〜進化した予防安全装置を搭載するムーヴ〜

ダイハツ・ムーヴ〜スペックは標準値だが最新技術を満載

ダイハツのムーヴは全高1.6mを超えるトールワゴンです。初代は1995年に発売され、2014年のフルモデルチェンジで現行車は6代目となります。走行性能面のスペックはトールワゴンの標準値ですが、予防安全装置のスマートアシストⅡ、省燃費機能のイーステクノロジーといった現在の軽自動車に求められる最新技術を満載していることが大きな特徴です。

メーカー車両情報・ダイハツ ムーヴ

3代目より新設計プラットフォームで製造

初代ムーヴは軽自動車業界最大のライバル、スズキがワゴンRを発売したことから急遽、開発されました。2BOXハッチバックのミラをベースとして車高を上げただけのトールワゴンだったので乗員の着座位置は低く、車内快適性においてはワゴンRに及ばずスズキの独走態勢を許す結果となりました。

ムーヴに新開発のプラットフォームが採用されたのは2002年にフルモデルチェンジした3代目からです。2BOXハッチバックベースではなく、トールワゴンとして設計されたため、車内の快適性はワゴンRに匹敵、さらに現在のスマートアシストⅡにつながる先行車追従・減速制御システムのレーダークルーズコントロールなど多数の先端技術が搭載され、ダイハツの基幹車種になると同時にワゴンRの強力なライバルとなりました。このライバル関係は現在も続いています。

燃費のカタログ値ではライバル車を上回る

現行車6代目は5代目の基本構造を引き継ぎながら、骨格部分に高張力鋼を使ったり外板に樹脂を採用したりして基本性能の向上と軽量化を図っています。以下にムーヴの主なグレードのスペックをまとめました。

XターボXL
全長×全幅×全高(mm)3395×1475×1630
車両重量830kg820kg820kg
JC08モード27.4km/L31.0km/L31.0km/L
最高出力47kW(64PS)/6400rpm38kW(52PS)/6800rpm38kW(52PS)/6800rpm
最大トルク92N・m(9.4kg・m)/3200rpm60N・m(6.1kg・m)/5200rpm

上記のスペックをワゴンRと比較すると、自然吸気エンジンの最高出力は同じで、最大トルクに関してはワゴンRの方が若干上回っており、さらにトールワゴンで人気急上昇のホンダN-WGNとの比較では最高出力、最大トルクともに下回っています。

*ワゴンRは38N・m(6.4kg・m)
*N-WGNは最高出力43kW(58PS)/7300rpm、最大トルクは65N・m(6.6kg・m)/4700rpm

ムーヴが両車を上回っているのはJC08モードの燃費値で、クラストップとなる31.0km/LはワゴンRのマイルドハイブリッドに迫る燃費効率を果たしています。各メーカーとも燃費効率には独自の技術を投入していますが、ムーヴは軽量化、エンジンユニットの改良、ボディ形状の空力性能と、車両全体から燃費効率に取り組みました。

人物や後方も検知するスマートアシストⅡ

ムーヴがライバル車よりも優れている点はアクティブセーフティーにも見られます。衝突事故を回避・軽減するための予防安全装置、スマートアシストⅡはラジエターグリル内のレーザーレーダーで前方の障害物や車を、フロントガラス上部の単眼カメラで人間を、さらにリアバンパーのソナーセンサーで後方の障害物を検知するシステムを採用しました。

各メーカーとも予防安全装置は設定しているものの、ワゴンRのレーダーブレーキサポートとN-WGNのシティブレーキアクティブシステムはともに前方へレーザーレーダーを照射して障害物や車との衝突を回避・軽減するだけの機能に留まっています。軽自動車で人物や後方まで検知できるのはスマートアシストⅡを搭載したダイハツ車だけです。

運転の苦手な人の強い味方になる予防安全装置

トールワゴンは軽自動車が持つ走行性能と実用性を両立させたオールラウンドな車種なので、軽自動車を多目的に使いながら走行性能も楽しみたい人に最適で、ムーヴも例外ではありません。とくに運転初心者で軽自動車を選ぶ場合、スマートアシストⅡ装着車は運転の心強い味方になってくれることは間違いないでしょう。

スマートアシストⅡはベースモデルのL、豪華装備のX、ハイパワーのXターボにそれぞれ設定されており、それぞれ車両本体価格に約6〜7万円上乗せすれば装着することができます。いずれのグレードを選ぶにしてもスマートアシストⅡの装着をお勧めします。

XとLはともに自然吸気エンジンを乗せており、走行性能面では差異がありません。Xはアルミホイールやオートエアコン、プッシュボタンスタートなどXターボに準じた装備が設定され、Lは装備が簡素化されます。両グレードの価格差は約10万円です。実用性を重視するならLでも十分にコストパフォーマンスを発揮します。

ムーヴに対する筆者の主観的所見

2016年7月現在、トールワゴンの中ではもっとも新しい車種だけに最新の技術が導入されており、予防安全性能や車内の装備に関しては高く評価されている車種です。ただし燃費効率に関してはJC08モードのカタログ値ではトールワゴンクラスでトップの座を得ましたが、カタログ値でもワゴンRやN-WGNとの差はそれぞれ0.4km/L、1.3km/Lしかありません。実走行の運転次第ではまったく差がない、と言っても差し支えないでしょう。

ムーヴは燃費効率を高めるために、同社の燃費優先モデル、ミラ・イースの技術を全面的に移植しました。エンジン回りに関してはサーモ・マネジメント技術を導入していますが、どうしても既存のエンジンの熱効率を高めるために「後付け」した感があります。

とくにCVTフルードを低粘度化させ、CVTで発生した熱をエンジンの冷却水と熱交換するシステム、CVTコントローラーはJC08モードのカタログ値を上げることができる(JC08モードはコールドスタートで計測反面、エンジンが温まってしまえば大きな燃費効果は期待できません。

クラストップの燃費効率といってもシステムが増えた分、車重が重くなっているので実走行次第では燃費効率が悪くなることも考えられます。ムーヴを購入の選択肢に入れるならば、燃費効率ではなく予防安全装置で検討した方が賢明です。

ページの先頭へ