〜フェアレディZの凋落〜
日産〜ルノーとの共同体制で世界市場シェア拡大を狙う
日本のモータリゼーション中期はトヨタと日産によって牽引されたといっても過言ではありません。
しかし、多チャンネル化で成功したトヨタに対して「1990年代までに技術で世界一を目指す」と目標を掲げていた日産はバブル経済の崩壊と同時に、技術力に頼り過ぎていたことから経営が悪化、やがて1999年にはフランスのルノーと資本提携を結び、事実上の傘下企業となっています。
ルノー=日産アライアンス体制となったことで新車開発は国内よりも世界戦略へシフトされたため、国内の新車販売台数は第4位に甘んじています。
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世界戦略のコストダウンを担う共通プラットフォーム
日本自動車販売協会連合会の2015年度新車乗用車販売台数ランキングを見ると、30位以内に入っている日産車は3台だけ、それもコンパクトカーのノート、SUVのエクストレイル、ミニバンのセレナだけで、かつては日産の象徴的存在であったスカイラインもフェアレディZの名前もありません。
往年の日産を知っているコアなファンに取っては寂しい限りですが、世界85カ国における販売台数ではアメリカのGMに次いで第4位、約852万台を売り上げており、好調な経営状態を続けています。
ルノーの傘下企業となり、日産のCEOにカルロス・ゴーン氏が就任して以来、資産の売却や工場の閉鎖、人員整理といったリストラクチャリングも日産再建に必要な手段でしたが、世界85カ国で好調な販売成績を残している要因はルノーとの共同部品を使うことによる大幅なコストダウンです。
現在、ルノーと日産は共通のプラットフォームを採用しており、両車の主な車種はこれらのプラットフォームから製造されています。以下にその代表的な車種を記します。
アライアンス・Bプラットフォーム
ルノーと日産が初めて共同開発した欧州Bセグメントに対応するFF専用のプラットフォームです。ルノー側ではコンパクト2BOXハッチバックのモデュス、Bセグメントのヒットモデルとなっているルーテシア、また日産と同じくルノー傘下企業となっている台湾の裕隆汽車(ユーロンきしゃ)が販売しているミドルクラスセダン、ラクスジェン5などに使用されています。また日産側では北米向けセダンのセントラやクロスオーバーSUVのジュークなどに使用されています。
アライアンス・Cプラットフォーム
欧州Cセグメントに対応しており、FFまたはFFベースの4WD用でエンジンを横置きにしたプラットフォームとなっています。ルノー側ではミドルサイズの2BOXハッチバックカー、メガーヌや商用車としても人気が高いカングー2に使用されており、日産側ではハイブリッドシステムを搭載したSUVのエクストレイルや5ナンバーサイズミニバンのセレナに使用されています。
アライアンス・Dプラットフォーム
欧州Dセグメントに対応する中・大型FF車専用のプラットフォームです。ルノー側では大型セダンのラティテュードに使用されており、エンジンもティアナと共通で日産が開発したV型6気筒2.5LのVQ25DEが搭載されています。日産側では前述のティアナに加え、フルサイズミニバンのエルグランド、北米専用のクロスオーバーSUVであるQX60などに使用されています。
ドライバーの負担を軽減するプロパイロットシステム
国内では話題性の乏しい日産でしたが、2016年9月にプロパイロットと呼ばれる自動運転技術を5ナンバーサイズミニバンのセレナに搭載して注目を集めました。プロパイロットは高速道路の単一車線内において、ドライバーが約30〜100km/hの間で設定した速度を保ち、また前車との車間距離が近づいた時は一定間隔を自動的に保持する機能です。高速道路の長時間走行や渋滞時、ドライバーの負担を軽減する自動装置として脚光を浴びています。
先行車との距離や高速道路のレーン確認はフロントガラス上部に設置されている単眼カメラが測定します。単眼カメラはこれまでの予防安全装置でも使われていましたが、今回、測距に独自のアルゴリズムを持つイスラエルのモービルアイ社の技術を採用、これに日産の制御技術を連動させてプロパイロットを実現させました。
高速道路、単一車線という制限はあるものの、自動運転は国内初となります。ただし、この自動運転はあくまで運転補助装置であり、事故が起きた時の責任は基本的にドライバーが負うことになります。
新型セレナにアイドリングストップ機能のリコール発生
話題性の高い車種として発売されたセレナですが、その直後にリコールが発生しました。アイドリングストップ機能に不具合が見つかり、その対象車両は9481台になります。アイドリングストップから再始動する際、スターター機能付き発電機の電気回路耐性が不足していることから回路がショート、再始動できなくなるだけでなく発電機が焼損する可能性があるというリコールです。
発電機を対策品と交換することで改善措置としていますが、その準備に時間がかかることから一時的に出荷を停止、また該当車両に乗っているユーザーにはアイドリングストップ機能を停止するようにアナウンスしています。日産の公式サイトでは該当車両を検索できるフォーマットが用意されているので、新型セレナを購入、リコールの通知が来ていないユーザーでも所有車両のチェックをお勧めします。
国内販売では凋落の一途をたどるフェアレディZ
フロントエンジンのスーパースポーツカー、GT-Rはモデルチェンジの度に大きくマスコミに取り上げられるほど注目度の高い車種ですが、その一方で生産中止した2年を含めると45年近い歴史を持つスポーツカー、フェアレディZの凋落ぶりは目を覆うものがあります。
日産の経営危機から生産中止に追い込まれたフェアレディZはコアなファンが多いことからカルロス・ゴーン氏が新開発にゴーサインを出し、2002年に再発売されましたが基本設計はスカイラインと変わらず、エクステリアだけをデザインした派生車種的存在でした。
2008年からの通算6代目となるZ34型はホイールベースを短くして専用シャーシが使われるようになったものの、大排気量のスポーツカーはニーズがないことから販売台数が伸びず、すでに8年経過しているモデルですがフルモデルチェンジの噂も聞かれません。
世界120カ国で販売されており、主に北米をターゲットとしているために大排気量の大型スポーツカーである必要性は理解できますが、国内では マツダのロードスターやトヨタの86などライトウェイトスポーツカーの人気が上昇しつつあります。初代S30型のような原点回帰のモデルチェンジが実現すれば、かつてのZ人気を再び取り戻すことができるでしょう。
中古車市場でプレミア価格となったR34型
日産の中古車はコンパクトカーからSUVまでが平均的相場、ミドルアッパークラス以上になると相場よりやや低めの相場価格になっています。フェアレディZは2011年登録モデルで走行距離4〜5万kmの場合、220〜280万円が中心価格帯で販売店によるバラつきが激しく、スカイラインセダンはハイブリッド仕様が高値傾向にあり、車種によって下落幅が大きく異なるのも特徴のひとつです。
興味深いのはスカイラインクーペに限って、ルノー傘下になる以前の日産が製造した最終モデル、R34型が高値で販売されていることです。2004年登録モデルで走行距離3万km前後のV35型は60〜80万円が中心価格帯と低値傾向ですが、2001年登録モデルで走行距離4万km前後のR34型は180〜200万円が相場となっています。いわゆる絶版車のプレミア価格ですが、それだけ旧日産のコアなファンが今でも多く存在している証と言えるでしょう。