車買取トラブルの瑕疵担保責任とは

簡単にインターネットから申し込めるようになった中古車買取の一括査定は大変便利なシステムです。あちこちの買取店を巡らなくても、いくつかの買取業者から出張査定を依頼して、一番高く査定した業者に車を売ることができます。

基本的には優良な登録業者によって引き取られて、契約した売却代金が支払われます。しかし、残念ですが「全ての買取業者が優良」とはいえないのが実状です。

稀なケースですが、契約した後に車を約束の日時に受け渡ししたにも関わらず、難癖をつけて代金をすぐに支払わない業者はゼロではありません。結局契約者は、担保として車を取られた状態で価格の再交渉を余儀なくされ、「査定額を半額に値下げ」という理不尽な要求を受け入れる被害もあります。

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車両引取後に業者から「瑕疵担保責任」を盾に、価格の値下げを要求された例を見てみましょう。


簡単すぎる査定と高額買取、契約の即決には注意!

事故車を売却して不安になる

このトラブルは、Aさんが3年前に2年落ちで購入した中古車を、買取業者の○社に売却したことから始まります。契約の当日は、他の業者同様に査定後に見積もりを提示され即決を迫られました。

正直、買取○社の査定・営業担当のBさんは、車をあまり見ること無く車検証とAさんの身分証を確認しただけで、他社のように査定を厳しく見ている様子はありませんでした。

しかし、「今日決めてもらえるならこの金額で…」と34万円を提示され、競合他社が30万円以下だったのでAさんはグラっときてしまいました。

これ以上、他社との交渉も面倒だと感じていたAさんは、その場で契約してしまいます。その時は、後のトラブルなど予想していませんから、契約書の内容も受け渡し日の確認程度しか見ていませんでした…

車両の受け渡し後に事故歴が発覚する

Aさんは、契約の日時に車の受け渡しを済ませて、翌日の入金を待っていたところに買取○社のBさんから思いもよらぬ電話が入ります。

買取○社のBさん
Aさん!事故車を黙って売りつけるなんてひどいじゃないですか?

Aさん
(驚きながら)私は中古車で購入してから一度も事故を起こしてませんが…?

買取○社のBさん
昨日引取後すぐにオークション会場に持ち込んだところ、本日、Aさんから買い取った車が事故車ということで、出品不可の連絡が入りました。オークション会場の専属査定士が見つけてくれたので、販売のペナルティはありませんが、当店は売却ができません。

今回のトラブルの瑕疵担保責任は、Aさんにあるので、このまま当店で引き取るのであれば査定価格を半額の17万円として再契約となります。また、今回のオークション出品料と無駄になった往復の輸送費として2万円を差し引かせていただきます。

Aさん
では、契約キャンセルということで車を返して下さい。

買取○社のBさん
その場合、先の出品料と輸送費に加え、キャンセル料3万円を足した5万円を当社にお支払い下さい。お支払い確認後、お車の返却を致します。

Aさん
検討して後ほど連絡します。

Aさんが、途方に暮れてしばし呆然として、どうすれば良いのか?何も考えることができませんでした。買取○社のBさんが査定で現物を見たのだから、後から撤回してくるのは納得がいきませんでした。


引き渡し後のトラブル「瑕疵担保責任」とは?

Aさんの疑問は、車を売ったときの瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)と「その原因は本当に自分にあるのか?」ということでした。瑕疵担保責任では、該当する車に隠れた瑕疵が認められた場合、買い取った業者は契約者に対して瑕疵担保責任による、この契約で生じた損害賠償や契約キャンセル請求が可能になります。

参考・物の瑕疵に関する担保責任(民法第570条)

しかし、今回のケースでは、瑕疵担保責任を否定することはできませんが、Aさんの責任はごくわずかで限定的といっても良いでしょう。

商取引から契約者を守る法律

責任を求められる査定士

今回のトラブルでは、本質的に間違っているのは買取○社のCさんした査定業務の見落としが原因です。○社は、買い取り業者でありプロとして契約のための査定業務にも責任が生じます。

