〜SUVでは考えられないほどの豪華装備〜
トヨタ・ハリアー〜ファンの強い要望に応えて復活
トヨタのハリアーは悪路の走破性を高めたクロスオーバーSUVです。スパルタンなクロスカントリーSUVと違って舗装路の快適性を重視していることが大きな特徴で、SUVでありながら高級サルーンに匹敵する乗り心地を実現しています。
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ラグジュアリーSUVの新ジャンルを開拓したハリアー
ハリアーの初代は1997年に登場しました。「ラグジュアリー・クロスオーバーSUV」をキャッチコピーにして新ジャンルの車種であることを強調、車内はトヨタの高級セダンと同じく木目調パネルがふんだんに使われており、シートはドアトリムと同色の本皮製を用意するなど、アウトドアを目的としたSUVでは考えられないほどの豪華装備を施していました。
2003年にフルモデルチェンジを行い、2代目はさらに豪華仕様となります。新開発の3.5Lエンジンを追加し、ハイブリッド仕様も2代目から登場、あまりに好評だったことからトヨタの高級ブランドであるレクサスに移行させ、RXのネーミングで販売を開始しました。ハリアーは一時的に生産を終了しましたが、あまりに生産終了を惜しむ声が多かったため、2013年に復活、これが3代目現行車となっています。
ハリアーは日本だけでなく北米でも高い人気を集めました。発売当初、ラグジュアリーなクロスオーバーSUVに対して懐疑的だった欧州各メーカーもハリアーが作った新たな市場に参入します。BMWはXシリーズを、フォルクスワーゲンとポルシェは共同で開発を行い、トィアレグとパナメーラのネーミングでそれぞれ発売しました。その他のメーカーも高級志向のSUVを販売しており、新たな市場を開拓したという意味でハリアーはエポックメイキングな車種といえます。
ハリアーとCX-5の主なスペックを比較
国内のラグジュアリー・クロスオーバーSUV市場ではハリアー登場以前、マツダのCX-5が2012〜2014年の販売台数で首位を維持していましたが、2015年はハリアーが約6.6万台を販売、CX-5の約2.7万台を大きく上回る結果となりました。ここではハリアーのハイブリッド車とライバルとなるCX-5のクリーンディーゼル車を比較します。
ハリアー(ELEGANCE) | CX-5 XD(PROACTIVE) | |
全長×全幅×全高(mm) | 4720×1835×1690 | 4540×1840×1705 |
客室内寸法 | 1965×1480×1220 | 1910×1530×1280 |
車両重量 | 1770kg | 1620kg |
最高出力 | 112kW(152PS)/5700rpm | 129kW(175PS)/4500rpm |
JC08モード | 21.4km/L | 18.0km/L |
最大トルク | 206N・m(21.0kg・m)/4400~4600rpm | 420N・m(42.8kg・m)/2000rpm |
車両本体価格 | 3,774,857円 | 3,061,800円 |
両車ともにクロスオーバーSUVなので悪路の走破性を高めるトルクは十分にありますが、やはりCX-5の 2000回転で発揮する420N・mは強烈なパワーといえます。車重差もCX-5の方が150kg軽いので、未舗装路や雪道といったオフロードの走行面ではCX-5の方が若干、優れているといえます。
また4WDシステムはどちらも電子制御式ですが、CX-5 がフロントエンジンのパワーを後輪に伝える一般的な機械式システムであることに対し、ハリアーはプロペラシャフトを介さず、後輪専用のモーターを状況に応じて作動させる電子式システムのE-Fourを採用しています。アクセル全開の加速時や後輪が滑るような路面で効果を発揮するシステムなので、ハリアーの方が都市圏走行に向いているといえます。
マニュアルモードでスポーツライクな運転も可能
3代目ハリアーも初代からのラグジュアリー志向をしっかりと引き継いでおり、車内は高級セダンに引けを取らないデザインと装備が施されています。ステアリングとセンターコンソールの一部には伝統ともいえるウッドパネルを採用、インテリアカラーではディープボルドーにブラックのコンビを選ぶことができ、夜間はライトの点灯と同時に車内をクリアブルーのイルミネーションで演出するといった小技も効いています。
トランスミッションはCVTですが、シフトレバーをマニュアルポジションに入れるとCVTチェーンを任意のギア比に固定できる7速シーケンシャルシフトマチックなので、スポーツライクな運転を楽しめるのもハリアーの魅力のひとつです。
クロスオーバーの雰囲気を楽しみたい人に最適の1台
ハリアーは都市圏とオフロードを頻繁に往来しない限り、その機能を十分に利用できない贅沢な車種となります。ボディサイズは大きいけれど多くの人を乗せられるわけでもないし、エンジンパワーは強力だけれどスポーツカーのように俊敏な走行ができるわけではありません。
ただし、車高やエクステリアは存在感のオーラを発し、車内装備は必要以上に豪華仕様となっています。車の持つ実用性よりも存在感や雰囲気を楽しみたい、という人には最適な1台となるでしょう。
筆者の主観的所見
E-Fourシステムは未舗装路やスリッピーな路面、またはスタート時に高い効果を発揮しますが、後輪軸にモーターを設置するのでどうしても車重が重くなるため、ハイブリッド車のメリットである燃費性能は悪くなります。走行重視型のハイブリッドと割り切れれば問題ありませんが、その際、気になるのが車両本体価格です。
ガソリンエンジン仕様のELEGANCEグレードはFFで288万円、機械式4WDでも約307.4万円と、ハイブリッドのELEGANCEに比べて70〜90万円以上安く設定されています。トヨタのフラッグシップモデル、クラウンでもガソリン仕様とハイブリッド車の同グレードにおける価格差は50〜60万円なので、ハリアーの価格差は極端に大きいといえます。
ガソリンエンジン仕様のELEGANCEでもエクステリアやインテリアの装備に大きな違いはないので、走行性能を思いっきり楽しむのではなく車の持つ雰囲気を重視するのであれば、FFのELEGANCEでも十分にコストパフォーマンスを発揮してくれるでしょう。