〜コンパクトタイプのトールワゴン〜

スズキ・ソリオ〜パラレル方式のハイブリッドを採用したコンパクトワゴン

スズキのソリオは全高1.7mを超えるコンパクトタイプのトールワゴンです。同社の軽自動車、ワゴンRをそのまま拡大したようなエクステリアと高いユーティリティ性を引き継いでいることが特徴となっています。2016年10月のマイナーチェンジでは発電も可能な駆動用モーターとスズキが独自開発したトランスミッション、オートギアシフト(AGS)を搭載したハイブリッド車が登場しました。

メーカー車両情報・スズキ ソリオ

新設計プラットフォームで990kgの車重を実現

スズキはコンパクトトールワゴンのジャンルに早くから取り組んでおり、1997年にはワゴンRの販売好調を受け、共通部品を多用したワゴンRワイドを発売しています。当時、コンパクトクラスは2BOXハッチバックタイプが主流だったことからワゴンRワイドの利便性は高く評価され、その後、日産のキューブやトヨタのbBなどが相次いで登場、コンパクトタイプのトールワゴンという市場が形成されました。

4代目となる現行車は2015年8月に発売されました。現在、スズキは脱軽依存をテーマにコンパクトカーの開発を盛んに行なっており、4代目はその基幹技術となる新設計のプラットフォームが初採用されました。また軽自動車で培った軽量化の技術が活かされ、ボディ剛性や車内の静粛性を高めながらガソリンエンジン車では930kg、ハイブリッド車でも990kgとコンパクトサイズのトールワゴンでは最軽量の車重を実現しています。

システムをコンパクトにして広い車内空間を確保

スズキのハイブリッドシステムはこれまでS-エネチャージと呼ばれるマイルドハイブリッドが使われていました。エンジンとトランスミッションの間にモーターを設置、エンジンパワーをアシストするだけのシンプルなシステムですが、2016年10月のマイナーチェンジではモーターだけで走行できるパラレル方式が初採用されました。

マイルドハイブリッドやガソリンエンジン車も継続して販売されているのでユーザーは3タイプの駆動方式から選ぶことができます。

MGUと呼ばれるモーターの最高出力は10kW(13.6PS)、最大トルクは30N・m(3.1kg・f)とけっしてハイパワーではありませんが、深夜や早朝に自宅付近の住宅街でエンジン音を響かせることなく入出庫させるには十分な力を発揮します。

カーゴスペース下にはMGUに電力を供給すると同時に、MGUによる回生エネルギーを蓄電するパワーパックが装備されています。パワーが小さいとはいえ、一般的なパラレル方式のシステムを全搭載していながら車重は1tを切り、ガソリンエンジン車と同等の車内空間を確保していることは特筆すべき点でしょう。

日産のキューブと主なスペックを比較

コンパクトタイプのトールワゴンでロングセラーを続けているのが日産のキューブです。ネーミングが示すようにボンネット部分とキャビン部分はキューブ状にデザインされていますが、ボックスのエッジを立てず丸みを与えたことによってソフトなイメージに仕上がっている車種です。ここではキューブと主なスペックの比較します。

ソリオ HYBRID SXキューブ15G
全長×全幅×全高(mm)3710×1625×17453890×1695×1650
客室内寸法2515×1420×13601950×1395×1275
車両重量990kg1210kg
ホイールベース2480mm2530mm
JC08モード32.0km/L19.0km/L
最高出力67kW(91PS)/6000rpm82kW(111PS)/6000rpm
最大トルク118N・m(12.0kg・m)/4400rpm148N・m(15.1kg・m)/4000rpm
車両本体価格1,917,000円1,987,200円

ボディサイズはキューブが一回り大きく、エンジンパワーもソリオを上回っていますが、それでもスペックだけを比べてみてもソリオとキューブに設計の新旧が表れています。客室内寸法は圧倒的にソリオが広く、走行性能においてもモーターがエンジンをアシストすることに加え、車重が200kg以上軽いためパワーで劣ることはありません。なにより経済性の指針となるJC08モードは歴然の差がついています。

コンパクトワゴンはユーティリティ性重視の新世代へ

初代ソリオに次いで発売されたキューブやbBは差異化を図るために個性的なエクステリアを採用しました。現行車3代目キューブはマイナーチェンジを繰り返しているものの、基本設計は2008年発売当時のままで、依然として個性的なエクステリアを持つ反面、ユーティリティ性や経済性に劇的な向上は見られません。

対してソリオは実用性を重視したエクステリアにまとめられており、軽自動車のヒットジャンルであるスーパーハイトワゴンのユーティリティ性を盛り込んでいます。コンパクトタイプのワゴンは再び実用性重視の時代に入ったといえるでしょう。

軽自動車の狭い空間を有効に使うノウハウが蓄えられているスズキだけに、ソリオの車内はユーティリティ性に優れています。後部ハッチバックドアの開口部はボディサイズぎりぎりまで広げられており、開口高は960mm,開口幅は1065mmと広く、荷室開口地上高は665mmと低いので重い荷物も比較的ラクに積み下ろしができ、後部席背もたれを前倒させれば20インチ自転車を2台積載できます。

軽スーパーハイトワゴンからのステップアップに最適な車種

後部ドアは両側ともスライド式で、開けた時の張り出し量は155mmに抑えられているため、公的な駐車場で小さな子供がドアを不注意に開けた時でも両隣の車種を傷つける心配がなく、スライドドア開口部のステップ高は360mmしかないので後部乗降に気を使う必要もありません。ユーティリティ性やクルマとしてのホスピタリティは5ナンバーミニバンに匹敵するデザインとなっています。

ソリオの設計思想は軽スーパーハイトワゴンの拡大版といえるでしょう。コンパクトワゴンはこれまで2BOXハッチバックタイプの延長線上に考えられていたことからユーティリティ性に関しては軽自動車にも劣っていた部分があります。軽スーパーハイトワゴンでは狭さを感じるけれど5ナンバーサイズのミニバンでは運転に不安を覚える人に取って、ソリオはステップアップに最適の車種となります。

筆者の主観的所見

スズキ独自のトランスミッション、AGSがようやくハイブリッドシステムを搭載することによって汎用化が実現しました。AGSとはAuto Gear Shift(オートギアシフト)の略で、MTをベースにクラッチやシフト操作を自動制御で行うトランスミッションです。ATのようにアクセルとブレーキの2ペダルで操作できるのでAT限定免許証でも運転でき、MT並の燃費効率を記録できることが特徴です。

AGSはこれまで燃費効率を優先するアルトのスタンダードモデルやハイパワーのターボRSなどに搭載されてきましたが、変速ショックが大きく改良の余地が残されていました。今回、ハイブリッド用のMGUが変速時に落ちるエンジン回転を補う制御が組み込まれたため、スムーズな変速を実現、またマニュアルモードの設定があるのでMTのように俊敏な走行を楽しむこともできます。

ソリオに搭載されたハイブリッドシステムとAGSはスズキの最新技術となるだけに、これらを装備したニューモデルが登場することは十分に予想されます。軽自動車では遊び心満載のハスラーやスパルタンなスポーツモデル、アルトワークスを販売しているだけに、小型車でも実用性に加えてクルマの楽しさを持つ車種の登場を期待したいところです。

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