〜優れたミドルクラスクロスオーバーSUV〜
トヨタ・ヴァンガード〜ハイパワーエンジン搭載のクロスオーバーSUV
トヨタのヴァンガードは2007年から2013年まで販売されていたクロスオーバーSUVです。2列シート5人乗りの他にミドルクラスSUVのサイズとしては珍しく3列シート7人乗りのモデルを設定していました。販売終了後の後継車はハリアーとなっています。
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アクティブ&ラグジュアリーが開発コンセプト
トヨタの販売チャンネルであるトヨペット系列とカローラ系列で扱われていたヴァンガードはそれまでカローラ系列とネッツ系列で販売されていたクロスオーバーSUV、クルーガーの後継車として開発されました。
クルーガーが同じくトヨタのクロスオーバーSUV、ハリアーの姉妹車だったことに対してヴァンガードはネッツ系列で販売しているRAV4をベースにしていることから、全幅は1855mmとワイドでありながらも全長は4570mmしかなく、クルーガーより120mmも短いボディサイズに設計されています。
開発コンセプトは「Active&Luxury(アクティブ&ラグジュアリー)」とオンロード寄りクロスオーバーSUVの定石を踏まえたテーマで、エクステリアはタイヤハウスにオーバーフェンダーを採用して迫力を出していますが、全体のフォルムはスリムでステーションワゴンに近く、ボディ下部を覆う樹脂製ガードも備えていません。
通常使用の快適性を確保していない3列目シート
インテリアはアルカンターラ表皮のシートにオレンジステッチの革巻きステアリング、インパネ回りはブラックとブロンズ調ブラウンを組み合わせたツートーンカラーでラグジュアリー感を強調、コンセプトを体現した装備になっています。5人乗り2列シート仕様は前後乗員ともにゆったりできるスペースを確保していますが、7人乗り3列シート仕様の3列目は大人が長時間座るだけの快適性がないので非常用と考えた方がいいでしょう。
ハリアーと主なスペックを比較
現在、トヨタのミドルクラスにおけるラグジュアリーSUVの主役はヴァンガードの後継車、ハリアーとなっています。ここではハリアーとの主なスペックを比較します。
ヴァンガード240S | ハリアー(ELEGANCE) | |
全長×全幅×全高(mm) | 4570×1855×1685 | 4720×1835×1690 |
客室内寸法 | 1885×1495×1240 | 1965×1480×1220 |
車両重量 | 1540kg | 1580kg |
JC08モード | 13.2km/L(10.15モード) | 16.0km/L |
最高出力 | 125kW(170PS)/6000rpm | 111kW(151PS)/6100rpm |
最大トルク | 224N・m(22.8kg・m)/4000rpm | 193N・m(19.7kg・m)/3800rpm |
ホイールベース | 2660mm | 2660mm |
エンジン排気量 | 直列4気筒DOHC2.4L | 直列4気筒DOHC2.0L |
ヴァンガードの車内空間は車内長こそハリアーに劣っているものの、車内幅や車内高では優っており、3列目シートはあくまで非常用と想定しておけば、ハリアーと十分に互角、あるいはそれ以上の車内ユーティリティ性を備えているといえるでしょう。
エンジンパワーにおいても排気量で0.4Lの余裕があり、しかも車重が40kgも軽いのでスペックだけを見れば最高出力、最大トルクともにヴァンガードが優位に立っています。ただし燃費効率に関してはハリアーの方が最新の燃費技術が投入されていることに加え、ヴァンガードは10.15モードと古い基準値なので、実走行では数値以上に大きな差が生じます。
アクティブにオフロードまで楽しみたい人に最適
ヴァンガードは2.4Lの他にV型6気筒DOHC3.5Lを搭載した350Sグレードがあります。昨今のダウンサイジング化でミドルクラスではすっかり影を潜めた最高出力自主規制いっぱいの280ps、最大トルクは344N・mを発揮する高性能モデルで、オフロード走行でもパワー不足を感じることがないクロスオーバーSUVの王道ともいえる車種です。
ラグジュアリーがテーマとなっていますが、もうひとつのコンセプトであるアクティブに趣を起き、省エネよりもオフロードの走行を楽しみたいという人であれば、中古車市場で350Sの状態が良い車種を探し、購入するだけの価値がある車種といえるでしょう。
販売チャンネルのSUV再編成事情から短命に終わった車種
トヨタは販売チャンネルの多角化、いわゆる5チャンネル体制で成功したメーカーです。姉妹車のバッジエンジニアリングで車種を増やして他チャンネル化を定着させました。この方式を追従したマツダと日産は車種不足のため多チャンネル化に失敗、経営困難な状況にまで陥って多チャンネル化から撤退しました。
多チャンネル化はトヨタに大きな実績を残していますが、ヴァンガードに限っては多チャンネル化の狭間に生まれた車種といってよく、月間販売台数ではトヨタのSUV車ラインナップの中で18ヶ月連続で最多登録台数を記録、また新車販売台数全体でもSUV車部門では2度、月間最多販売台数のトップを取っていながらも当時のトヨタのミドルクラスSUV車再編事情によって短命に終わっています。
現在、トヨタはミドルクラスのクロスオーバーSUVはオンロード寄りのハリアーしかありません。日産のエクストレイルやマツダのCX-5などが好調な販売成績を残しているだけに、スタイリッシュなだけでなくオフロード走行性能に優れたミドルクラスクロスオーバーSUVの登場が待たれるところです。
筆者の主観的所見
ヴァンガードは2013年11月に販売を終了しているので、購入車両は必然的に中古車となります。最終登録モデルでもすでに3年落ちとなりますが、クロスオーバーSUVでは比較的販売台数が多く、中古車市場にも豊富な車数が流通しているので状態の良い車種を探すことができます。
240Sであれば5年落ちとなる2011年登録モデルで走行距離3〜4万kmの車種が160〜180万円の範囲内で購入でき、2万km前後の優良モデルでも200万円前後が相場となっています。ただし350Sになると車数が極端に減るので、状態の良い車種を選ぶなら販売されている車種を丹念に調べる必要があります。相場は2012年登録モデルで走行距離が3〜4万kmでも200〜210万円となっているので、240Sと変わらない価格で購入することができます。