〜欧州で人気を集めたIS〜
レクサスIS〜セダンの外観を持ちながらスポーツカーをしのぐ走行性能
レクサスのISはスポーティタイプのミドルサイズセダンです。最近の日本では人気が薄くなったジャンルですが、ISが属する欧州のDセグメント(4600〜4800mmサイズ)の車種では変わらぬ人気があり、BMWやアウディなどのスポーティセダンが販売台数を競っています。ISのハイグレード350にはV型6気筒3.5Lが搭載されており、走行性能面を始め、各機能で欧州車に十分対抗できるパッケージにまとめられています。
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初代はトヨタが久々に発売したFRスポーツのアルテッツア
ISの初代は1999年に登場しました。前年、トヨタブランドとして発売されたアルテッツアをレクサスブランドに移行し、アルテッツアには設定されていない直列6気筒の2JZ-GE型を搭載して高級化と差異化を図りました。
アルテッツアはトヨタの中では久しく絶えていたミドルクラスのスポーティセダンで、エクステリアはロングノーズショートテール、ロングホイールベースの設計になっており、駆動方式はFRとスポーティカーの要素を十分に備えた車種でした。
国内よりも欧州で人気を集めたIS
しかし開発の段階からレクサスとの共同販売が計画されていたため車内装備は豪華になり、車重も1300〜1400kgと重く、スポーティカーにスパルタンな性格を求める国内では期待されていたほどの人気を得ることはできませんでした。
逆に欧州ではミドルクラスのスポーティセダンに対する素地があったことから好評を得ます。その背景には、BMW5シリーズやメルセデス・ベンツCクラス、アウディA4シリーズがこのジャンルで圧倒的に強かったことがあります。ISはこれらの車種に匹敵する走行性能と高品質を保ちながら価格が安かったため、アンチドイツ御三家派の人気を集めました。
BMWの535iと主なスペックを比較
現行車3代目は2013年に発売されました。エクステリアで目立つのはレクサスの統一アイコンであるスピンドルグリルと前席後方からリアコンビネーションランプまで続く躍動感のあるキャラクターラインです。アグレッシブなフォルムはライバル車に負けない迫力を出しています。ここでは最大のライバルとなるBMWの535i M Sportと主なスペックを比較します。
IS350(F SPORT) | 535i M Sport | |
全長×全幅×全高(mm) | 4665×1810×1430 | 4920×1860×1470 |
客室内寸法 | 1945×1500×1170 | – |
車両重量 | 1640kg | 1820kg |
エンジン | V型6気筒DOHC3.5L | 直列6気筒DOHC3.0L |
JC08モード | 10.0km/L | 13.0km/L |
最高出力 | 234kW(318PS)/6400rpm | 225kW(306PS)/5800rpm |
最大トルク | 380N・m(38.7kg・m)/4100rpm | 400N・m(40.8kg・m)/1200~5000rpm |
車両本体価格 | 6,190,000円 | 9,530,000円 |
BMWは前輪駆動が主流のコンパクトカーも含めシリーズ全体を後輪駆動で統一させており、ミドルクラスやフルサイズのセダンでもドライバーが運転する楽しみを持てる設計になっています。エンジンバランスがもっとも良いと言われている直列6気筒にこだわり、その進化形がシルキーシックスと呼ばれることもスポーティセダンを作り続けるBMWの特徴のひとつとなっています。
しかしスペックだけを比べると最大トルクでは535i M Sportが優っているものの、最高出力ではISが上回り、しかも車重が軽いので全体的な走行性能では若干、ISが優位に立っているといえるでしょう。しかも価格差は約330万円の開きがあるので、国内に限って言えばISの方がはるかに高いコストパフォーマンスを示しています。
マニュアル感覚で楽しめる8速AT
ISはレクサスブランド統一のインテリア空間を持っているのでラグジュアリーな雰囲気を十分に満喫できますが、やはり大きな魅力となるのは走行性能です。この走行性能を高めるためにISはどのような走行状況でも最適の回転域を保てる8速ATを採用しました。
レクサス初となるG AI-SHIFT制御が備わっており、ドライブモードセレクトをSPORTに合わせるとDレンジに入れたままでもコーナー入口で最適なギアへシフトダウン、旋回中はギアをホールド状態にしておくのでコーナー出口では力強い加速を得られます。ATでありながらMTのようなギアセレクトを行える新開発のトランスミッションです。
ISのスポーツ走行を盛り上げてくれる演出として備わっているのがサウンドジェネレーターです。レクサスといえば車内の静粛性が大きな特徴となっていますが、ISはあえて加速時には官能的なエンジン音を車内に響かせます。これはエンジンの吸気振動によってダンパーを増幅振動させることでレーシーなサウンドを作り出すシステムで、聴覚に走る楽しさを与えてくれます。
運転を楽しみたい大人にぴったりのIS
ISはレクサスの中でもミドルセダンという車格から、走行性能に反して比較的おとなしい外観となっています。したがってステイタスという目的ではなく、大人が乗るスポーティセダンを純粋に欲しいという人には最適でしょう。
国内でスポーツ走行が可能なスポーツセダンはスバルのWRX-STIなどわずかしかなく、しかもエンジンにターボチャージャーを装着しているのでエクステリアにエアインテークを取り付けるため、スパルタンなフォルムになります。エレガントなボディラインを求めつつ、高い走行性能を求めるのであればISはお勧めの1台です。
筆者の主観的所見
セダンの外観を持ちながらスポーツカーをしのぐ走行性能を持つ車種に対して「羊の皮をかぶった狼」という俗称が与えられるのはよくあるケースですが、ISのボディラインでさらに過激な走行性能を求めるのであれば、中古車として販売されているIS-Fがお勧めです。
フロントに423PSを発揮するV型8気筒を搭載するため、オーバーハングを伸ばした手法はまさしく「羊の皮を〜」の元祖、プリンス・スカイラン2000GT-Bと同じで、ボンネットはエンジンヘッドの干渉を防ぐために大きく盛り上がっており、ISとは違った印象を与えます。
IS-Fは2014年に販売を終了、現在は中古車市場でしか購入できません。製造台数が少ないので当然、流通している車数も少なくなりますが、それでも2010年登録モデルで走行距離が3〜4万kmという状態の良い車種が450〜550万円の範囲内で購入することができます。スポーティセダンのファンであれば、1度は乗ってみたい車種のひとつでしょう。