〜ご近所に水素ステーションはありますか?〜

トヨタMIRAI〜10年先の車社会を考えて開発された水素燃料電池車

トヨタMIRAI(ミライ)は圧縮水素を電気に変えてモーターを駆動させる水素燃料電池車です。量産型としては世界初となりますが、生産体制が整っておらず、年間生産台数は700台前後に留まり、価格も約723万円と高額設定になっています。2015年にはトヨタ、ホンダ、日産が燃料供給の水素ステーション整備促進に合意して共同支援することを発表していますが、2016年の段階では全国に83基しか設置されておらず、普及にはまだ時間が必要と予想されています。


発電による排出物は水だけという環境性能

MIRAIが走行するシステムを簡単に説明すると以下のようになります。

  1. 圧縮した水素を車両の水素タンクに充填する
  2. 水素と空気中から取り入れた酸素をFCスタックと呼ばれる燃料電池に送る
  3. FCスタック内で水素と酸素が化学反応を起こして電気を発生させる
  4. 電気をバッテリーに蓄電しながらモーターへ供給する
  5. モーターだけの駆動なので水素と酸素の化学反応によって生じた水のみを排出する

水素は宇宙でもっとも豊富に存在する元素で、水の電気分解だけでなくバイオマスやゴミからも作り出すことができることから石油の代替エネルギーとして研究が続けられています。ただし空気との混合率が4.1%から74.2%と広い範囲で爆発するため、漏出しない技術が重要になってきます。

水素を貯蔵するために開発された高圧水素タンク

またガソリンエンジン車が満タンにした時と同等の走行距離、約500kmを走行するためには常温常圧下で約61,000L、約5kg相当の水素が必要となり、これをタンクに収めるためには70MPa(70メガパスカル:約700気圧相当)の高圧をかけなければなりません。

この圧縮水素を貯蔵できるように開発されたのが高圧水素タンクです。水素は金属脆化(きんぞくぜいか:鋼材に吸収された水素が鋼材の強度を低下させること)を起こすので使用されている素材はタンク内部にプラスチックライナー、その外周を炭素繊維強化プラスチック層が包み、さらに外周はガラス繊維強化プラスチック層で囲むという3重構造にして世界でも最高水準の高い安全性を確保しています。

ホンダのクラリティ・フューエル セルと主なスペックを比較

トヨタに次いで、ホンダも水素燃料電池車クラリティ・フューエル セルを2016年3月に発売しました。ただし官公庁や企業へのリース契約のみで、一般消費者への販売は2017年度中に予定されています。ここではクラリティ・フューエル セルとの主なスペックを比較します。

MIRAIクラリティ・フューエル セル
全長×全幅×全高(mm)4890×1815×15354915×1875×1480
客室内寸法2040×1465×11851950×1580×1160
車両重量1850kg1890kg
FCスタック最高出力114kW(155PS)103kW(140PS)
モーターパワー113kW(154PS)
335N・m(34.2kg・m)
130kW(177PS)
300N・m(30.6kg・m)
一充填走行距離約650km約750km
タンク容量前方60.0L/後方62.4L前方24.0L/後方117L
車両本体価格7,236,000円7,660,000円

両車ともにボディサイズや客室内寸法を国内のフラッグシップモデルとなる高級セダンとほぼ同じ大きさ・広さにまとめています。またホンダは高圧水素タンクの圧力を70MPa仕様にしており、トヨタと同規格にすることで水素ステーションの共通化に貢献しています。

価格に見合った近未来的でラグジュアリーなインテリア

MIRAIがFCスタックなどのパワーユニットを床下へ収納したことに対して、クラリティ・ クラリティ・フューエル セルはパワーユニット全体をコンパクトに設計、ボンネット内へ収容することに成功しました。この結果、MIRAIの乗員数は4名ですが、クラリティ・ クラリティ・フューエル セルは5名乗車を実現しています。なお、どちらも後部席後方に高圧水素タンクをレイアウトしているため、トランクは9.5インチゴルフバッグが3個積める程度の容量しかありません。

インテリアは700万円超の高級セダンに相応しいラグジュアリーな装備となっています。ホワイトとブラックのモノトーンでまとめ、メーター類はすべてセンターディスプレイに集約、トランスミッションを使わないのでセンターコンソールにはレバー類がなく、エアコンやオーディオはすべてタッチパネルで操作するという、近未来的なデザインが採用されています。

購入条件は近隣に水素ステーションがあること

センターディスプレイには一般的な速度表示や航続可能距離に加え、水素燃料電池車特有のFCシステムインジケーターやエネルギーモニター、給電モニターなども表示できる機能を持っており、ガソリンエンジンとのハイブリッドシステムより細かな情報量が用意されています。これらを常時使用するかはともかく、表示切り替えを行うだけでも未来のクルマを操作しているという実感を得られるでしょう。

走行中に排出するのは水だけという環境性能、自然吸気エンジン3.0Lに相当する最大トルクの発揮など、水素燃料電池車は電気自動車と同じくガソリンエンジン車を凌ぐポテンシャルを持っています。しかし現段階では購入の条件として700万円超の予算に加えて水素は電気自動車のように自宅で充填できないため、近隣の水素ステーションが不可欠となります。現在、高圧水素の平均価格は1,000円/kgなのでガソリンよりも安上がりになりますが、購入前には必ず近隣に水素ステーションがあることを確認してください。

筆者の主観的所見

水素ステーションは高圧水素を貯蔵する保管場所や充填のための設備が高額になること、設置しても稼働率が低いこと、高圧ガス保安法第5条によって一般ドライバーがセルフ充填できないために人件費もかかることなどの理由から整備状況が遅れています。

水素燃料電池車が安く販売されるか、水素ステーションの整備が先か、いずれも「鶏が先か卵が先か」という因果性のジレンマにつながりますが、一般消費者の視点で見ると電気自動車用の充電ステーションが日本各地に数多く設置されるようになり、さらに日産のe-POWERのようなECOハイブリッド車が登場してくると、水素燃料電池車の価格が安くならない限り購入に意欲的な人は少数に限られるでしょう。

トヨタが1997年にプリウスを発売した当時、年間販売台数は2万台を超えることはありませんでした。しかし、その10年後となる2007年には販売累計台数が100万台に達しています。MIRAIは水素ステーションの充実という条件を抱えているので一概にプリウスと比較することはできませんが、それでもトヨタの底力は侮ることができません。MIRAIの成否は10年後まで待つ必要があります。

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