〜海外を意識したデザイン〜
高い悪路走破性を持つスバル・フォレスター
スバルのフォレスターはボンネットタイプ(またはピックアップタイプ)のクロスオーバーSUVです。日本国内よりも海外での評価が高く、とくに広大な面積を持つ北米やオーストラリアでは悪路走破性が優れていることから人気車種となっており、好調な販売成績を残しています。
海外販売比率はスバル車のトップ
ボンネットタイプのクロスオーバーSUVはボディ剛性が高いことに加えてユーティリティ性や悪路走破性が高いことから海外、とくに北米やカナダ、オーストラリアなど舗装路から悪路、または積雪地帯などが入り混じった長距離運転をしなければならない国々で高い人気を誇っています。
スバルは以前より独自の4輪駆動と水平対抗エンジンの技術が悪路に強いとの定評を得ており、その技術力がボンネットタイプのクロスオーバーSUV、フォレスターに投入されたことで多くのユーザーを獲得しました。2002年に発売された2代目は国内の月間販売台数目標が3,000台であったことに対して北米では月産1万台を目指し、2005年の国内外の販売台数比率を見ると、海外が83.2%にも達しています。これは全スバル車の中で、もっとも高い比率となっています。
これらの背景を受けて、3代目以降はより海外を意識したデザインに変更されました。初代や2代目は水平対抗エンジンのメリットを生かしてボンネットを低くしたステーションワゴンタイプだったことに対してボディの厚みを増してボンネットバンのスタイルを強調、エンジンは扱いにくいターボチャージャー装着モデルではなく自然吸気型を搭載し、フロントマスクにはスバルのアイコンであるヘキサゴングリル(6角形)を採用してメーカーイメージを打ち出しています。
日産のエクストレイルと主なスペックを比較
4代目となる現行車は2012年に登場、2015年にマイナーチェンジが行われています。エクステリアではフロントのグリルやバンパーを刷新してワイド感を強め、走行性能ではサスペンションやシャシーを大幅に改良、大掛かりなマイナーチェンジとなっています。ここでは同じくボンネットタイプのクロスオーバーSUV、日産のエクストレイルと主なスペックを比較します。
フォレスター2.0i-L(EyeSight) | エクストレイル(20X) | |
全長×全幅×全高(mm) | 4610×1795×1715 | 4640×1820×1715 |
客室内寸法 | 2095×1540×1280 | 2005×1535×1270 |
車両重量 | 1510kg | 1500kg |
JC08モード | 16.0km/L | 16.0km/L |
最高出力 | 109kW(148PS)/6200rpm | 108kW(147PS)/6000rpm |
最大トルク | 196N・m(20.0kg・m)4200rpm | 207N・m(21.1kg・m)/4400rpm |
車両本体価格 | 2,689,200円 | 2,691,360円 |
日産は海外向けのミドルクラス・クロスオーバーSUV車種としてデュアリス(キャシュカイ)、ローグという2車種を販売、また国内ではエクストレイルを販売していましたが、それぞれを別モデルとして生産することは効率が悪いことから2013年に統一モデルを開発、その国内販売モデルが現行車となります。
世界戦略の統一車種というだけにボンネットタイプのクロスオーバーSUVとしての完成度は高く、スペック面ではフォレスターとほぼ互角であることに加え、2WDと4WD、2列シートと3列シート、さらにガソリン車とハイブリッド車が選べるなど豊富なラインナップを揃えていることも大きな魅力となっています。国内でも好調な販売成績を残しているフォレスターに取っては強力なライバル車であることは間違いありません。
シンメトリカルシャシーがもたらす車重バランス
フォレスターの特徴はスバル独自の進化を続ける4WDシステム(スバルは常時全輪駆動の意味で AWDと呼んでいます)と水平対抗エンジンにあります。左右対称でエンジンの全高を低くできる水平対向エンジンは重量バランスの最適化を図ることができ、さらにシャシー部分をシンメトリカルに設計できるので4WDを効率よく働かせることができます。
フォレスターは悪路走破性を高めるために4WDの機能をさらに高めるX-MODEを装備しました。これは雪道の発進時や悪路の山道を登攀する時など、4WDでもタイヤが空転しやすい状況下でシステムをONにしておけば電子制御が介入してエンジンの出力からトランスミッション、駆動力の分配やブレーキまでを自動的にコントロールして空転を防ぎ、タイヤの接地能力を高めるというシステムです。
フロントのアプローチアングルは25.0度、リアのデパーチャーアングルは26.0度、さらに最低地上高は220mmを確保、対地障害角度や高さはクロスオーバーSUVの中でトップクラスとなっています。シンメトリカル構造は悪路走行の振動がボディに与える影響を最小限に抑えることができるというのも、クロスオーバーSUVに取っては大きなメリットのひとつです。
オフロード走行が多いタフなカーライフを送る人に最適
4代目となる現行車は2014年と2015年にマイナーチェンジを行い、サスペンションや空力デザインを変更して車内の静粛性や舗装路における走行性能を高めています。それでもエクステリアはタフなイメージが強く、インテリアは上質素材を使いながらもブラックで統一、シンプルなデザインに収まっています。
ラグジュアリー系のクロスオーバーSUVを求める人にとっては物足りなさを感じることに加え、フォレスターの持つ高い悪路走破性は街乗り中心の運転にあまり役に立ちません。ただし本格的にアウトドアスポーツに取り組んでいる人や積雪地帯に住んでいる人には安心感を与えてくれる実用的な車種といえます。
筆者の主観的所見
スバル車は国内におけるネームバリューが低いため、中古車市場ではスポーツタイプのWRXを除いて値下がり幅が大きくなります。フォレスターも例外ではなく、年式や走行距離の浅い車種でも比較的安価で販売されているので、購入の際は中古車も選択肢に入れることをお勧めします。
現行車であれば2013年登録モデルで走行距離が3万km前後の場合、中心価格帯は180〜200万円で、ターボチャージャーを装着したハイパワーモデルXTでも220〜230万円の範囲内で購入できます。先代モデルになると価格はさらに安くなり、2012年登録モデルで走行距離4~5万kmの車種は160〜180万円がボリュームゾーンとなります。