〜NOTEの電気自動車〜

日産ノートe-POWER〜量産車として世界初のシリーズ方式を採用

日産のコンパクト2BOXハッチバックカー、ノートは2016年11月にマイナーチェンジを行い、シリーズ方式のハイブリッドシステムを搭載したe-POWERを追加しました。e-POWER仕様を含むノートは発売からわずか3週間で月間販売目標を大きく上回る20,348台を受注、1986年の6代目サニー以来となる11月度の月間販売台数第1位を獲得しています。

メーカー車両情報・日産 ノートe-POWER

最新型のパワフルなEM57型モーターを搭載

シリーズ方式はトヨタやホンダのエンジンとモーターを駆動力に併用するシリーズパラレル方式と異なり、モーターだけで走行、エンジンは発電専用となります。トランスミッションを必要とせず、アクセルを緩めると摩擦減速の際に生み出される回生エネルギーを蓄電できるため、エンジンの作動時間を少なくできることがひとつの特徴となっています。

e-POWERが搭載している発電用エンジンはガソリン仕様のノートと同じく直列3気筒1.2LのHR12DE型ですが、圧縮比を高めて最大トルク発揮回転域を低く設定するなどe-POWERシステムに最適の改良が行われています。駆動用のEM57型モーターは電気自動車のリーフにも搭載されている最新型で、最大トルクは254N・m(25.9kg・m)を発揮、モーター特有の俊敏な走りを実現すると同時にHC08モード37.2km/L(エアコンレス)を記録、コンパクトカーだけでなくハイブリッド車を含めてもプリウスに次ぐ燃費効率を達成しています。

トヨタ・アクアと主なスペックを比較

シリーズ方式はこれまで量産車に採用された例がなく、ノートe-POWERが世界初となります。ここでは異なるハイブリッドシステムで国内販売台数のトップを維持していた同じコンパクトサイズの2BOXハッチバックカー、トヨタ・アクアと主なスペックを比較します。

ノートe-POWER SアクアG
全長×全幅×全高(mm)4100×1695×15203955×1695×1525
客室内寸法2065×1390×12552015×1395×1175
車両重量1170kg1080kg
JC08モード37.2km/L37.0km/L
エンジン最高出力58kW(79PS)/5400rpm54kW(74PS)/4800rpm
エンジン最大トルク103N・m(10.5kg・m)3600〜5200rpm111N・m(11.3kg・m)3600〜4400rpm
モーターパワー80kW(109PS)
254N・m(25.9kg・m)
45kW(61PS)
169N・m(17.2kg・m
車両本体価格1,772,280円2,007,818円

アクアは走行状態に応じてモーターとエンジンのパワーを併用するので走行性能を一概に比較することはできませんが、e-POWERのモーターが発揮する最大トルクは自然吸気エンジン2.5Lに匹敵します。さらにガソリンエンジンと違ってアクセルを開放した瞬間に最大トルクまで達するので都市部のストップ&ゴーでもストレスを感じることがなく、爽快な走りを楽しめます。

3つのドライブモードでモーターパワーを制御

このモーターパワーはNORMALモード、e-POWER Drive Sモード、 e-POWER Drive ECOモードの3種類によって制御を変えることができます。

e-POWER Drive SモードはNORMALモードに対してレスポンスを上げ、アクセル開放時はパワーアップさせ、アクセルを戻した時は減速時の抵抗を増やして回生エネルギーを多く生み出す仕様で、ECOモードはアクセル戻し時の減速はe-POWER Drive Sモードと同じですが、アクセル開放時はNORMALモードよりも緩やかなパワー曲線を描く仕様になっています。

ドライブモードの切り替えはセンターコンソールのボール型電子制御スイッチによって行います。ハイブリッド車独特のシフトレバーなのでガソリン車から乗り換える人に取っては最初こそ戸惑うこともありますが、直感性に優れているので慣れるのに時間がかかることはありません。

またアクセルを踏んだ時の瞬発力は交差点での右左折において余裕のある運転を可能にしますが、アクセルを離すとガソリン車のように惰力走行せず減速が働きます。市街地走行ではガソリン車よりもアクセルワークが頻繁になることを想定しておいた方がいいでしょう。

モーターとバッテリーを搭載しても変わらぬ車内空間を確保

現行車の2代目ノートはe-POWERを搭載する以前より日産の人気車種となっており、2012年8月から8ヶ月連続で月間販売台数第1位(ハイブリッド車を除くガソリンエンジン搭載車として)を獲得した経歴を持ちます。人気の要因はコンパクトカーでありながらワンクラス上のセダンと変わらぬ車内空間を確保、さらに低価格で購入できることです。e-POWER仕様でも約177.2万円(エアコン装備のXは約195.9万円)となっており、世界戦略車として大量生産しているからこそ実現できた価格設定といえます。

ハイブリッド仕様や電気自動車はバッテリーを搭載するのでラゲッジルームや車内空間は狭くなるのが一般的ですが、e-POWER仕様はエンジンが常時発電するのでバッテリーを小型化できます。新設計のリチウムイオン電池を前席下に収めたことでガソリンエンジン仕様と変わらぬ車内空間とラゲッジルームの容量を確保しました。これもe-POWERの魅力のひとつとなっています。

モーター走行に違和感を持たなければ万人向きの車種

電気自動車が環境性能と経済性に優れていることは誰もが認めるところですが、電力消費率による走行距離の不安定さや充電ステーションの所在地と設置数、充電時間の長さなどがデメリットとなって広く普及するまでに至っていません。このe-POWER仕様はそれら電気自動車のデメリットを解消し、メリットを多く享受したシステムといえます。

電気自動車の俊敏な加速感を味わうことができ、遠方へのドライブでも充電の心配がなく、また走行途中でガソリンさえ給油しておけば蓄電を使い切るという不安もありません。モーターの走行感覚に馴染めない、という人以外は万人に向いている新しいハイブリッド車といえるでしょう。

筆者の主観的所見

モーター駆動はアメリカで生産されているテスラや電気駆動だけのレース、フォーミュラ・Eを見ても分かるように、環境性能や経済性だけでなく走行性能においてもガソリンエンジンを凌ぐパワーを発揮できます。充電というモーター駆動最大のデメリットを克服したe-POWERは現在、オールラウンダーのノートしか搭載されていませんが、今後は日産の各車種に採用されることが予想されています。

かつて日本のモータリゼーションがトヨタと日産の双璧だった時代、「販売のトヨタ」に対して「技術の日産」と呼ばれていました。経営不振からルノー傘下に入って以降、際立った車種はGT-R以外見当たりませんでしたが、最近になって自動運転を採用したミニバンのセレナ、さらにe-POWER搭載のノートと話題性のある新車攻勢を行なっています。「技術の日産」の復活を望む往年の日産ファンはけっして少なくありません。e-POWERを搭載したスポーツカーの登場も含め、これからの日産に期待したいところです。

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