〜全性能で「過不足なし」を実現したヴィッツ〜

トヨタらしい特徴を捉えているヴィッツのグレード戦略

ヴィッツはトヨタが販売しているコンパクトカーの中でもっとも長い歴史を持つ車種です。初代が登場したのは1999年で、それまで国内需要専門だったコンパクトカーを世界戦略車に位置づけ、衝突安全性能やCO2排出量低減など環境性能を高めた仕様にして発売、海外だけでなく日本国内でも好調な販売成績を残し、コンパクトカーのエポックメイキング的存在となりました。現行車3代目は2010年にフルモデルチェンジ、世界戦略車としての設計思想を引き継ぎつつ、トヨタらしい特徴でまとめられています。


80点主義+αの本当の意味

トヨタの初代カローラが1966年に発売された時、「80点主義+α」という言葉が生まれました。これは走行性能だけでなく安全性能や快適性能など、車に求められるすべての要素を水準以上に高め、その上で車種に個性を与える、つまりプラスアルファを加えるという意味を持ちますが、一時、意味が歪曲されて没個性を意味する「トヨタは80点主義」のような使い方をされました。

日本のモータリゼーションが現在のように熟しておらず、メーカーの車種もユーザーの需要に対して満足に応えられなかった時代だったからこそ、車に求める性能をすべて及第点まで達成するというのは技術的、販売戦略的に見ても高い目標値だったといえるでしょう。トヨタの「80点主義+α」を日本の他メーカーが追従したからこそ、海外で「日本車は壊れにくい」という『個性』が認知されたとも言えます。

3代目ヴィッツは、トヨタが久しく掲げていなかった「80点主義+α」を感じさせる車種です。国内では同社のアクアやホンダ・フィットのハイブリッド勢、マツダのクリーンディーゼルを搭載したデミオとコンパクトカー市場を争い、海外ではヨーロッパのBセグメントでポロやフィアットなどと競い合う状況の中で、突出した個性を持たないヴィッツが健闘しているのは、まさに「80点主義+α」を具現化させていることが大きな要因です。

ニーズの隙間を埋める豊富なグレード

国内販売されているヴィッツの特徴のひとつはグレードを多数用意していることです。エンジンは1.0L、1.3L、1.5Lの3種類を用意、それぞれに装備を簡素化したベースモデルから豪華仕様を設定、さらに足回りを強化したスポーツモデルを独立グレードにするなど、コンパクトカーの需要に対する隙間を作っていません。以下に主なグレードのスペックを紹介します。

F(1.0L)U(1.3L)RS(1.5L)
全長×全幅×全高(mm)3885×1695×1500
車両重量970kg1010kg1040kg
JC08モード24.0km/L25.0km/L21.2km/L
最高出力51kW(69PS)/6000rpm73kW(99PS)/6000rpm80kW(109PS)/6000rpm
最大トルク92N・m(9.4kg・m)/4300rpm121N・m(12.3kg・m)/4400rpm136N・m(13.9kg・m)/4800rpm

上記のスペックを見ても分かるように、燃費や最高出力、最大トルクなど走行性能に関わるカタログ数値では突出した部分がありません。スポーツモデルのRSに至ってはライバルのフィットRSに大きく差をつけられています。(フィットRSの最高出力は97kW(132PS)/6600rpm、最大トルクは155N・m(15.8kg・m)/4600rpm)

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とはいえ、都市圏のストップ&ゴーが多い走行状況ではストレスを感じるほどではないし、F(1.0L)でも高速道路を100km/hでクルージングできる余裕を持っています。車内装備はベーシックなFグレードに比べて豪華仕様になっているUでさえ、その作りは軽自動車並のチープさですが、エアコンスイッチをダイヤル式にするなど運転初心者でも直感的に、安全に操作できるデザインにまとめられています。

欧州Bセグメントでは車内装備の簡素化が常識

トヨタにしては珍しく簡素な車内装備ですが、欧州車のBセグメントを見るとヴィッツが豪華に思えるほど質素かつチープです。Bセグメントの購買層に取って豪華な装備は不必要というのが欧州人の考え方なので、世界戦略車でもあるヴィッツの装備が簡素になるのは当然の結果といえるでしょう。

世界戦略車としては当然でも、そこはトヨタのやることです。国内仕様にはUをベースにして車内装備をさらに豪華にしたJewela、RSでは物足りないスポーティ派のためにスポーツキットを組み込んだG’sを用意しています。また国内のコンパクトカーで1.0Lを設定しているのはヴィッツ以外、同社のパッソ(ダイハツではブーンのネーミングで販売)しかありません。まさに隙のないグレード戦略です。

コストパフォーマンスに優れているのはF1.3Lグレード

ヴィッツほどグレードが充実していると、どれを選んでいいのか迷うところですが、どれを選んでも大きな満足感や所有感はないけれど、後悔もしないのが「80点主義+α」の特徴です。その中で、あえてお勧めのグレードを選ぶとしたらFの1.3Lモデルです。

1.0Lエンジンでは坂道や高速道路でさすがにパワー不足を感じるという人でも走行に余裕が生まれますし、Uでは標準装備されているアクティブセーフティーの「トヨタ・セーフティセンスC」は54,000円で、パッシブセーフティのSRSサイドエアバッグは43,200円でそれぞれオプション装着できます。F1.3Lの車両本体価格は約144.8万円、Uは1.3Lでも約175.0万円なので、その差額を考えるとF1.3Lがもっともコストパフォーマンスの良いグレードといえます。

ヴィッツに関する筆者の主観的所見

車は実用性を重視するほど趣味性は失われていきます。車に趣味性を求めない人に取っては車の実用性に過不足を与えないヴィッツは最適の車種ですが、その割に車両本体価格が高く設定されています。

価格帯の中心となるF1.3Lグレードの車両本体価格は約144.8万円、ライバル車のフィットは同じ1.3LモデルのGグレードが約129.9万円、日産のマーチはミドルグレードのXが約133.2万円といずれもヴィッツを下回っています。G’sにいたっては約209.6万円と、欧州輸入車のCセグメント車に匹敵する(プジョー208Styleは約199万円)価格となっています。過不足のない実用性モデルとしては、コストパフォーマンスで他社より優れているとは言えません。

トヨタはライバル車と競合させた時に比較的値引き幅が大きいので、購入の際はできるだけ競合させて実用性に見合った価格まで値引き交渉を行なった方が得策です。

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