〜現在はルノーの傘下〜
三菱自動車〜「リコール隠し・ 燃費改ざん」今後の企業体制に期待がかかる
三菱自動車工業は三菱重工業の時代から数えると日本でもっとも古い歴史を持つ自動車メーカーであり、販売台数ではトヨタと日産に次いで第3位を確保していた時期もありました。
しかし2000年、2004年と連続してリコール隠しが発覚、2007年には4ぶりの黒字を計上して電気自動車に力を入れようとした矢先に2016年に燃料試験の不正問題が発生、軽自動車を共同開発していた日産が株式の34%を取得して現在はルノー=日産アライアンスの傘下企業となっています。
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日産の告発によって明らかになった燃費改ざんデータ
三菱は2000年のリコール発覚後、ダイムラー・クライスラーと経営支援のための資本提携を締結しますが2004年にはダイムラー・クライスラー側から提携中止が言い渡され、三菱グループ主導による再建が行われます。日産との包括的な事業提携を結んだのは翌2005年のことです。
日産との関係は両社のOEM供給に留まらず、2011年には軽自動車の共同開発を行う合弁会社としてNMKVを設立しました。その初代となったのが2013年にデビューした日産のデイズであり、三菱のeKワゴンです。発売当初はそれまでの軽自動車にないスタイリッシュなフォルムと上質な車内装備が高い人気となり、デイズは発売から1ヶ月で約3万台を受注しました。
しかし販売から3年後、共同開発の日産側から両車のJC08モード値について、虚偽のデータを提出していたことが発表されました。いわば内部告発の形ですが、この発表によって三菱自工株は暴落、ユーザーへの補償金問題もあって三菱は倒産危機に追い込まれます。
日産は素早く経営支援を表明、約2,370億円で三菱自工株の34%を取得してルノー=日産アライアンスの傘下企業にしました。この買収劇に対してはいろいろな憶測も飛び回っていますが、三菱の燃費改ざん問題は事実です。今後、ルノー=日産アライアンスの下で、どのような体制になって企業法令を遵守していくのか、注目されるところです。
業績挽回の先鞭となるアウトランダーPHEV
1960年代にはコルトギャラン、70年代にはランサー、80年代にはパジェロと次々にスマッシュヒットの車種を開発した三菱ですが、現在のラインナップにこれらの名前で残っているのはパジェロだけです。それも2006年に発売された4代目以降、フルモデルチェンジが行われていない基本設計の古いSUVとなっており、2015年度の年間販売台数は1,000台にも足りない状況まで落ち込んでいます。
乏しいラインナップの中で孤軍奮闘しているのがプラグインハイブリッド(以下、PHEVと略)のクロスオーバーSUV、アウトランダーPHEVです。PHEVは同車以外、国内ではトヨタのプリウスPHV(プラグインハイブリッドの略:三菱とは名称で差異化を図っている)しか販売されていませんが、欧州ではディーゼルに代わるクリーンエンジンとして各メーカーが開発しており、すでにフォルクスワーゲンやBMWなどから販売されています。
ちなみにホンダはアコードのPHEVをリース販売しましたが、国内ではわずか238台のみの販売だったため、2016年3月にリース販売を終了しています。
プラグインハイブリッドの特徴は電気自動車(EV)とハイブリッド車(HV)のメリットを併せ持つことです。一般電源からバッテリーへの充電が可能なのでモーター走行距離を伸ばすことができ、バッテリーパワーがなくなればエンジンを作動させてHV走行ができると同時にバッテリーへの充電も行えます。
長距離ドライブに出てもEV車のように充電ステーションを探す必要がなく、ガソリン消費量はHV車よりも断然、高効率となります。アウトランダーPHEVは国土交通省が定めた審査値において、充電電力使用時走行距離は60.8kmを達成、ハイブリッド燃料消費率となるJC08モードでは19.2km/Lを記録しています。
早期より開発に取り組んでいた電気自動車