つまり、実車を確認しているBさんの査定業務によるもので、○社の業務遂行上のミスをAさんに転嫁するのはおかしな話です。

もし、このケースでAさんの瑕疵担保責任による損害を求めるとすれば、査定時に事故車であることを見つけて指摘し、Bさんの交通費程度が被害額として請求できる範囲とも考えられるでしょう。

理不尽な売買契約を無効とする消費者契約法

契約者保護法という法律があり、今回のケースではその法律を持って、瑕疵担保責任そのものを否定することも可能です。契約者保護法にある消費者契約法において、売買契約書では、契約者が一方的に不利になるキャンセル条項やペナルティ条項、一律のキャンセル料を課す条項は全て否定されます。

消費者契約法の第9条第1号には、契約の解除に伴うキャンセル料などを定めている条文・条項は、事業者に生じた平均的損害金額、つまり妥当な金額を超えた部分を無効とあります。

つまり、業者が業務遂行の上で被った損害を契約者に求められるのは、妥当と認められる実損害のみとされており、先のAさんへの一方的なキャンセル料や根拠の示されていないオークション出品料や輸送費など、損害として到底認められません。

プロが見抜けない修復歴ってあるの?

確かに修復歴は、プロの資格を持った査定士でも難しい場面はありますが、しっかり見ていけば見落とすことはありません。これは、査定士として現場にたった筆者の経験から断言できます。また、オークション会場の査定士は、短時間でかなりの台数を確認しますが、ほとんど漏れ無く確認しています。

査定士としての経験からいえば、「修復歴あり」なのか判断しにくい車両は、一部の高級スポーツカーやトヨタ2000GTのようにハンドメイドで制作されたボディパーツのある車だけです。(それでも丁寧に見ていけば、修復歴はほとんど見抜くことが可能です)

生産ラインでロボットによるスポット溶接で組み立てが行われて作られた車なら、後から修復すると必ず修復の痕が残ります。査定ミスについては、業者側がその間違いを謙虚に受け止め、より確実な査定業務の遂行に努め、技術向上を量るべきでしょう。このような場合、業者は消費者に責任転嫁すること無く、自身の本業に真摯であるべきと筆者は考えます。

筆者は、買い取りのプロとして査定している者が、「オークション会場の専属査定士に指摘されたので責任をとってほしい」というのは、とても恥ずかしいことだと思います。

一部の中古車買取店では、車の売却契約に加入できる「クレームガード保証」という保険があります。「買取店は車の買取後、瑕疵担保責任を問わない」という内容で5000円ぐらいから契約時に加入できます。

関連ページ・
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査定士の決めた価格の責任はどこに?

査定は、「一般財団法人日本自動車査定協会(以下:JAAI)」の資格を有していなくても可能です。したがって「JAAIの査定士資格を有しているか否か?」ということは、査定の責任には影響しません。JAAIに登録されている査定士の数は、2019年のデータでは13万を超えています。

消費者から大切な車を買い付ける買取業者の査定担当者は、査定士の資格は持っていない場合がありますが、修復歴の確認ができる程度は訓練されています。査定業務を行い値付けしたからには、相応の責任が生じることを買い取り業者各社と査定を行う者はしっかり認識して業務遂行するべきでしょう。

後で発覚した不具合に対して価格の変更ができる条文や、契約者に瑕疵担保責任が生じたときに責任を免れる「保険のようなもの」を取り扱うのも問題です。業界の信用を高めたいのであれば、買い取り業者全体が真摯な姿勢で高度な査定業務行うように取り組むべきです。

トラブルの相談はどこに?

もし、今回のAさんのように理不尽な要求や、引取後の減額要請など予期せぬ事態が起きた場合は、泣き寝入りすること無く最寄りの「国民生活センター」、または「法テラス」など、法律の専門家の手を借りるなどして事態に対応しましょう。

現在、中古車買取り一括査定を運営サイトでは、キャンセル条項や一律のキャンセル料を条文に織り込んだ売買契約書を使用する業者、契約後に価格変更を促す二重査定を行う業者について排除するように努めています。こうしたサイトから業者を選ぶことが、トラブルを回避することに役立つことでしょう。

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