〜シンプルで頑丈な車体を誇る〜

スズキ・ジムニー〜ヘビーデューティーの伝統を守る

スズキのジムニーは本格的な悪路でも走行可能な軽自動車のヘビーデューティー・オフロード車です。初代が発売された1970年から現在まで、フルモデルチェンジは軽自動車規格が変更された時だけに行われており、基本構造は初代とほとんど変わっていません。その堅牢なボディとタフネスな走行性能から、レジャーだけでなく山間部や深雪地帯の公用車にも採用されています。

メーカー車両情報・スズキ ジムニー

「社長の道楽」と言われて疑問視された初代モデル

ジムニーの基本構造は、かつて軽オート三輪車の先駆的メーカーだったホープ自動車が開発しました。しかし小規模企業だったことから自社製造・販売を諦め、製造権を譲渡しようと各メーカーに交渉を行い、その結果、スズキが購入を決定しました。現在のスズキの会長兼最高責任者の鈴木修氏による独断でしたが、当時、社内からは「社長の道楽」とか「絶対に売れない」などと悪評が噴出したエピソードが伝えられています。

しかし、基本構造にスズキ独自の改良を加えたジムニーは、それまでの大型4輪駆動車に負けない駆動力を発揮、狭い悪路を持つ日本では扱いやすく、しかも低価格であったことから寒冷地や山間部を抱える地域で好調な販売成績を上げました。

3代目現行車は1998年の軽自動車規格改正に合わせてフルモデルチェンジが行われて以来、ほとんど変更箇所がありません。国産車の中では極端にフルモデルチェンジのスパンが長い車種といえます。とはいえ、昨今のSUVブームからジムニーの街乗り派が増えてきたため、それまでオフロード専門のタイヤしか用意されていませんでしたが、舗装用タイヤの設定を追加するなど現在の車事情に合わせた改良が施されています。

ダイハツのキャストと主なスペックを比較

現在、国内の軽自動車や輸入車のコンパクトモデルでジムニーのライバルとなるヘビーデューティーのオフロード車は存在しません。ここではダイハツの軽自動車でオフロード仕様となっているキャストのアクティバと主なスペックを比較します。

ジムニーXGアクティバGターボSAⅡ
全長×全幅×全高(mm)3395×1475×16803395×1475×1630
客室内寸法1660×1220×12102005×1320×1245
車両重量980kg890kg
JC08モード14.8km/L25.0km/L
最高出力47kW(64PS)/6500rpm47kW(64PS)/6400rpm
最大トルク103N・m(10.5kg・m)/3500rpm92N・m(9.4kg・m)/3200rpm
ホイールベース2250mm2455mm
最低地上高200mm180mm

スペックで一目瞭然なのは車内空間の違いです。アクティバはキャスト3車種共通のプラットフォームを使っているので車内空間が圧倒的に広く、後部席は分割でスライドとリクライニングができるほど快適性が確保されています。

一方、ジムニーは車内長が短く、リアシートは左右分割でリクライニングが可能ですが、シートの厚みが薄く乗員の快適性が犠牲になっており、さらに4人乗車時は荷物がほとんど積めない状態になります。乗員の快適性やユーティリティ性を求めるのであれば、アクティバを始めとする軽のオフロードSUVを選んだ方が無難でしょう。

ラダーフレームとパートタイム4WDの持つ魅力

ただし、車体の堅牢性や4WD性能においてはジムニーが優勢となります。最大の違いはアクティバがモノコックフレームであることに対してハシゴ型のラダーフレームを採用していることです。走行性に関する部品、エンジンや4WDシステム、サスペンションなどをラダーフレームにマウントしているため、悪路走行における振動がボディに伝わりにくく、車体の歪みを最小限に抑えることができます。

またジムニーの4WDシステムはパートタイム方式が使われています。現在、フルタイム4WDのほとんどの車種は駆動輪以外の左右どちらかの車輪が空転すると電子制御で4WDに切り替わるシステムとなっていますが、パートタイム方式は4WDにシフトするとタイヤの空転とは関係せず、強制的に4輪へエンジントルクをかけるので悪路の走破性が格段に高くなります。ジムニーはスイッチで2WDから4WDへ簡単に切り替えることができ、悪路がハードな時はさらにトルクをかけられる4WD-Lのスイッチまで備えています。

街乗り派にはけっして似合わない質実剛健の車種

ジムニーには175/80R16という直径の大きな舗装路用タイヤを用意、ボディとラダーフレームの間には衝撃吸収材を設置して乗員の快適性を高めていますが、静粛性や乗り心地の面では軽クロスオーバーSUVの方が断然有利です。街乗り派に取ってジムニーはけっして利便性の高い車種ではありません。

しかし年間のうちで3ヶ月は豪雪地帯となる、あるいは山間部で未舗装道路を頻繁に通るといった状況の人にはとても心強い車種です。渓流釣りやスキーなどのレジャー利用でも機能を十分に発揮するでしょう。国産車の中でもとくに硬派な車種といえます。

筆者の主観的所見

ジムニーはシンプルで頑丈な車体を持つことから、ジムニー専用のヒルクライムやダートトライアルレースが開催されています。乗員の安全を確保する保安部品(ロールゲージや消火器など)だけを取り付けたノーマル車でも参加できることが大きな魅力です。サーキットレースはヴィッツなどのワンメイクレースでもかなり高額な費用が必要となるので、安い費用でレースを楽しみたい人にジムニーは最適の車種です。

ヒルクライムやダートトライアルなどを始めるとボディはキズだらけになるので使用する車体は中古車でも十分にパフォーマンスを発揮します。70万円前後の予算があれば2002〜2005年登録車で8〜10万kmの車種を購入することができます。ジムニーは堅牢なボディなので10万km前後でも歪みが出ることはなく、消耗品の交換とメンテナンスがしっかり行われている車種であれば20万km走行も可能です。総予算100万円もあればレースに出場でき、エキサイティングな時間を楽しめます。

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