〜カスタマイズは予算と相談しましょう〜
高価格だが往年のミニクーパーを現代風にアレンジしたMINIの魅力
MINIはフォルクスワーゲンのポロやアウディのA1などがライバルとなる欧州のBセグメント(日本のコンパクトカークラス)に属する2BOXハッチバックカーです。MINIといえば『カー・オブ・センチュリー』(20世紀のベストカー)の候補にも選ばれたBMCのミニマムカーを浮かべる人も多いでしょう。しかし、現行車のMINIはBMWのブランドで、まったく新しい系譜として製造されています。ちなみにロールスロイスも現在はBMWブランドのひとつです。
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最終的にBMWへ渡ったミニのブランド
横置きエンジンで前輪を駆動させる車種は第二次大戦以前にもありましたが、どれもバブルカーと呼ばれる安価な2人乗り製で、量産車で大人4人が乗れる車種はBMCミニが初めてとなります。ブリティッシュ・モーター・コーポレーション(BMC)が開発したミニは1958年に初代が登場、その後、イギリスの各メーカーをブランドだけが転々とし、2000年まで製造され続けました。
2000年当時、ミニはローバー社のブランドでしたが、ローバー社は莫大な赤字を抱えていたことからブランド権利のほとんどをBMWに売却します。この時からBMWは新型MINIの構想を持っており、ローバー社を中心として開発を進めようとしましたが、その後、ローバー社はさらに経営が悪化、フォードへ身売りしたため、BMW単体でMINIの開発を行うことになりました。
翌2001年には早くも初代が登場しています。ボディサイズは格段に大きくなりましたが、エクステリアではラジエターグリルの形状やフローティングルーフ、インテリアではフラットなインパネに単眼メーターをレイアウトするなどBMCミニをリスペクトしたイメージで設計されていることが大きな特徴となりました。
『変えないこと』をコンセプトにモデルチェンジ
現行車は2013年にフルモデルチェンジされて3代目となります。エクステリアは『変えないこと』を基本コンセプトに置いてあるので初代や2代目と見た目は大きく変わっていませんが、軽量化や安全性で進化しています。
用意されているエンジンは直列3気筒の1.2Lと1.5Lのターボ装着モデル、直列4気筒の2.0Lターボ、直列4気筒2.0Lディーゼルの4種類です。MINIはBMCミニの歴代派生車種をラインナップに再現しており、3代目にも数多くのモデルが設定されています。
多種多彩な中から3車種をピックアップして比較
3ドアと5ドアのベーシックなONEを基本に、ステーションワゴンのクラブマン、ソフトトップを備えたオープンカーのコンバーチブル、SUVのカントリーマン、シリーズ初となる2シーターのクーペ、カントリーマンをベースにした3ドアクーペのベースマンなどがあり、さらに多彩なボディカラーとエンジンを組み合わせると、その個体総数は10万種に上るといわれています。
ここでは、その中からベーシックな1.2LターボのONE、2.0Lディーゼルのクーパー・クラブマン、2.0Lターボのジョン・クーパー・ワークスのペースマンそれぞれの主なスペックを比較します。
ONE | クラブマン | ペースマン | |
全長×全幅×全高(mm) | 3835×1725×1430 | 4270×1800×1470 | 4135×1785×1525 |
車両重量 | 1390kg | 1910kg | 1680kg |
JC08モード | 20.2km/L | 4.8〜5.1L/100km | 14.4km/L |
最高出力 | 75kW(102PS)/4000rpm | 110kW(150PS)/4000rpm | 160kW(218PS)/6000rpm |
最大トルク | 180N・m/1400~3900rpm | 330N・m/1750~2750rpm | 280N・m/1900~5000rpm |
車両本体価格 | 2,260,000円 | 3,640,000円 | 4,600,000円 |
ONEをベースにした派生車種は性能を明確に打ち出して差異化を図っています。ステーションワゴンのクラブマンは全長を235mm延長して積載量を増やしており、ペースマンは最高出力や最大トルクを上げて走行性能を高めています。多彩なラインナップですが、自分のカーライフをはっきりさせておけばピッタリの1台が見つかるはずです。
ライバルは小粋で実用的なフランス車
BセグメントにはフォルクワーゲンのポロやアウディのA1、トヨタのヴィッツ、マツダのデミオなどが属しますが、ライバルとなるのはフランスのルノー・ルーテシアやプジョーの208でしょう。
これらの車種にはシンプルな街乗り専用グレードからスポーツ走行が可能なホットハッチまで揃えており、ヨーロッパ車特有の強い個性を持っています。プジョー208の車両本体価格は199万円、ルーテシアZEN1.2Lは219万円なので、価格的にもONEと大きな違いはありません。
ヨーロッパでは車をセグメントで分類します。セグメントにはA・B・C・D・E・Fがあり、Aは最も小型で、価格が安いクラスになり、一方Fは、最も大型で、価格が高いクラスになります。
Bセグメントは、全長3.7m~4.2mで、日本のコンパクトカークラスです。
日本車のコンパクトカーでは満足できない人に最適の1台
Bセグメントの車種は大衆車であることが求められているので、都市圏の道路をキビキビと走れて荷物も積めるという実用性が重視されます。日本国内でこの条件を合致させるならばMINIは日本車に比べれば価格が高くコストパフォーマンスが悪くなります。
しかし日本車ではどうしても没個性となり面白くない、と感じる人もいるでしょう。そういった人たちに向いているのがMINIです。価格はやや高くなりますが、個性的なインテリアや走り心地は日本車では味わえない楽しさと所有する満足感を与えてくれます。
筆者の主観的所見
MINIはBセグメントの中でも遊び心のある個性的な1台であることは確かですが、ライバル車に比べるとやや高価格設定になっています。ベーシックモデルのONE3ドアは226万円ですが、これはマニュアルトランスミッションの価格でオートマチックは14万円高の240万円になります。
ベースモデルをカスタマイズせずに乗るのであれば、この車両本体価格で済みますが、ボディカラーはペッパー・ホワイト・ソリッドとボルカニック。オレンジ・メタリックの2色しか設定されておらず他の7色を選ぶとそれだけで59,000円が必要になります。
さらにホイールはスチール製なので足元を引き締める純正のアロイホイールを装着すると217,000円が必要となり、ブラック塗装のサイドミラーにメタリックやボディカラーと同色のミラーキャップを被せると14,000円かかります。
この調子でインテリアやオプションなどが用意されており、物欲の赴くままにカスタマイズするとCセグメントを買えるほどの価格に膨れ上がってしまいます。たとえばルノー・ルーテシアは900ccターボチャージャー装着のZENは5速マニュアルですがアロイホイールは最初から装備されており、イメージカラーのブルードゥフランスの他、3色を選ぶことができます。MINIを購入する際、カスタマイズは予算と相談しながらするようにしましょう。