〜2002年度国内販売台数1位の小型車〜

ホンダ・フィット〜車内快適性でライバル車に差をつける

ホンダのフィットは5ナンバーサイズ(小型車)のコンパクトカーです。初代は2001年に発売され、それまでコンパクトカー市場を二分していたトヨタのヴィッツと日産のマーチという双璧を崩しただけでなく、発売の翌年、2002年には国内販売台数で33年間トップの座を固持していたトヨタのカローラを抜き去って国内販売台数第1位の栄冠をつかみました。現行車は2013年にフルモデルチェンジして3代目となり、ハイブリッド仕様車も設定されています。

メーカー車両情報・ホンダ フィット

二強だったコンパクトカー市場に参入したのがはじまり

フィットが登場した2001年、コンパクトカー市場にはすでに革新的なデザインで人気を集めたトヨタのヴィッツ、コンパクトカーとしての長い歴史から熟成された日産のマーチが販売されていました。ホンダはコンパクトカー市場へ参入する際、この二強の車種に対抗する手段として、車内の快適性と広さを主眼に車種開発を行いました。

ホンダ独自のセンタータンクレイアウト

フィットは全長、全高、ホイールベースにおいてヴィッツとマーチを上回るボディサイズを実現、さらにホンダは車内快適性を高める独自の技術を投入しました。それがセンタータンクレイアウトです。通常、ガソリンタンクはリアシートの後ろとカーゴルームやトランクの間にレイアウトしますが、ホンダはガソリンタンクを前部席の下にレイアウトしたので、車内の前後空間を広げると同時に後部席足元の余裕を確保しました。

特殊樹脂を採用してフレーム強度も高める

ガソリンタンクを車体下部中央にレイアウトすれば重心位置が下がるので車内空間が広くなるだけでなく走行性能も向上します。しかし車体下部は複雑な構造になっており、その空間にフィットさせるタンクの造形は難しく安全性も確保しなければなりません。

ホンダは複雑な形状を作れる特殊樹脂を採用、ガソリンタンクそのものをフレームの強化に結びつけるという手法でセンタータンクレイアウトを実現しました。この独自技術は特許を取得しています。

HIBRIDは燃費効率と走行性能を両立した

2013年のフルモデルチェンジによって3代目となったフィットはセンタータンクレイアウトを引き継ぎながら車体寸法は5ナンバーサイズの規格いっぱいまで引き上げられ、コンパクトカーとしては大ぶりなサイズとなりました。以下に主なグレードの主要スペックを紹介します。

フィットのスペック比較

HIBRID1.5XL1.3G
全長×全幅×全高(mm)3955×1695×1525
車両重量1080kg1070kg970kg
JC08モード36.4km/L21.8km/L26.0km/L
最高出力81kW(110PS)/6000rpm97kW(132PS)/6600rpm73kW(100PS)/6000rpm
最大トルク134N・m(13.7kg・m)/5000rpm155N・m(15.8kg・m)/4600rpm119N・m(12.1kg・m)/5000rpm

HIBRIDモデルは上記にモーターの最高出力22kW(29.5PS)/1313~2000rpm、最大トルク160N・m(16.3kg・m)/0〜1313rpmが加わります。ホンダのハイブリッドシステムは独自のパラレル方式を採用しており、モーターだけの走行が可能です。モーターだけのスペックを見ると、発進時の加速性能はガソリンエンジンの1.5〜1.6Lに匹敵するパワーを発揮しています。

ライバル車はトヨタのアクアとヴィッツ

コンパクトカーの性能面で、燃費効率は大きなセールスポイントとなります。最大のライバルとなるトヨタのハイブリッド専用コンパクトカー、アクアのJC08モードは37.0km/Lなので、わずか0.6km/Lの差をつけられていますが、実質的な走行では差を感じることはないでしょう。アクアはトヨタ独自のハイブリッドシステム、トルクスプリット方式を採用していることからモーターパワーでアクアがやや上回り、エンジンパワーではフィットが大きく上回っています。

またガソリンエンジン仕様の1.3Gにおいてもフィットはトヨタのヴィッツと競っており、燃費ではわずかにフィットが1.0km/Lの差をつけ、最高出力ではフィットが、最大トルクではヴィッツがそれぞれ上回っています。HIBRID同様、実走行で違いを体感できることはないので選択の基準は好みの問題だけといえるでしょう。

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都市圏で実用性重視の人に最適

コンパクトカーは大人4人がゆったり乗れて座席のアレンジ次第では積載量が多くなるという実用性を重視した車種です。軽自動車も同じ実用性を備えていますが、やはり全長と全幅はコンパクトカーの方が大きいので車内空間の余裕が違います。フィットの1.3Gであれば価格は約129.8万円から、と軽自動車のトールワゴンと変わらない価格で購入できます。

市圏での運転機会が多く、買い物や送り迎えなど実用的な使用目的であれば、フィットの1.3Gは最適な車種のひとつです。実用性の高い軽トールワゴンや軽スーパーハイトワゴンは全高が1.6mを超えるため、都市圏に多く点在する立体駐車場を使えないというデメリットがあります。フィットの全高は1.52mに抑えられているので全高を気にすることなく立体駐車場へ入庫できるのも、軽トールワゴンに対するメリットでしょう。

フィットに関する筆者の主観的所見

最近のコンパクトカーやミニバンは空気抵抗を減らすためにフロントウインドウを傾斜させる傾向にあります。とくにホンダは顕著で、フィットもコンパクトカーの中でフロントウインドウがもっとも傾斜しています。

フロントウインドウを傾斜させると、それを支えるフロントピラーの強度を確保するため、太くしなければなりません。フロントウインドの面積が広いと視界も良さそうに感じますが、じつは太いフロントピラーの影響で左右の視界に死角が生まれます。

フィットもその点は十分承知しており、フロントピラーの強度を保ちつつ左右の視界を確保するためにサイドミラーの位置を下げたり三角窓を設けたりしていますが、この三角窓を覗くためには身体を前傾させる必要があります。

購入の際は必ず試乗して両サイドの視界を確認してください。違和感を感じるようであれば、フロントピラーの傾斜角を立たせた日産のマーチやトヨタのパッソを選んだ方が無難です。

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