〜インテリアまで異なる〜
ダイハツ・キャスト〜3種類の異なる個性でユーザーニーズに応える
ダイハツのキャストは共通のコンポーネントを使って細部を変更し、クロスオーバーSUVテイストのアクティバ、スタンダードモデルのスタイル、専用サスペンションでチューニングしたスポーツの3車種をラインナップとした軽トールワゴンです。
3車種ともボンネットとキャビンを分けた2BOXのフォルム
キャストはダイハツのニューモデルとして2015年に発表されました。3車種の基本構造は6代目ムーブと同じで、ボディの軽量高剛性Dモノコックを始め、サスペンションやエンジン、燃費効率化システムも流用されています。エクステリアのフォルムはボンネットとキャビンを分けた2BOXタイプとなっていますが、全高は1.6mあり、軽トールワゴンのジャンルに属します。
アクティバの特徴
最低地上高を他の2車種よりも30mm上げて180mmとし、悪路や雪道でのロードクリアランスを向上させています。バンパー下部からフェンダーやサイドモールを樹脂製にして汚れや石飛からボディを守り、傾斜角のある路面でも車体下部が損傷しないようにフロントとリアにアンダーガードを装着、クロスオーバーSUVらしいエクステリアにまとめられています。
スタイルの特徴
キャストの中ではもっともオーソドックスなデザインで街乗りに適した機能に設定されています。丸目のヘッドライトと大口径のラジエターグリル、2BOXの台形デザインはクラシカルな雰囲気を打ち出していますが、これはダイハツがかつて販売していた人気車種、ミラジーノをイメージしたことによります。ライトローズメタリックなど女性が好むボディカラーを用意していることも特徴のひとつでしょう。
スポーツの特徴
ダイハツの2シーターオープンカー、コペンで培ったサスペンションセッティングを取り入れ、他の2車種よりもコーナーでの踏ん張りを効かせたスポーティな仕様になっています。2WDには走行安定性を向上させる16インチのハイグリップタイヤがオプションで設定されています。基本的なボディカラーはブラックにホワイト、ブルーと3色だけでスパルタンな雰囲気を醸し出しています。
ホンダのN-ONEと主なスペックを比較
軽トールワゴンは車内空間をできるだけ広く使うために開発された車種です。ボンネット部分を設けて2BOXタイプにすることは必然的に車内空間が狭くなるため、軽トールワゴンの開発目的から外れてきますが、各メーカーで類似する車種が多くなっている現在、ユーザーにはユーティリティ性よりも個性を求めるニーズがあることからキャストが誕生、またホンダもN-BOXをベースにしたN-ONEを販売しています。
スタイルはミラジーノを彷彿とさせるデザインになっていますが、かつての人気車種をモチーフとするのはN-ONEが先駆者で、ホンダが始めて販売した軽乗用車、N360をリスペクトする形でデザインされています。ここではスタイルとN-ONEの主なスペックを比較します。
スタイルG”SAⅡ” | N-ONE Premium | |
全長×全幅×全高(mm) | 3395×1475×1600 | 3395×1475×1610 |
客室内寸法 | 2005×1320×1245 | 2020×1300×1240 |
車両重量 | 840kg | 850kg |
JC08モード | 30.0km/L | 28.4km/L |
最高出力 | 38kW(52PS)/6800rpm | 43kW(58PS)/7300rpm |
最大トルク | 60N・m(6.1kg・m)/5200rpm | 65N・m(6.6kg・m)/4700rpm |
車両本体価格 | 1,414,800円 | 1,490,000円 |
スタイルとN-ONEのスペック比較で目立つのはエンジン特性です。N-ONEはホンダがレースで培った技術を投入、現在、軽自動車の自然吸気エンジンの中では最高出力と最大トルクにおいてトップクラスの性能を誇っています。ホンダエンジンらしく高回転仕様になっているので、吹け上がりの楽しみもありますが、その分、パワーを引き出すためにはエンジンを回す必要があり、若干ですが燃費効率を示すJC08モードにも差が表れています。
スタイルは町中のストップ&ゴーでもドライバーの負担が少なく、ゆったりとしたクルージングを楽しめる走行性能で、スポーティな走行を求めないユーザーに対しては十分に応えるだけのパワーを持っています。
インテリアにもそれぞれの個性を反映
キャスト3車種のインテリア装備は共通ですが、ダッシュボードやドアトリムなどのカラーリングを変え、アクティバはポップに、スタイルはシックに、スポーツは赤を効果的に使って抑揚感を醸し出しています。それぞれの訴求対象がはっきりしている分、ユーザーが選びやすい車種といえるでしょう。
なお、3車種ともにターボチャージャーを装着したハイパワーモデルが用意されており、すべてのグレードでダイハツの最先端予防安全装置スマートアシストⅡ(SAⅡ)を装備したモデルを選ぶことができます。
筆者の主観的所見
異なる個性を持つ3車種の中で、お勧めするのはオーソドックスなモデルのスタイルです。アクティバはクロスオーバーSUVテイストに、スポーツは足回りを固めて走行性能を高めていますが、どちらの車種も派生モデルというイメージが拭えず、それぞれの個性に対して機能が中途半端に終わっています。
たとえばスズキはスポーティ仕様の軽自動車としてアルトにターボRSとワークスを販売しています。アルトは2BOXハッチバックなので車高が低い分、軽トールワゴンをベースにしているスポーツよりも軽快な走りが期待できるでしょう。クロスオーバーSUVに関してもスズキのハスラーやダイハツのウェイクなど、アウトドアのユーティリティ性に優れている車種があります。
スタイルは軽トールワゴンのサイズを持ちながらも2BOXハッチバックを思わせるフォルムで圧迫感がなく、社内装備は性別を問わないシックなセンスでまとめられています。ミラジーノや往年の名車、ミニを思わせるクラシカルな雰囲気は他車にない魅力のひとつになっており、ユーザーの個性を際立たせるデザインといえるでしょう。