〜3シリーズの歴史は長い〜

BMW3シリーズ〜購入資金に余裕があれば340iがお勧め

BMWの3シリーズは日本のミドルサイズ、ヨーロッパのDセグメントに属するスポーツセダンです。BMWの中でも多彩なラインナップを揃えており、ガソリンエンジンは2.0Lと3.0L、クリーンディーゼルは2.0Lを用意、これらを基本ユニットとしてベーシックな「スポーツ」、高級感を漂わせる「ラグジュアリー」、走行性能を高めた「Mスポーツ」の3パッケージがそれぞれに設定されています。なお、2.0Lに限り廉価版のSEとスタンダードがあります。

メーカー車両情報・BMW 3シリーズ

初期モデルは逆スラントノーズを採用していた

3シリーズの歴史は古く、初代は1975年に発売されています。欧州ツーリングカー選手権で活躍したBMW2002の流れを汲む2ドアスポーツセダンで、全長4355mm、全幅1610mmと現在のカローラよりも小さいボディにBMW伝統の直列6気筒エンジンを搭載したホットモデルもありました。

日本のバブル絶頂期、あまりに売れたため『六本木カローラ』と呼ばれたのは1982年から1994年まで販売された2代目です。2002や初代で見られた逆スラントノーズ(バンパーからボンネットに向かうラジエターグリルの傾斜角がオーバーハングになっているフェイスマスクのこと)は2代目で終わり、3代目からは空力性能を向上させる目的もあってスラントノーズが採用されています。

エンジン3種類のスペック比較

現行車は6代目で2012年にフルモデルチェンジされました。5代目ではエンジン排気量が1.6Lから4.0Lまで、気筒数も直列4気筒からV型8気筒まで用意され、あまりにラインナップが増えたことから6代目では売れ筋を絞り、エンジンは3パターンのみとなりました。以下にそれぞれのエンジンを搭載したMスポーツパッケージの主なスペックを紹介します。

320i(直列4気筒)320d(直列4気筒)340i(直列6気筒)
全長×全幅×全高(mm)4645×1800×1430
車両重量1998cc1995cc2997cc
JC08モード15.4km/L19.4km/L13.5km/L
最高出力135kW(184PS)/5000rpm135kW(184PS)/4000rpm240kW(326PS)/6500rpm
最大トルク270N・m(27.5kg・m)/1350~4600rpm380N・m(38.7kg・m)/1750~2750rpm450N・m(45.9kg・m)/1390~5000rpm
車両本体価格5,280,000円5,510,000円7,760,000円

エンジンを基本にして棲み分けをすっきりさせているのが現行車の特徴といえます。スタンダードな走行であれば320i、力強い走行と高い燃費効率を求めるなら320d、もっともBMWらしい走りが好みであればシルキーシックスと呼ばれる直6の340iが最適です。

なお、とりあえずBMWの雰囲気を味わいたい、という人であれば廉価版のSEやスタンダードでも十分にその魅力を味わうことができます。車両本体価格は4,270,000円なのでほぼ同じボディサイズのクラウンアスリートで廉価モデルの2.0S-Tの車両本体価格が4,500,000円であることを考えると、コストパフォーマンスでも優れているといえるでしょう。

Dセグメントでもスポーツ走行性を重視

日本ではメルセデス・ベンツとBMW、アウディを『ドイツ御三家』とひとくくりにしますが、欧州ではそれぞれメーカーとしての特徴が強いのでバッティングすることはあまりありません。

BMW3シリーズがカテゴライズされるDセグメントではメルセデス・ベンツのCクラスと販売台数を競っていますが、メルセデス・ベンツはステイタス性と操縦性、安全性を重視、BMW3シリーズはスポーツ走行性能を重視しており、購買層がはっきりと分かれています。つまり3シリーズを購入する人は最初からCクラスが比較検討の選択肢に入っていないのです。

ヨーロッパでは車をセグメントで分類します。セグメントにはA・B・C・D・E・Fがあり、Aは最も小型で、価格が安いクラスになり、一方Fは、最も大型で、価格が高いクラスになります。

Dセグメントは、全長4.5m~4.8mで小型セダンクラスになり、高級車に区分されます。

BMWのスポーツ走行性重視はスタイリングからエンジンの細部にいたるまで体現されています。セダンでありながらフロント部分を長くしたロングノーズ・ショートデッキを採用、重量配分を前後50:50として走行安定性を高め、クロスレシオしたギア比の8速ATが低速から高速までドライバーが意図するエンジン回転域を最適に導いてくれます。明確なコンセプトを一貫させている意味では、いかにも質実剛健のドイツらしい車種といえるでしょう。

筆者の主観的所見

現在、世界中の自動車メーカーでセダンに直列6気筒エンジンを縦置きで搭載、後輪駆動を採用しているのはBMWだけです(ボルボS80も直6ですが横置きで4WDを採用しています)。かつては日本にも日産のL20型など優秀な直6エンジンが存在していましたが、搭載のためにはどうしてもフロントノーズが長くなってしまうことから6気筒は早々にV型へ変更されました。

エンジンはピストンがシリンダー内の爆発によって上下し、その運動をクランクシャフトに伝えることで車を動かします。このシリンダーの上下運動はエンジン本体に大きな振動を与えます。しかし気筒数を6にすると上下運動が互いの振動を打ち消すため、静かだけれど力強いパワーを引き出すことができます。BMWの直6がシルキーシックスと呼ばれるのは6気筒のバランスによるものです。

BMWは現代のモータリゼーションに合わせてダウンサイジング化した直列4気筒も搭載していますが、一貫して直6を作り続け、進化させています。自動車メーカーとしての矜持が直6に込められていると言ってもいいでしょう。購入資金に余裕があれば、340iをお勧めします。本当のBMWらしさを体感できます。

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