〜国内外でトップクラスの人気車種〜

トヨタ・ハイエース〜コストパフォーマンスとリセールバリューが高い

トヨタのハイエースはキャブオーバー型の1BOXカーです。乗用タイプと商用タイプがあり、それぞれ車体寸法を変えたロングやスーパーロング、標準ルーフやハイルーフなど多彩なラインナップを揃えて幅広いニーズに対応しています。耐久性が高いことから海外、とくに新興国で人気があり、国産車の中ではリセールバリューがトップクラスという一面も備えています。

メーカー車両情報・トヨタ ハイエース

高い耐久性は長年の技術力の蓄積

ハイエースの初登場は1967年と古いのですが、エンジンを座席の下にマウントして後輪を駆動させるFR方式は5代目となる現行車でも変わらず、発売当初から設定されていた商用バンと乗用ワゴンのラインナップも継続されています。

基本モデルのスパンが長いという特徴を持っており、初代は10年、2代目こそ8年に終わっていますが3代目は13年、4代目になると15年という長いスパンを記録しています。現行車5代目は2004年にフルモデルチェンジを行い、その後、マイナーチェンジを頻繁に繰り返しているものの、フルモデルチェンジの予定はありません。基本構造を大きく変更せず、大きくなるボディサイズに合わせて機能を熟成させたからこそ、現在の高い信頼性が培われたといえるでしょう。

ハイエースとNV350キャラバンの主なスペックを比較

ハイエースのライバルは日産のNV350キャラバンです。

ハイエースより6年遅れの1973年に初代が発売されました。初代はハイエースとの差異化を図るためにホイールベースを長く取り、リアのオーバーハングを短くする設計にしましたが、販売成績でハイエースが圧倒的なシェアを占めていることから、2012年のフルモデルチェンジではシェア奪回を目指すためにショートホイールベースを採用、あらゆる面でハイエースを凌駕するための開発を行いました。

ここでは5代目ハイエースと同じく5代目NV350キャラバンのワゴンにおける主なスペックを比較します。

ハイエース(スーパーGL)NV350キャラバン(DX)
全長×全幅×全高(mm)4695×1695×19804695×1695×1990
荷室内寸法3000×1520×1320
車両重量1770kg1720kg
JC08モード10.2km/L9.1km/L
最高出力100kW(136PS)/5600rpm100kW(136PS)/5600rpm
最大トルク182N・m(18.6kg・m)/4000rpm178N・m(18.1kg・m)/4400rpm

両車ともに排気量は2.0Lで小型車サイズのワゴンタイプを選んでいます。スペックだけを比べると車重はNV350キャラバンの方が軽くなっていますが、その他の部分ではハイエースを凌駕するまでに至っていません。ちなみに両車とも5人乗りワゴンですが、区分は商用車なので4ナンバーとなります。

NV350キャラバンがハイエースより優れている点は4ナンバークラス初となる先進予防安全装置、エマージェンシーブレーキ搭載車を設定していることです。このシステムは遠方まで届くミリ波レーダーを使い、前車と衝突の危険性を検知すると警告音と警告ランプでドライバーに注意を促し、さらに危険性が高くなると緊急ブレーキを作動させます。

1台の車に対して複数のドライバーが運転するような業務の場合、このシステムを搭載している方が安全性は高まるといえます。

商用車がキャブオーバー型を採用する理由

商用バンがキャブオーバー型を採用するのは2つの理由からです。ひとつはエンジンを座席の下にレイアウトするのでボンネット部分を省け、その分、荷室が長く取れることです。もうひとつは荷物を積載した際、FFよりもFRの方が安定した走行ができるからです。

とくに上り坂の場合は後輪に荷重がかかるのでFFではエンジンパワーのロスが発生し、コーナーでは荷室荷重が左右に振られやすく不安定な走行状態になりがちです。最高出力、最大トルクともに同サイズのミニバンに比べると物足りない数値ですが、FRであることを考慮すれば商用車として十分なパフォーマンスを発揮できる範囲内に収まっています。

質素だがユーティリティ性の高いカーゴルーム

ハイエースのスーパーGLは5人乗りワゴン車ですが、商用バンなので車内の装備品はミニバンに比べると質素です。インテリアカラーはブラック一色で後部席は一体型のベンチシート、スライド幅も120mmしかありません。荷物の積載を前提にしているので折りたたんだ時に荷室を広く使えるよう、背もたれの肉厚は薄く設計しており、長距離ドライブにおける後部席乗員の疲労までは考慮されていません。

しかし後部席を折りたたんだ時の荷室は全長3000mmを確保、さらに荷室の開口高は1270mm、開口幅は1310mmと広く、さらに床面地上高は620mmと低いので積載量が多いだけでなく荷物が積みやすい設計になっています。この広い荷室空間はアウトドアを積極的に行う人に取って高いユーティリティ性を持っていることから、商用だけでなくプライベートでもハイエースを購入する人が増えています。

ハイエースは基本的に商用車なので購入対象者は荷物の運搬や配達する法人(または個人)に限られますが、前述したようにアウトドアを積極的に行う人に取っても最適の1台になります。商用バンなのでアウトドア用にカスタマイズしやすく、工夫次第ではキャンピングカーに改造することも可能です。

筆者の主観的所見

2.0Lガソリンエンジン仕様のスーパーGLは約285.6万円です。商用車としては割高感がありますが、一般的な使い方をしている限り、消耗品の交換だけで20〜30万kmは走行可能なので十分なコストパフォーマンスを発揮することは間違いありません。

小型車や普通車サイズの車種は10万kmを超えると査定価格が0円となり、下取りや買取りにおいても一部の人気車種でなければ価格がつくことはありません。しかしハイエースの場合、10万km超え程度であれば高値がつき、20万km前後でも十分に下取りや買取りの価格がつきます。

その理由は海外、とくに新興国へ輸出されるからです。それらの国々でハイエースは壊れにくく、壊れても修理しやすい商用バンとして高い人気を誇っています。ガソリン仕様よりもディーゼル仕様の方が人気があるので、車両本体価格は同じスーパーGLで約338万円と高くなりますが、維持費とリセールバリューを考えるのであればディーゼル仕様がお勧めの車種となります。

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