〜ハイルーフのミニバンに引けを取らない快適性〜
ホンダ・オデッセイはセダン感覚のフルサイズミニバン
ホンダのオデッセイは7/8人乗りのフルサイズミニバンです。車内空間を十分に確保しながらもライバル車より車高が低く、スタイリッシュなデザインであることが大きな特徴となっています。5代目となる現行車にはガソリンエンジン仕様の他に、ホンダ独自のシステム「SPORTS HYBRID i-MMD」を搭載したハイブリッド仕様が加わりました。
アコードのプラットフォームで低い車高を実現
初代は1994年に登場しました。当時、シビックやアコードといった2BOXハッチバックやセダンは好調な販売成績を残していたホンダですが、RV(レジャー・ヴィークル)に関してはいすゞからビッグホーンのOEM供給を受けて販売していたホライゾン1車種しかありませんでした。
大人数が乗れて荷物が積めるRV車はバブル経済崩壊と共に高い実用性が人気を集めたことから、ホンダはアコードのプラットフォームを利用して急遽、ミニバンを開発します。セダンと変わらぬ車高で大人数が乗れる実用性が受け、オデッセイは発売と同時に高い人気を集めました。
現行車5代目はそれまでの歴代モデルが後部ドアをヒンジ式にしていたことに対して初めてスライドドアを採用しましたが、低い車高によるセダン感覚のボディは継承しており、スタイリッシュなミニバンのイメージを守っています。フィットで成功したホンダ独自の技術「センタータンクレイアウト」を取り入れたことによって車内空間は大幅に向上、低い車高で高い操縦性を示しつつも、ハイルーフのミニバンに引けを取らない快適性を実現させました。
オデッセイとエスティマの主なスペックを比較
国内で販売されているミニバンの多くはハイルーフにして車内空間を確保しており、オデッセイと同じく低い車高の7人乗りはトヨタのプリウスαやウィッシュなど僅かしかありません。ここではやや車高が高くなりますが、ミニバンの中でもワンフォルムで独特のスタイルを持つトヨタのエスティマをライバル車として主なスペックを比較します。なお、両車とも取り上げたのは販売成績が好調なハイブリッド仕様です。
オデッセイ HYBRID ABSOLUTE | エスティマ ハイブリッド AERAS PREMIUM | |
全長×全幅×全高(mm) | 4830×1820×1685 | 4820×1810×1760 |
客室内寸法 | 2935×1625×1305 | 3010×1580×1255 |
車両重量 | 1740kg | 1970kg |
JC08モード | 26.0km/L | 18.0km/L |
最高出力 | 107kW(145PS)/6200rpm | 110kW(150PS)/6000rpm |
最大トルク | 175N・m(17.8kg・m)4000rpm | 190N・m(19.4kg・m)/4000rpm |
車両本体価格 | 4,000,000円 | 4,391,673円 |
エスティマに比べて全高が低いオデッセイですが、客室内寸法を見ると逆にオデッセイの方が高い数値となっています。これはホンダのセンタータンクレイアウトによるものだけでなく、ハイブリッドシステムの違いが大きく関わっています。
またエンジンとモーターのパワーではエスティマが優位のように見えますが、エスティマはリアのモーターをE-Four(電気式4輪駆動)のために装着しており、滑りやすい路面など後輪が空転する時に作動するシステムになっています。車重が230kgも違うこと、車高が80mm低いことを考慮すると、走行性能や操縦性においてもオデッセイの方が優位に立っています。
ホンダとトヨタで異なるハイブリッドの方式
ハイブリッドシステムはトヨタがシリーズパラレル方式、ホンダがパラレル方式を採用しています。シリーズパラレル方式はエンジンとモーターのパワーを動力分配装置が的確に使い分ける仕組みで、パラレル方式はモーターがエンジンのサポートを行う仕組みになっています。パラレル方式の多くはモーター単独の走行が不可能となっていますが、ホンダは独自に開発したモーターを装着することでモーターだけの走行を可能にしました。
またバッテリーはトヨタが汎用のニッケル水素電池を使用していることに対して、ホンダはコンパクトに収納できるリチウムイオン充電池を使用しています。これを1列目シート床下に配置することで広い車内空間を実現させました。このレイアウトは低重心化にもつながるので操縦性の向上も図ることができます。
2列目はオットマン付きのキャプテンシート
オデッセイはホンダのラインナップでも最上級に位置する車種だけにインテリアは快適性と上質感に包まれています。7人乗りの2列目はキャプテンシートでアームレストとオットマンが標準装備されており、ダッシュボードは木目調パネルとパイピングが施されたソフトパッド仕様になっています。
3列目シートは背もたれを前倒させると床下に収納できるのでラゲッジルームがフラットになり、大容量の空間が出現します。ユーティリティ性でもフルサイズミニバンに引けを取らない機能性を持っているといえるでしょう。車高の高いミニバンに馴染めない人、ミニバンにスポーティな走行性能を求める人には最適の1台となります。
筆者の主観的所見
5代目現行車はフルサイズのミニバンというカテゴリーでは相対的に低い価格となりますが、絶対的な価格としてはけっして安い車種ではありません。車高の低いミニバンを安く購入したいのであれば、先代となる4代目オデッセイを中古車で手に入れるという方法があります。
2008年から2013年まで販売された4代目は車高が1550mmしかなく、都市圏の立体駐車場にも入庫できるサイズでした。この車高が逆にステーションワゴンのような車、として敬遠されたことから5代目はやや車高を高くしていますが、客室内高は1220mmあるので快適性は十分に確保されています。さらにアブソルート・グレードは151kW(206PS)のハイパワーモデルなので走行性能を楽しむこともできます。
最終モデルとなる2012〜2013年登録モデルで走行距離が2〜3万kmという状態の良いアブソルートは約190〜220万円が中心価格帯、3〜5万kmでは160〜190万円の範囲内で状態の良い車種を購入できます。