〜国内販売では低迷している〜

日産マーチ〜運転しやすいボディサイズとデザイン

マーチは日産が販売しているコンパクトサイズの2BOXハッチバックカーです。1980年代はトヨタのスターレットとコンパクトカー市場を二分していたこともありましたが、フルモデルチェンジのスパンが10年と国産乗用車では珍しく長いことから、激戦区となっている現在のコンパクトカー市場では知名度が低く、国内販売では低迷しているのが現状です。

メーカー車両情報・日産 マーチ

2代目マーチはコンパクトカーの革命児

マーチは歴史の長い車種で、初代は1982年に登場しました。トヨタはすでに1978年から2BOXハッチバックのスターレットを販売しており、好調な売れ行きを示していたことから日産もコンパクトカー開発に着手、ライバルとなるマーチを発売します。

スターレットがラリーやレースなどの参加車両として人気が高かったので、日産もマーチのホットモデル、マーチRを発売した経歴があります。この車種はマーチのボディをさらに軽量、エンジンはダウンサイジングで高回転型にした930ccインタークーラー付きツインターボチャージャーを搭載するというモータースポーツ対応車で、販売台数だけでなくプライベート・レースの市場でも両車は激しく競い合いました。

2代目マーチは1992年に発売されました。日本だけでなく欧州のAセグメント(より小さいコンパクトカーサイズ)へ投入する世界戦略車という位置づけから広い車内空間と優れたデザイン性が与えられ、高い評価を受けました。コンパクトカー市場の革命児とまで称された2代目マーチはライバルが存在せず、1996年度には14.2万台の販売実績を残しています。

マーチとヴィッツの主なスペックを比較

現行車は2010年にフルモデルチェンジされ、4代目となります。3代目の丸いキャビン部を引き継ぐエクステリアをしていますが、新設計のプラットフォームによって製造されており、ベルトラインから下をボリュームアップさせているので安定感のあるフォルムとなっています。ここではスターレットの後継車となったヴィッツとの主なスペックの比較を行います。

マーチ(G)ヴィッツ(U)
全長×全幅×全高(mm)3825×1665×15153885×1695×1500
客室内寸法1905×1370×12701920×1390×1250
車両重量950kg1010kg
JC08モード23.0km/L25.0km/L
最高出力58kW(79PS)/6000rpm73kW(99PS)/6000rpm
最大トルク106N・m(10.8kg・m)4400rpm121N・m(12.3kg・m)/4400rpm
車両本体価格1,557,360円1,750,582円

車体寸法はヴィッツの方が小型車枠(5ナンバーサイズ)をフルに使っていることに対してマーチは全幅をあえて30mmの余裕を残していますが、客室内寸法はほとんど変わりありません。エンジン性能はヴィッツが上回っていますが、これはヴィッツの1.3Lであることに対してマーチは1.2Lと排気量が少ないことによるものです。

燃費効率ではわずかにヴィッツが優っていますが、2.0km/Lのデータ差は実際の走行になればほとんど影響がなくなるでしょう。主なスペックの比較を見るとマーチは案外、健闘しているといえます。

予防安全装置の設定がないマーチ

マーチのウィークポイントはパッシブセーフティにあります。ヴィッツUグレードはトヨタの最新予防安全装置Toyota Safety Sense Cを搭載しており、単眼カメラとレーザーレーダーによって前方の障害物や車両を検知、回避行動を取るだけでなく車線や対向車ヘッドライトを検知して安全性を高めています。

マーチはエアバッグシステムを始めとするアクティブセーフティ機能は備わっていますが、予防安全装置に関しては設定そのものがありません。現在の乗用車は予防安全装置が欠かせない存在となっているだけに、安全面を優先するのであれば車両本体価格が高くてもヴィッツの購入をお勧めします。

軽自動車からのステップアップに最適の車種

予防安全装置の有無を別にすれば、初心者や軽自動車からステップアップする人には最適の1台です。コンパクトカーの中ではもっともボディサイズが小さく、フロントピラーの傾斜が比較的立っているのでボンネットの両端が見え、運転しやすい車種にまとめられています。

ユニークな機能として上げられるのがタイヤアングルインジケーターです。これはセンターメーターの中央にディスプレイがあり、前輪の切れ角度と進行方向を表示する仕組みになっています。バック駐車や縦列駐車の際、前輪の角度が分からなくなって前進と後退を繰り返す光景はよく見かけますが、そんな時にあると便利なのが、このインジケーターです。

筆者の主観的所見

最近のスポーツカー事情のひとつに、モータースポーツのための設計や製造を行う子会社が市販車へ積極的に参加する傾向が見られます。トヨタはGAZOO Racing、日産はNISMOがそれぞれヴィッツとマーチのコンプリートカーを製造販売しており、1980年代のスターレットとマーチのボーイズレーサーを連想させます。

ボーイズレーサーとはコンパクトカーに専用チューンを施したホットモデルの俗称です。マーチは販売台数でヴィッツに大きな差をつけられていますが、ホットモデルのG’sとNISMOでは明らかにマーチの方が優勢です。G’sはサスペンションやハンドリングのチューニングとボディ補強を改良ポイントにしていますが、NISMOはそれらに加え、エンジンも専用チューンの1.5Lを搭載して走行性能を高めています。

気になる価格はG’sが2,096,182円、NISMOが1,842,480円と約25万円以上も開いており、コストパフォーマンスでもNISMOが上回っています。ボーイズレーサーは若年層でも無理なく購入できてスポーツ走行を楽しめることが条件です。マーチNISMOはその条件を十分に満たしているといえるでしょう。

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