〜セダン感覚で運転できるミニバン〜
トヨタ・ウィッシュ〜スポーティタイプに車高を低く設計したミニバン
トヨタのウィッシュは3列シートを備えたステーションワゴンタイプのミニバンです。全高を1.6m以下に抑えているので立体駐車場に入庫することができ、セダン感覚で運転できることをセールスポイントとしています。全幅は3ナンバーと5ナンバーサイズを用意、乗員定員も6名と7名があり、ユーザーのカーライフやニーズに合わせて選べる車種が揃っています。
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ホンダ・ストリームの対抗馬として開発された初代
初代は2003年に登場しました。当時、トヨタにはステーションワゴンタイプの7人乗りモデルとしてイプサムを販売していましたが、2001年のフルモデルチェンジで5ナンバーサイズから3ナンバーサイズに変更、5ナンバーサイズの同タイプがラインナップから消滅してしまうことを避けるために開発・製造されました。
この背景にはホンダ・ストリームの爆発的な人気があります。2000年に発売された5ナンバーサイズのストリームは登場からわずか10ヶ月で累計販売台数10万台を超え、この年の日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するほど高い評価を得ました。一方、排気量もアップしたイプサムは期待されたほど販売台数が伸びず、2004年には大掛かりなマイナーチェンジを行うも販売台数に結びつくことはなく、短期間ではありますがストリームの独走態勢を許す結果になりました。
ストリームの対抗馬として販売されたウィッシュは、イプサムが実用性を優先したコンセプトであったことに対してスポーティな走行を重視、イプサムの穴埋め的存在であることを否定した設計になっています。このスポーティ路線は2009年のフルモデルチェンジでさらに強調され、シャープなボディラインとグレードによって7速パドルシフトが与えられています。
ウィッシュとジェイドの主なスペックを比較
ストリームはウィッシュの登場によって販売台数が伸び悩んだことから、ホンダはストリームの生産終了を決定、同サイズの新車種ジェイドを発売します。5ナンバーのステーションワゴンタイプミニバンはトヨタとホンダが現在でも激しいシェア争いを繰り広げています。ここではウィッシュのスポーツモデル2.0ZとジェイドのスポーツモデルRSの主なスペックを比較します。
ウィッシュ2.0Z | ジェイドRS | |
全長×全幅×全高(mm) | 4600×1745×1600 | 4650×1775×1530 |
客室内寸法 | 2660×1470×1315 | 2850×1505×1230 |
車両重量 | 1430kg | 1510kg |
JC08モード | 14.4km/L | 18.0km/L |
最高出力 | 112kW(152PS)/6100rpm | 110kW(150PS)/5500rpm |
最大トルク | 193N・m(19.7kg・m)/3800rpm | 203N・m(20.7kg・m)/1600~5000rpm |
車両本体価格 | 2,592,982円 | 2,530,000円 |
スペックだけを比べると、あらゆる面でジェイドが上回っています。ウィッシュのフルモデルチェンジは2009年とやや古く、ジェイドは2012年に登場した新車種(国内販売は2015年から)であることがその理由です。
またウィッシュは2.0Lの直列4気筒自然吸気エンジンであることに対してRSは排気量1.5Lの直列4気筒にターボチャージャーを装着したL15B型が搭載されています。ダウンサイジング化していることも現在の車事情の潮流に合わせているといえるでしょう。排気量の差はそのままJC08モード値に表れています。
2列目はウォークスルーが可能なキャプテンシートを採用
ウィッシュが持つ車内空間の快適性やユーティリティ性はジェイドに引けを取りません。3列シートは後方に行くほどヒップポイントが高くなるシアターレイアウトになっているので3列目でも前方視界が確保され、圧迫感が少ないデザインになっています。
前席にはホールド性の高いバケットタイプのシートが装備され、2列目はキャプテンシート仕様なので3列目までウォークスルーが可能、シートスライド幅は270mmあるので5人乗車時であれば足元に大きな余裕が生まれます。
2.0Zのインテリアカラーはブラックで統一されていますが、1列目と2列目のシートサイドにオレンジを配色してアクセントを加えています。インパネには立体成型の文字盤を使ったオプティトロンメーターを採用、メーター周囲のメッキリングが高級感を演出しています。スポーツモードスイッチをONにするとタコメーターとスピードメーターの照明がレッドに変わる小技が設定されており、スポーティ走行気分を盛り上げてくれます。
ミニバンでもスポーティな気分を味わいたい人に最適な車種
スポーティな車種が欲しいけれど家族を乗せた時の利便性も欲しい、という人の妥協点がウィッシュといえるでしょう。他の5ナンバーミニバンほどユーティリティ性は高くありませんが、車高が低いのでスポーティな走行気分を味わうことができます。
ただしスポーツ走行は乗員定数と反比例します。車内空間が広く、2750mmのロングホイールベースを持つウィッシュは加速感やパドルシフトによるマニュアル感覚のギアチェンジを楽しむことはできてもコーナリングはミニバン以上の性能を発揮することはできません。スポーツモデルといっても過度な期待はしない方が賢明です。
筆者の主観的所見
ウィッシュのウイークポイントはフルモデルチェンジからすでに7年が経過しているというロングスパンです。マイナーチェンジは行われていますが、エクステリアやインテリアなどの改良に留まっており、エンジン性能や予防安全装置に関しては発売時から変わっていないので、やや古さが感じられることは否めません。2016年9月の段階ではウィッシュがフルモデルチェンジされる情報が流れていないので、ステーションワゴンタイプのミニバンを購入するのであれば、ジェイドをお勧めします。
装備や最新モデルにこだわらなければ、ウイークポイントは購入の際の値引き交渉材料になります。ディーラー側もウィッシュの在庫を抱えている状況なので、ジェイドが競合車種であることを担当スタッフに伝えれば大幅な値引きやオプションサービスが期待できます。2016年9月の段階では30〜40万円が値引き限度額となっているので、この攻防ラインで交渉成立すればコストパフォーマンスに優れた車種を手に入れることができます。