〜トヨタのハイブリッドを支える最新技術が満載〜

トヨタ・プリウス〜フルモデルチェンジで車内快適性を高めた

世界でもっとも売れているハイブリッドカー、トヨタのプリウスは2015年12月にフルモデルチェンジを行い、4代目となりました。プリウスを象徴するエクステリアデザイン、トライアングルシルエットを引き継ぎながらも細部を大胆に変更、熱効率を40%向上させ、ハイブリッドシステム全体の20%軽量化を成功させるなど、これからのトヨタのハイブリッドを支える最新技術が数多く投入されています。

メーカー車両情報・トヨタ プリウス

初代の販売台数は年間2万台以下だった

1997年に登場した初代にはトライアングルシルエットが採用されておらず、5ナンバーサイズの4ドアセダンでした。車両本体価格が215万円で、同クラスのカローラよりも60万円近く高く、しかもハイブリッドシステムが浸透していないこともあって2003年までの販売期間中、販売台数が2万台を超えることはありませんでした。

プリウスが爆発的ヒットとなったのは2009年に登場した3代目です。2代目から採用されたトライアングルシルエットを拡大、3ナンバーサイズにしてキャラクターラインを設けるなどエクステリアに抑揚を与え、ハイブリッドシステムも全体の9割以上を新開発したタイプに変更されました。

エコカー減税政策も手伝って発売開始から1ヶ月間で約18万台を受注、2009年6月から2010年12月まで19ヶ月連続で新車販売台数の首位を獲得した他、年間販売台数では2011年まで3年連続首位を記録しています。

3代目プリウスとのスペック比較

先代モデルが爆発的なヒットを記録すると、その後継車の開発はとても難しくなり、先代をできるだけ踏襲しようとすると必ず失敗します。トヨタはプリウス4代目開発に際してトライアングルシルエットだけを継承し、先代の面影すら消してしまうほどの大胆な設計変更を行いました。以下に3代目と4代目の主なスペックを紹介します。

3代目Sグレード4代目Sグレード
全長×全幅×全高(mm)4480×1745×14904540×1760×1470
客室内寸法1905×1470×12252180×1350×1400
車両重量1350kg1360kg
エンジン最高出力73kW(99PS)/5200rpm72kW(98PS)/5200rpm
エンジン最大トルク142N・m(14.5kg・m)/4000rpm142N・m(14.5kg・m)/3600rpm
モーター最高出力60kW(82PS)53kW(72PS)
モーター最大トルク207N・m(21.1kg・m)163N・m(16.6kg・m)
JC08モード30.4km/L37.2km/L

4代目はボディサイズを拡大したことで客室内寸法も格段に広がっていますが、これはボディサイズだけでなくハイブリッドシステムのコンパクト化も大きく関わっています。4代目のモーターは3代目の3JM型から2016年に新開発された1NM型に変更されました。4代目プリウスが初搭載で、3JM型より小型・軽量化されており、システム全体の省スペース化を可能にしています。

細部まで及ぶ空力性能向上のデザイン

3代目からのモデルチェンジで、モーターの変更と並んで大きく改良されたのが空力性能と車内の快適性です。エクステリアデザインはフロントマスクがアグレッシブであることから好みの分かれるところですが、これはデザイン性より空力性能を重視した結果です。

とくにフロント両サイドのえぐられたようなバンパー部分はエアロスタビライザーフィンと呼ばれ、正面からの空気抵抗をボディ下部やフロントピラーに沿って後方へ流す役目をしています。

さらにトライアングルシルエットの頂点を前方に移動させて後端を低く抑え、フロアアンダーカバーを取り付けて床下の空気整流も高めました。この空力性能によって空気抵抗係数を表すCD値は量販車の中でトップクラスとなる0.24を実現しています。

前席シートは運転者の筋負担まで研究して改良

前席シートは座った時の筋肉の使い方まで研究してシートのバネ位置を調整、ヒップポイントを筋負担のもっとも少ない高さに設計したことを始め、後部席のヘッドクリアランスを向上、ハイブリッドのメリットを活かしたAC100Vのコンセントやスマートフォンを置くだけで充電できるシステムをセンターコンソールに設置しています。

現在、国産車ハイブリッドのほとんどはガソリンエンジン車を併売しており、プリウスのようにハイブリッド専用パッケージとなっている車種は同社のアクアを始め、わずかしかありません。とくにプリウスサイズはかつてホンダがインサイトを販売していましたが、2014年に販売を終了した以降、ライバル車が存在していない状況といえるでしょう。

高い環境意識を持った人に最適の車種

ミドルクラスの車種としては車両本体価格が低く抑えられており、装備が比較的充実しているSグレードでも約247.9万円に設定されています。プリウスの購入に向いているのは家族構成や性別ではなく、車を運転する楽しさよりもガソリン消費率を下げてCO2排出量を軽減する、という目的意識を持った人でしょう。

実際、カリフォルニア州では厳しい排ガス規制をクリアした唯一のガソリンエンジン車として脚光を浴び、環境問題に配慮していることをアピールしたい富裕層が購入、公式の場にプリウスで登場する機会が多くなった時期もあります。所有者に従来の車種とは違った資質を求めてくる点こそプリウスの大きな特徴ともいえます。

筆者の主観的所見

現在、世界中の自動車メーカーでハイブリッドをエコカーの主軸に置いているのはトヨタとホンダだけです。他メーカーもハイブリッド仕様を用意していますが、主軸にしておらずそれぞれのメーカーの思惑で次世代エコカーの模索をしているところ、と言えるでしょう。

ハイブリッド車の燃費効率がカタログ値ほど高くなく、ガソリンエンジン車もダウンサイジング化で燃費効率を高め、両車種の差がそれほど大きくなくなっている、ということに消費者も気が付き始めています。

とくに欧州では「2021年までに新車の二酸化炭素(CO2)排出量を1km当たり95g以下にする」という2021年規制が義務づけられています。これをクリアするためにはプラグインハイブリッドやクリーンディーゼル(ディーゼルエンジンはガソリンエンジンよりもCO2排出量が少ない)でなければ無理という判断を下しており、ハイブリッドを主軸に置くメーカーはありません。

将来、ハイブリッド車がガラパゴス化する懸念は以前より指摘されており、トヨタも次世代エコカーとして水素燃料電池車「MIRAI」を開発、すでに販売へ踏み切っています。とはいえ、各メーカーが共通して採用する次世代エコシステムが見つかっていない現在、当分の間は国内でハイブリッドの優位性が保たれることは確実です。プリウスを始めとするハイブリッド車の優位性を体感したいのであれば、今がその絶頂期といえるでしょう。

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