三菱がPHEVを国産メーカーの中で比較的早く量産化できたのは、電気自動車の開発に取り組んでいたことが大きな要因となっています。三菱は後部席下にエンジンをマウントした革新的な軽自動車、i(アイ)をベースに永久磁石式交流同期電動機(モーター)と約200kgのリチウムイオン二次電池(バッテリー)、さらに回生ブレーキなどを搭載してi-MiEV(アイミーヴ)を完成させ、2009年に量産を開始しています。
発売当初は充電ステーションや自宅の充電設備設置など普及への障害が多かったものの、深夜充電を行なっておけばガソリン代より安くなる経済性や近距離走行に最適なサイズであることなどから販売台数は緩やかに増えています。現在では国内だけでなく世界19カ国で販売され、約2万台が販売されました。
1970年代は国産ホットハッチの口火となったミラージュ
三菱のラインナップにはi-MiEVの他にミニキャブ・ミーブとミニキャブ・ミーブ・トラックの商用2車種があります。食品や青果、あるいは精密機器など排気ガスが悪影響を及ぼすと思われる荷物の運搬に最適なことから一定の需要はありますが、乗用車に関しては販売成績が落ち込んでおり、中でも世界戦略車として開発されたミラージュは2015年度の販売台数がわずか約4,100台に留まっています。
初代ミラージュは1978年に発売されました。2BOXハッチバックタイプでシャープなフォルムを持ち、1400ccのエンジンにターボチャージャーを装着して105PSを発揮、国産ホットハッチの口火を切ったほどの人気車種でした。
3代目までは好調な販売成績を上げましたが、4代目からはコストダウンの設計となって人気は下火になり、5代目はわずか5年という短いスパンで販売を終了、ミラージュは2000年に三菱のラインナップから姿を消します。
発売当初の販売台数は予想の半分という結果
その12年後、世界戦略車として復活します。ボディサイズは5ナンバー枠よりも全幅が30mm短いコンパクトカーで、新興国におけるエントリーカーとしての役割も持たせるために徹底的なコストダウンを行い、国内販売価格は99.8万円〜と100万円を切る車種となってデビューしました。
優れた空気抵抗や大人5人が乗っても快適性が保たれる車内空間など、ライバルとなるコンパクトカーに引けを取らない性能を持っていましたが、国内需要ではコンパクトカーであっても車内装備は上質さが求められます。質素なミラージュは発売直後、年間販売台数3万台を予想していましたが、実際にはその約半分、1.5万台に留まりました。2015年にはマイナーチェンジを行なって日本国内の需要に合わせた上質なインテリアとなっていますが、依然、販売台数は伸び悩んでいます。
北米ではダイヤモンド・スターが高いブランド力を持つ
ただし、マイナーチェンジ後のミラージュは北米を中心に海外では好調な販売成績を上げており、2016年4月度だけで約3300台、前月比37.2%の増加を見せています。三菱は国産メーカーの中でも早くから北米進出を果たしており、三菱ブランドが浸透している点も好調要因のひとつといえるでしょう。
まだ三菱重工業の会社名だった1970年には早くも当時、自動車業界のビッグ3だったクライスラーと合弁事業に関する契約を締結、翌年にはクライスラーの販売系列でコルトギャランが販売され、1985年には両社の車種を製造するダイヤモンド・スター・モーターズを設立しています。
全体的に安値傾向の三菱中古車
三菱の中古車は全体的に比較的安値傾向にあります。三菱の中では人気車種となっているアウトランダーPHEVの新車販売価格は約360万円からとなっていますが、2013年登録モデル走行距離2〜3万kmと状態の良い車種でも相場は200〜230万円で推移しています。ハイグレードとなるGプレミアムパッケージは新車販売価格が約460万円と高価な車種になりますが、2013年登録モデル走行距離3〜4万kmでも300万円前後で購入できます。
唯一、比較的高値となっているのがリブボーンフレームと大型のクロスメンバーを採用してヘビーデューティーな悪路でも高い走破性を示すデリカD:5です。新車販売価格約310万円のG-Powerは2012年登録モデルで走行距離4〜5万kmといった状態で250万円前後が相場となっており、少ない下落幅に収まっています。なお、三菱車全体としては安値傾向でも中古車市場に流通している車数が少ないので、購入の際はボディカラーやグレード、オプション装着についてある程度の妥協が必要でしょう。