〜世界最短約13秒の自動開閉のルーフ〜

マツダ・ロードスターRF〜オープンカーのデメリットをすべて解消したか

マツダのロードスターRFは2シータースポーツカー、ロードスターのタルガトップ版です。Rはリトラクタブル式ハードトップ、Fはファストバックの意味が示すようにフルオープンではなく、シート後方のルーフはボディと一体型のデザインで流麗なラインをテールエンドまでつなげています。電動式のルーフはスイッチによって自動的に作動し、走行中でもロックまで約13秒と短い時間で開閉できます。

メーカー車両情報・マツダ ロードスターRF

原点回帰でスパルタンに変身した4代目ロードスター

2005年から2015年にかけて販売されていた3代目ロードスターは全幅が1720mmの3ナンバーサイズになり、排気量も2.0Lにパワーアップされましたが、その分、車重も増えてAT搭載車は1140kgまで増えました。ロードスターの個性であるライトウェイトスポーツカーというカテゴリーを考えると、やや重くなってしまった感は拭えません。そこで2015年に発売された4代目ロードスターは原点回帰を目的に開発されました。

エンジンはSKYACTIV技術が投入された1.5Lにダウンサイジング化され、車重はグラム単位で軽量化を図ったことで990〜1060kgに抑えられています。初代に比べて電子制御部品が大幅に増えていることを考えると、この軽量化は特筆すべき設計の結晶といえます。

また、あえてライトウェイトスポーツカーの持ち味を再現するためにコントロール性を重視した全体チューンが施されています。やや非力なエンジンをフルに回し、コーナリングをシビアなステアリング操作でテールを流しながら走行するのは確かにスポーツドライビングの楽しさではありますが、オープン2シーターの雰囲気を味わいたい、という人にはスパルタンな車種でもあります。

3代目ロードスターに似たクルージングを楽しめる個性

そういったユーザーの希望に応えられるのがRFといえます。搭載されているエンジンはSKYACTIV技術採用の2.0Lに変更され、ステアリングにシフトスイッチがついた6速ATも設定されているのでコーナーを攻める楽しさとは別に、クルージングでゆったりと走る楽しさを味わうことができます。ちなみにタルガトップとは2シータークーペの後部ピラーがボディと一体型になっており、頭上のルーフパネルだけが取り外せるオープンカーの種別を表しています。

ソフトトップは装着するとロードスターに限らずボディフォルムの造形美を崩してしまうものですが、タルガトップはルーフが外せるだけなのでボディフォルムの造形美を保つことができます。これもロードスターRFの魅力のひとつでしょう。

兄弟車ロードスターと主なスペックを比較

ロードスターは2016年4月に累計生産台数100万台を達成しました。初代モデル生産から27年間による記録となります。ライトウェイトスポーツカーとしては異例のロングセラーとなっています。かつてはイギリスやイタリアを中心に、盛んに生産されていたライトウェイトスポーツカーが今は絶滅状態となっており、ライバル不在であることもロングセラーの要因でしょう。ここではRFのベースモデルとなったロードスターとの主なスペックを比較します。

ロードスター SロードスターRF S
全長×全幅×全高(mm)3915×1735×12353915×1735×1245
車両重量990kg1100kg
JC08モード17.2km/L15.6km/L
エンジン排気量1.5L 2.0L
最高出力96kW(131PS)/7000rpm116kW(158PS)/6000rpm
最大トルク150N・m(15.3kg・m)/4800rpm200N・m(20.4kg・m)/4600rpm
車両本体価格2,494,800円3,240,000円

エンジン排気量が400cc増えたことでRFには元車に比べるとパワーに余裕が生まれ、最高出力の回転数も下がって扱いやすい印象を受けます。2.0Lエンジンとしては突出しているスペックではありませんが、車重がわずか1.1tしかないのでスポーティな操縦感覚も十分に楽しめます。元車との販売価格約24万円差は、スパルタンな走行よりもクルージングを主体とするのであればコストパフォーマンスを十分に享受できるでしょう。

静粛性を高めるための極小パーツ

RFのルーフシステムはフロント、ミドル、リアの3パーツに分かれています。スイッチを押すとリアルーフが持ち上がり、フロントとミドルのルーフが折りたたまれて収納、その後にリアルーフが元に戻ります。マツダが言う「開閉作動も世界一美しい」かはともかく、アニメや映画のトランスフォーマー的作動が好きな人にはルーフの開閉だけでも楽しめることでしょう。

もちろんサプライズ的というだけでなく、ソフトトップより優れている遮音性を備えています。乗員の耳元に近いBピラー部分には左右にコの字型の小さな壁をリアルーフ内側に、さらにリアルーフとBピラーの隙間を埋めるために極小リップが装着されています。両方とも小さなパーツですが乗員の快適性を高めるための効果は大きく、細部まで設計が行き届いていることが分かります。

クローズドボディの2シーター軽量級を求める人に最適の車種

コクピットは元車と共通ですが、メーターパネル内の4.6インチTFTカラー液晶ディスプレイにはルーフ開閉状態が表示され、ルーフを作動させるとリンクしたアニメーションやテキストによって状態をリアルタイムでドライバーに伝えてくれます。ハードトップを電動式にしてコクピットの後ろに収納すると、どうしてもトランクルームは狭くなるのですが、RFはソフトトップ車と同等の容量を確保、航空機持ち込み可能のキャリーバッグを2個搭載できる広さがあります。

かつてホンダの軽量スポーツカー、S800にはクーペタイプのクローズドボディがあり、また2代目ロードスターもクーペを受注生産、現在、中古車市場ではどちらもプレミアム価格で取引されています。クローズドボディのライトウェイトスポーツカーは天候に左右されずに運転できるだけでなく、コクピットがタイトな感覚になることが大きな魅力です。 2シーターのライトウェイトスポーツカーは欲しいけれど、オープンではなくクローズドボディが好みという人には最適な車種でしょう。

筆者の主観的所見

オープンカーを憧れだけの軽い気持ちで購入するならば2台目に限ります。日常的に使う1台目として購入するとかなり後悔を抱くことになるでしょう。日本の気候はけっしてオープンカーに向いているとはいえず、春や秋のわずかな日数しか適していません。荷物を積むこともできず、4人でドライブすることもできません。

加えて屋外駐車場を利用するならば必ずソフトトップを装着しなければならず、また陽光の強い場所に長時間保管しておくとソフトトップが確実に日焼けします。ソフトトップに対する悪戯も心配の種でしょう。これらのデメリットを覚悟して、なお購入するという決意を求めるのがオープンカーなのです。

その点、ロードスターRFはハードトップを装着するだけでクローズドボディとなり、オープンカーのデメリットをすべて解消します。タルガトップなので開放感はオープンタイプに劣りますが、ルーフがないだけでもドライブ中の爽快感は十分に味わえるでしょう。自分に決意が足りないな、と思う人は迷わずロードスターRFの購入を考えた方が無難です。


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