〜自家発電装置の役割も兼ねている〜
三菱アウトランダーPHEV〜アウトドア・レジャーが趣味ならば最適の車種
三菱自動車のアウトランダーPHEVはミドルサイズのクロスオーバーSUVでプラグインハイブリッドシステム(PHEV)を搭載しています。現在、国内で販売されている車種でPHEVを搭載しているのはアウトランダー以外ではトヨタのプリウスしかありません。ルノー=日産アライアンスの傘下企業となって活気のない三菱自動車の中で、唯一、注目度の高い車種となっています。
クロスカントリーラリーに出場してシステムの進化を図る
PHEVはガソリンエンジンと駆動用モーターを装備、電気自動車のように外部電源からバッテリーに充電可能で、駆動用モーターだけで走行できます。バッテリーの蓄電残量が減るとエンジンだけで走行することも可能で、その際に発生する回生エネルギーをバッテリーに蓄電、ハイブリッドシステムと同じように駆動用モーターをエンジンのアシストにすることもできる、いわば電気自動車とハイブリッドの両面を備えているシステムです。
ヨーロッパではクリーンディーゼルエンジンに対する規制がさらに厳しくなることから各メーカーともPHEVの開発に取り組んでおり、メルセデス・ベンツやBMWなどはすでに主力車種にPHEV仕様を設定しています。国内では主要メーカーが依然としてハイブリッド主導であるため、前述したようにアウトランダーとプリウスの2車種しか販売されておらず、PHEVの普及にはまだ時間を要する見通しとなっています。
三菱は電気自動車に対して他メーカーより早期から取り組んでおり、2009年には国内初の量産EV、i-MiEVを販売しています。その電気自動車で得たノウハウをフィードバックできたことがアウトランダーPHEVの成功につながったといえるでしょう。現在、三菱はアウトランダーPHEVをラリーレイド用に改良、クロスカントリーラリーに出場してシステムの進化を図っています。今のところ目立った成績は残せていませんが、かつてパジェロがダカール・ラリーを制した時のような活気が、アウトランダーPHEVに見られます。
日産のエクストレイルHYBRIDと主なスペックを比較
ミドルサイズのクロスオーバーSUVはマツダのCX-5やトヨタのランドクルーザープラドなど各メーカーから販売されてしますが、PHEV搭載車はありません。ここではハイブリッドシステムを搭載した日産のエクストレイルと主なスペックを比較します。
アウトランダー PHEV M | エクストレイル 20X HYBRID | |
全長×全幅×全高(mm) | 4695×1800×1710 | 4640×1820×1715 |
客室内寸法 | 1900×1495×1235 | 2005×1535×1270 |
ホイールベース | 2670mm | 2705mm |
車両重量 | 1820kg | 1640kg |
最低地上高 | 190mm | 195mm |
エンジン排気量 | 1998cc | 1997cc |
エンジン最高出力 | 87kW(118PS)/4500rpm | 108kW(147PS)/6000rpm |
エンジン最大トルク | 186N・m(19.0kg・m)/4500rpm | 207N・m(21.1kg・m)/4400rpm |
モーター最高出力 | 前/60kW(82PS) 後/(60kW(82PS) | 30kW(41PS) |
モーター最大トルク | 前/137N・m(14.0kg・m) 後/195N・m(19.9kg・m) | 160N・m(16.3kg・m) |
JC08モード | 19.2km/L | 20.6km/L |
新車販売価格 | 3,596,400円 | 2,858,760円 |
アウトランダーPHEV最大の特徴は前後に駆動用モーターを設置して4WDにしていることです。パジェロやランエボ等で得た4WDノウハウがアウトランダーにも投入されており、
ガソリンエンジン仕様と同じように三菱独自の車両運動統合制御システムS-AWC(Super All Wheel Control)が装備されています。
S-AWCはアクティブヨーコントロール(AYC)、アクティブスタビリティコントロール(ASC)、アンチロックブレーキシステム(ABC)を統合的に電子制御することによって滑りやすい路面や悪路でもスリップすることなく発進でき、コーナリングやレーンチェンジでも車体の安定性を高める機能です。最近のクロスオーバーSUVにありがちなオンロード主体の走行性能ではなく、オフロードでも高い走破性を発揮します。
バッテリーとモーターだけで約60kmの走行が可能
またJC08モードに関してはエクストレイルよりも低い値となっていますが、アウトランダーPHEVは駆動モーターだけで走行できる充電電力使用時走行距離60.8kmが加わります。都市圏の近距離であれば十分に補える距離となり、状況によっては電気自動車のようにまったくガソリンを使わずにカーライフを送ることも可能です。
デメリットとしてはキャビンのフロア下にバッテリーを配置するため、どうしても車内空間が狭くなります。またPHEVの機能をフルに使うのであれば自宅に充電設備が必要となりますが、マンションやアパートなどの集合住宅では充電ステーションまで行かなければなりません。さらにPHEVはハイブリッドシステムに加えて大容量のバッテリーが必要になるため、どうしても車両本体価格が高くなります。エクストレイルとアウトランダーの差額は約70万円にもなります。PHEV普及のためにも低価格になることが望まれます。
アウトドアレジャーを趣味としている人に最適の車種
アウトランダーにPHEVシステムが搭載されたのはアウトドアにおける電源供給に高い需要があるからです。Mグレードにはオプション設定となりますが、フロアコンソール背面には2極コンセント、ラゲッジルーム運転席側には3極コンセントがあり、最大出力は1500Wなのでほとんどの家庭電化製品を使用することができます。バーベキューをする際のホットプレートや海で濡れた髪を乾かすためのドライヤーなど、アウトドアでは高い利便性を発揮します。
駐車場付きの一軒家で充電装備を設置できる人または充電ステーションが近隣にある人でアウトドア・レジャーを趣味にしているのであれば、アウトランダーPHEVは最適の車種といえます。
筆者の主観的所見
アウトランダーPHEVのもうひとつの特徴は自動車本来の走行目的だけでなく、家庭へ給電するという自家発電装置の役割も兼ねていることです。停電の際でも車内コンセントから直接電気を取ることができ、バッテリーがフル充電の場合は一般家庭のおよそ1日分、ガソリン満タンの状態であればエンジンによる発電が可能になり、最大10日分の電気をまかなうことができます。電気自動車でも電力供給が可能ですが、バッテリー充電分しか給電できないため、PHEVよりも格段に短い時間であることを考えると、大きなメリットとなります。
設備投資はかさみますが、電気自動車用に開発されたV2H(Vehicle to Home)を設置するとさらに利便性が高まります。日中、太陽光によって蓄積した電気をPHEVに供給することもできますし、停電の際はPHEVが電源となるので電化製品をPHEVに接続することなく使用できます。およそ20年前には想像できなかったクルマの使い方といえるでしょう。
ちなみにアウトランダーPHEVは環境対応車普及促進税制、グリーン税制の対象なので購入時の自動車税と重量税が免除されることに加え、翌年の自動車税も軽減されます。さらにクリーンエネルギー自動車導入促進対策費の補助金も交付されるので、購入の際は必ず営業スタッフに手続きの申請を行うように申し出てください。