〜広々とした視認性も特徴〜
ホンダ・フリード〜3列目シートにゆとりを生み出す
ホンダのフリードは国内販売車の中でもっともボディサイズの小さい7人乗りミニバンです。コンパクトカーと同等の取り回しの良さに加えて多人数の乗員に対応でき、積載能力も高いという実用性が大きな特徴となっています。
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世界で初めて重希土類フリーのモーターを採用
初代はヨーロッパの路面電車をイメージしたモビリオの後継車として2008年に登場しました。エクステリアはフィットのサイズを拡大したように見えますが、実際にフィットのプラットフォームを使っているのはフロント部分だけで、前輪以降のフロアパンに関してはフリード専門用に改良を行なっています。
ホンダは当初、月別販売台数の目標を4,000台としていましたが、コンパクトサイズでありながら7人が乗れる実用性が高い評価を集め、発売1ヶ月後には2万台の販売を達成、2008年下半期におけるミニバン販売台数で第1位を獲得しています。
現行車2代目は2016年9月にフルモデルチェンジされました。メイングレードはハイブリッド車に設定されており、世界で初めて重希土類元素に頼らないネオジム磁石を使ったモーターを搭載しました。
このモーターが直接ユーザーの利益につながることはありませんが、ジスプロシウムやテルビウムといったモーターに使う重希土類元素は有力鋼床が偏在しているため、調達やコストが不安定であるリスクを抱えています。
ロングスパンで見れば、重希土類元素を使わないモーターはハイブリッド車の安定供給につながり、脱石油依存という日本の国家政策にも反映します。
ミドルクラスミニバンと主なスペックを比較
フリードは全長が4265mmしかないことからコンパクトミニバンと称されています。トヨタのノアやホンダのステップワゴンはミドルクラスミニバンと呼ばれていますが、全幅はフリードと同じ5ナンバーサイズ枠の1695mmです。ここではコンパクトミニバンとミドルクラスミニバンがどのように違うのか、ステップワゴンの主なスペックと比較して検証します。
フリード HYBRID G | ステップワゴン B | |
全長×全幅×全高(mm) | 4265×1695×1710 | 4690×1695×1840 |
客室内寸法 | 3045×1455×1275 | 3220×1500×1425 |
車両重量 | 1430kg | 1630kg |
ホイールベース | 2740mm | 2890mm |
走行ユニット | 1.5L直列4気筒DOHC + ハイブリッドシステム | 1.5L直列4気筒DOHC |
JC08モード | 27.2km/L | 17.0km/L |
スペック表の比較を見て分かるように、両車の全幅は同じ5ナンバーサイズですがホイールベースが大きく異なっています。ホイールベースは車種のボディサイズを決める上でもっとも重要な部分であるため、全長や全高、さらに最小回転半径まで影響が及んでいます。車内が多少、狭くなっても運転のしやすさを選ぶならコンパクトミニバン、小回りが多少、劣ってもユーティリティ性の高さを選ぶならミドルクラスミニバンとなります。
なお、搭載されているエンジンは共にL15B型ですが、フリードに搭載されているのは低燃費タイプのアトキンソンサイクルで、通常タイプより20PS少ないチューニングとなっています。このパワーダウンを補うためにハイブリッドシステムが採用されているので、走行性能に関しては一概にどちらが優れているとは言えません。ただし燃費効率に関してはフリードが断然優位に立っています。
ハイブリッドユニットを移動させて者な空間を拡大
全長が短いコンパクトミニバンに取って3列目シートは緊急用であり、大人2人が長時間乗って耐えられる広さを持ちあわせていませんでした。しかしフリードは今回のフルモデルチェンジで3列目シート下に配置していたバッテリーなどのハイブリッドユニットを小型化して1列目シート下に移動させました。この改良によって1〜3列目シートの間隔が90mm拡大、大人2人が3列目シートに乗っても快適さが保たれる空間を作り出しています。
またハイブリッドユニットを移動したことでラゲッジスペースの開口部も向上しました。開口部高さは1110mm、最大幅は1080mmと広く、地上高は480mmと低いので3列目シートの片側だけを跳ね上げればベビーカーを立てたまま、また左右のシートを跳ね上げれば26インチ自転車を容易に積載することができます。
意外と多人数乗車の機会が多い女性ドライバーに最適の車種
コンパクトミニのサイズですがインテリアは高い質感でデザインされており、機能性と斬新なアイデアが詰め込まれています。メーター類は薄型にしてフロントウインドウに近づけてメーターと前方の視線段差を少なくしており、インパネからダッシュボードまでは水平基調でスイッチ類をフラットに配置して操作性を高めています。メーター照明色を任意で6色から選べるという小技もホンダらしい特徴といえるでしょう。
小さな子供のいる家族の場合、6〜7人乗車の機会は個人差があるものの、意外と多く遭遇します。夫婦2人にどちらかの両親と子供、あるいは子供が所属する野球やサッカーのメンバーの送迎など、いろいろな状況で多人数乗車の場面があります。主に女性が運転する場合、軽スーパーハイトワゴンでは乗員定員が足りないけれど、ミドルクラスミニバンでは大きくて不安、という人もけっして少なくないでしょう。そういった女性に取ってコンパクトミニバンのフリードは最適な1台となります。
筆者の主観的所見
ホンダ車のコンパクトカーは空気抵抗を減らすためにフロントウインドウの傾斜角度を低くしていることが特徴で、確かに燃費効率は上がっているのですがフロントピラーの面積が大きくなることから車体左右前方の視認性が悪くなるというデメリットを抱えていました。
このデメリットを解消したのが新型フリードです。フロントウインドウはルーフとの継ぎ目を改良して運転席からの見上げ角度を広げ、左右の三角窓を形成する2重のフロントピラーは形状を細くして最適化、左右前方の視認性を高めています。車の機能というと車内の広さや使いやすさなど実用性に目が向きがちですが、それ以上に大切なのが運転のしやすさです。フリードに限らず、購入の際の試乗で運転席に座った時、違和感がなく広々とした視認性であることを確認しましょう。