〜一番小さいクロスオーバーSUV〜

スズキ・イグニス〜コンパクトクロスオーバーSUVで軽並の最軽量を実現

スズキのイグニスは2016年1月に発売されたコンパクトタイプのクロスオーバーSUVで、このジャンルではもっともボディサイズが小さい車種となります。モーターがエンジンをアシストするマイルドハイブリッドシステム専用車となっており、日常的なオンロード走行と経済性、コンパクトなボディによる操縦性に優れていることが大きな特徴です。

メーカー車両情報・スズキ イグニス

つねに独自路線を歩むスズキのポリシーを具現化

国内ではコンパクトタイプのクロスオーバーSUVが人気を高めていますが、それらの車種はほとんどが車幅が約1.7mを超す3ナンバーのボディサイズであることに対して、イグニスは5ナンバーサイズの全幅枠から35mmの余裕がある1660mmに収めています。したがって主流となっているコンパクトSUVのライバル車ではなく、軽クロスオーバーSUVとの間を埋める独自路線のSUVといえます。

スズキの会長、鈴木修氏はつねに「クルマを生産していない国で100台作れば1位になれる」というポリシーを持ち、未開拓部分において斬新な車種の販売、あるいは新規事業を行なってきました。軽自動車のエポックメイキングとなったワゴンR、インドへの進出などもその一例です。独自路線を歩むイグニスもまたスズキのポリシーを具現化しているといえるでしょう。

オフロードの走行性能も充実

ユーティリティ性に優れたコンパクトサイズのトールワゴン、ソリオと共通の新世代プラットフォームで開発されています。ボディ剛性を高める超高張力鋼材の使用率を上げて滑らかな骨格形状を実現、補強部品を減らすことでマイルドハイブリッドシステムを搭載しながらも車重を850〜920kgに抑えました。

オフロード走行性能を充実させていることもイグニスの特徴のひとつです。エクステリアではフロントのアプローチアングルを20.0度、リアのデパーチャーアングルを38.3度に設計、大径タイヤを採用して最低地上高を180mmまで高めているので岩場が続くラフロードでもボディを擦ることなく段差を乗り越えることができます。

走行機能面では4WDにビスカスカップリング方式が採用されています。これは後輪へ駆動力を伝達させるドライブシャフトに、高濃度のシリコンオイルと複数のプレートギアを組み合わせた液体クラッチの一種で、前輪駆動で走行中、滑りやすい路面でタイヤが空転するとプレートギアが接合して後輪に駆動力を伝えるシンプルなシステムです。軽量コンパクトな上に故障も少ないことが特徴で、この方式を採用したことも車重軽減につながっています。

ダイハツ・キャストアクティバと主なスペックを比較

イグニスの競合車となるのは3ナンバーサイズのコンパクトSUVではなく、むしろ軽のクロスオーバーSUVでしょう。今まで軽SUVに乗っていたけれど車内空間の狭さや走行性能で物足りなさを感じていた人、あるいはクロスオーバーSUVに乗りたいけれどコンパクトサイズでもまだ大きいと感じる人には最適の車種となります。ここではダイハツの軽クロスオーバーSUV、キャストアクティバとの主なスペックを比較します。

イグニスHYBRID MGキャストアクティバGターボ
全長×全幅×全高(mm)3700×1660×15953395×1475×1630
客室内寸法1945×1365×12502005×1320×1245
車両重量850kg840kg
JC08モード28.8km/L27.0km/L
エンジン排気量1242cc660ccIC付きターボ
最高出力67kW(91PS)/6000rpm47kW(64PS)/6400rpm
最大トルク118N・m(12.0kg・m)/4400rpm92N・m(9.4kg・m)/3200rpm
車両本体価格1,479,600円1,517,400円

主なスペックの比較で注目したいのは最小回転半径とJC08モード、そして新車販売価格です。ボディサイズや車内空間の広さでイグニスが優っているのは当然としても、燃費効率では上回り、最小回転半径ではまったく同じ、さらに新車販売価格では下回るという、軽自動車のメリットである経済性や操縦性でも優位に立っています。

走行性能に関しては上記のデータに加え、回生エネルギーを発電に変えるISGモーターが最高出力2.3kW(3.1PS)、最大トルク50N・m(5.1kg・f)のパワーでアシストするするため、たとえインタークーラー付きターボモデルでも格段の差が生まれます。またHYBRID MGの価格はデュアルカメラサポートが含まれたセーフティパッケージ装着車なので、予防安全装置の面でも対等な性能を持っています。

スズキらしさが表れているシンプルなインテリアデザイン

客室内寸法はやや短いように感じられますが、これは5名乗車時におけるラゲッジスペースを確保したことに因るものです。後部席まで利用した時の容量は258L、背もたれを前倒させて2名乗車にアレンジした時は415Lの容量が生まれ、アウトドアグッズを多種積載することができます。後部席は大人3人が座るにはタイトなスペースとなりますが、2人乗車であれば背もたれに165mmのリクライニング幅が設定されているため、窮屈な姿勢を強いられることはありません。

インパネ回りはブラックとホワイトのツートーンを基調に、ボディと同色の加飾をドアグリップやセンターコンソール両側に配置するなどPOPな雰囲気でまとめられています。インパネ中央にはタブレット型のタッチ式ディスプレイを装備、メーターパネルはアナログ式の大型一眼を中央にレイアウトするなど軽自動車からのステップアップでも違和感のない操作ができるシンプルなデザインとなっていますが、やはり実用性重視の質感であることは否めません。インテリアに関しては好みが大きく分かれるポイントでしょう。

筆者の主観的所見

イグニスは新車販売価格が低く設定されていますが、早くも中古車市場には多くの車数が出回っています。さらに安く購入するなら中古車も検討材料に入れることをお勧めします。新車同然の登録済未使用車は100〜110万円と約30万円前後の値下がり幅があり、ハイグレードのHYBRID MZでも140万円が中心価格帯となっています。

登録済未使用車以外でも走行距離は1万km以下なので状態の良い車種を選ぶことができます。中心価格帯は120〜130万円と若干高くなりますが、2016年登録車なので車検費用がかからず、諸税も収められているので諸費用が少なくなって乗り出し価格が安くなること、また車検取得済なので購入前に必要書類を用意しておけば、すぐに乗れるという利点があります。全方位モニター搭載ナビやセーフティパッケージなどのオプション装着モデルも多く流通しており、これらを選択すればさらに割安感が強まるでしょう。

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