〜コンパクトカーとして優れているが‥〜
日産ノート〜ライバル車と比べると圧倒的に車内空間が広い
日産のノートは日常的なカーライフで使いやすい2BOXハッチバックのコンパクトカーです。ライバル車に比べて車内空間が広いこと、エンジンの低回転域から過給するスーパーチャージャーを装備していることが大きな特徴で、2代目となる現行車が発売された2012年度下半期ではハイブリッド車を除くガソリンエンジン搭載の登録車で販売台数No.1を獲得した実績を持っています。
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幅広いグレード体系でコンパクトカーのニーズを取り込む
初代のノートは2004年に登場しました。日産は同時期、ノートの上級ランクとなる2BOXハッチバックのティーダも発売しています。プラットフォームは共通なので車内の広さは変わりませんが、単なるコンパクトカーではなく5ナンバーサイズを保ちながら高級セダンと変わらぬ装備品と車内の広さを実現、ティアナやスカイラインからダウンサイジングを狙う高齢者層から高い評価を受けました。
しかしティーダの販売台数が増えると廉価版のノートが伸び悩むというジレンマから日産は2012年にティーダの販売を終了、ノートをフルモデルチェンジしてティーダを取り込むという販売戦略に出ました。2代目ノートは基本的にシンプルな内装で経済的なコンパクトカーをセールスポイントにしていますが、グレード体系は幅広くなり、ティーダの後継車となる高級志向のアクシスやカスタム系のライダーなど、コンパクトカーのニーズに合わせた車種が豊富に揃っています。
ノートを含めたコンパクトカー3車の主なスペックを比較
ノートはトヨタのヴィッツやマツダのデミオと同じく世界戦略車として開発されており、ヨーロッパではBセグメントに属します。ここでは3車の主なスペックを比較、その違いを検証します。
ノート(X DIG-S) | ヴィッツ(U) | デミオ(13S) | |
全長×全幅×全高(mm) | 4100×1695×1525 | 3885×1695×1500 | 4060×1695×1500 |
客室内寸法 | 2065×1390×1255 | 1920×1390×1250 | 1805×1445×1210 |
ホイールベース | 2600mm | 2510mm | 2570mm |
車両重量 | 1090kg | 1010kg | 1030kg |
JC08モード | 26.2km/L | 25.0km/L | 24.6km/L |
最高出力 | 72kW(98PS)/5600rpm | 73kW(99PS)/6000rpm | 68kW(92PS)/6000rpm |
最大トルク | 142N・m(14.5kg・m)/4400rpm | 121N・m(12.3kg・m)/4400rpm | 121N・m(12.3kg・m)/4000rpm |
車両本体価格 | 1,711,800円 | 1,791,818円 | 1,458,000円 |
主なスペックで目立つのはノートのホイールベースです。他の2車よりも長く設計しているので客室内全長やラゲッジルームが比例するだけでなく、直進安定性や乗り心地も向上しています。また最高出力は3車とも大きな違いはありませんが、最大トルクにおいてはノートがリードしています。これは低速域で効果を発揮するスーパーチャージャーを装着していることが最大の要因となっています。
ただし、車両本体価格を見るとデミオの低い設定が目立ちます。デミオの車内装備は上級モデルと統一デザインになっており、シンプルでありながらコンパクトカーでは見られない上質感があります。実用性よりも価格やデザインを重視するのであればデミオがお勧めです。
燃費効率に特化したノートのスーパーチャージャー
スーパーチャージャーとはエンジンに大量の空気を送り込む過給器の1種です。同じく過給器にはターボチャージャーがありますが、違いは前者がエンジンのパワーを利用してタービンを回すことに対し、後者はエンジンの排気を利用することです。
スーパーチャージャーは機械式のため、低回転域から作動するのでターボチャージャーよりもタイミングロスが小さいメリットを持っていますが、小排気量エンジンの場合はメカニカルロスが大きいこと、またターボチャージャーがタイミングロスを最小にしていることからターボチャージャーが主流になっています。
日産は傍流となっているスーパーチャージャーを低回転域に特化させ、燃費効率型に改良してノートに装備しました。他の2車が直列4気筒DOHCを採用していることに対し、コンパクトな直列3気筒DOHCを搭載していますが、最大トルクで大きくリードしていながら、JC08モードのカタログ値でもトップを記録しています。この走行性能はスーパーチャージャー装着の効果の表れといえます。
オールラウンドな実用性を備えたコンパクトカー
客室内寸法の全長も2車を大きく引き離しています。後部席でも大人が足をゆったりと組めるスペースがあり、後部席を前倒させれば9インチゴルフバッグを3個並べられるほどの容量があります。
コンパクトカーのメリットは低価格でオールラウンドなユーティリティ性能を持っていることです。都市圏で近距離運転が主体の人であれば、ノートは購入検討の資格を十分に備えている1台といえます。
筆者の主観的所見
ノートはコンパクトカーとして優れたパッケージを持ちますが、残念ながらインテリアの質感は樹脂製が目立ち、デミオに比べるとややチープなイメージであることは否めません。MEDALISTやアクシスといった上級グレードになればチープ感はやや薄まりますが、基本デザインが同じなので後付感が強くアンバランスな印象を受けます。ティーダと同等の車内空間は確保していますが、上質感までを期待すると肩透かしされる可能性があることを想定しておきましょう。
ヨーロッパのBセグメント(日本のコンパクトカー)は基本的に実用性を重視しているので車内装備がチープであることはノートに限ったことではなく、同じ国産車のヴィッツも実用本位でまとめられています。ノートを購入する際、インテリアデザインは「この程度」と割り切って、上級グレードよりも X DIG-Sなどミドルグレードを選んだ方が賢い選択といえるでしょう。