると下落幅が大きくなる傾向はスバル全車に共通しています。
なお、レガシィとエクシーガ、フォレスターとインプレッサに関しては2006年から2010年にかけて販売された一部の車種にリコールが発生しています。
内容は排出ガス発散防止装置の不具合で、設置されているポンプモーターが高温になって警告灯が常時点灯状態になり、そのまま走り続けていると部品が欠損するだけでなく最悪の場合は火災まで予想されます。該当車種の中古車を購入する際はリコール対象車でないことを確認してください。ただし、対象車であってもディーラーに持ち込めば無償で改善対策を行なってくれます。
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