〜派生車種のベースモデル的役割を担う〜

軽自動車業界を牽引するダイハツの名車ミラ

ダイハツの軽2BOXハッチバックカー、ミラは初代の発売が1980年と古く、ダイハツの中では商用車のハイゼットに次ぐ長い歴史を持つブランドです。現在、軽自動車の主流はトールワゴンやスーパーハイトワゴンに移っているのでミラはエントリーモデルとして販売されていますが、ミラをベースにした派生車種が多く生産されています。

メーカー情報・ダイハツ

長い歴史の中から生み出された名車たち

軽自動車は日本のモータリゼーションに登場した時からFF(前輪駆動)2BOXタイプが主流でした。小さなボディサイズ規格の中で、もっとも実用性に優れたパッケージであることがその理由で、源流はイギリスが生み出した20世紀の名車『ミニ』にあります。

ミラは1980年の登場と同時に、スズキのアルトと軽自動車業界を牽引する原動力となりました。1991年には軽自動車における日本国内最多販売台数約28.7万台を記録しています。派生車種も多く、セゾングループのパルコとコラボレーションした女性向けのミラ・パルコ、シトロエンのtypeHを思わせるウォークスルーバン、全日本ラリー選手権で優勝することを目的に開発されたX4Rなど軽自動車史上に残る名車が生み出されています。

ミラと派生車種との比較

7代目となる現行車は2006年のフルモデルチェンジと古い設計ですが、2BOXタイプのボディ形状は大きく進化することがないので、そのプラットフォームを利用して燃費効率を優先したミラ・イース、若年層女性向けのミラ・ココアなどの派生車種が製造されています。

7代目現行車は軽自動車のエントリーモデルという位置づけのため、X”special”だけのモノグレード設定になっています。ここではミラから派生したミラ・イースとミラ・ココアのスペックを合わせて紹介します。

ミラミライースLミラココアL
全長×全幅×全高(mm)3395×1475×15303395×1475×14903395×1475×1530
車両重量750kg730kg810kg
JC08モード24.2km/L35.2km/L29.0km/L
最高出力43kW(58PS)/7200rpm36kW(49PS)/6800rpm38kW(52PS)/6800rpm
最大トルク65N・m(6.6kg・m)/4000rpm57N・m(5.8kg・m)/5200rpm60N・m(6.1kg・m)/5200rpm

3車3様の性能で個性を明確にする

共通のプラットフォームを使用していますが、3車はデザインからエンジン特性まで大きく変更されています。ミライースは燃費効率優先タイプなので車重は20kg軽減され、最高出力や最大トルクを減少させる方向でエンジンを改良、JC08モードは軽自動車トップクラスとなる35.2km/Lを達成しました。

ミラココアにもミライースで培った燃費向上技術、イーステクノロジーが採用されています。しかしボディ形状をトールワゴンに近づけたことから車重がミラから60kg増え、その車重を補うために最高出力や最大トルクを上げたのでJC08モードは29.0km/ Lに留まっています。

3車の中でもっとも軽快な走行性能を持つのがミラです。自然吸気エンジンで最高出力43kW(58PS)はホンダの自然吸気エンジンと並ぶハイパワーで、しかも車重が750kgしかないため加速から高速走行まで余裕のある走りが体感できます。ただしJC08モードは24.2km/Lなのでミラ・イースやミラ・ココアとは実走行でもはっきりと差が出ます。

ライバルはスズキのアルト

現在、軽自動車でミラ以外に販売されている2BOXハッチバックはスズキのアルトだけです。アルトもミラと同じくスズキの販売車種の中でエントリーモデルとして位置づけられ、モノグレードの時期もありましたが、2014年にフルモデルチェンジを行い、基本設計から刷新しました。

新型のプラットフォームを採用してビス1本にいたるまで軽量化、ハイグレードのXで650kgを実現しています。軽量化は燃費や走行性能に好影響を与えます。最高出力は38kW(52PS)/6800rpmとミライースを上回り、さらにJC08モードでも37.0km/ Lを達成しました。ただし新型モデルだけに価格は高く、ミライースのベースグレードLが約76.6万円であることに対し、アルトのベースグレードLは約89.4万円に設定されています。

ミラの利点は座面が低いので運転感覚をナチュラルに保てることです。また最小回転半径は4.2mしかないので都市圏の住宅街でも取り回しが比較的ラクに行えます。普通車セダンの運転に慣れていて軽自動車に乗り換えようという人、車に乗るのは自分だけのことが多い人、あるいは家に1台あるのでセカンドカーとして使いたい人には高いコストパフォーマンスを発揮する車種となります。

筆者の主観的所見

ミラとミラ・イースはエクステリアこそ同じボディを採用していますが、中身はまったく別物、と言っていいでしょう。インテリアデザインは洗練され、後部シートにはヘッドレストがついて快適性を向上しています。走行性能では燃費効率を高める技術が投入されていることに加え、アクティブセーフティーでもダイハツの最新予防安全装置、スマートアシストⅡがベースグレードのDを除く全グレードに設定されています。

ミラは X”special”のモノグレードであるため、マニュアルエアコンやパワーウインドウなど走行に便利な機能を最低限備えていますが、ダイハツはエントリーモデルと位置づけを行なっているにもかかわらずトランスミッションは5速マニュアルしか用意されていないので、AT限定免許証の人は購入することができません。今時、5速MTだけした用意していない車種はスポーツカーだけです。

派生車種のベースモデルとして生産しているイメージが強く、一部の法人が主力の購買層となっているため、一般ユーザーをターゲットから外しているのが現状です。車は安い方がいい、トランスミッションは5速マニュアルでなければダメ、という人以外、ミラ購入のメリットはまったくないといえるでしょう。

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