〜軽自動車販売台数1位〜
ホンダN-BOX〜軽スーパーハイトワゴンの市場を広げる
ホンダのN-BOXは全高1.7mを超える軽スーパーハイトワゴンです。軽自動車のシェア確保を目的にNシリーズ共通のプラットフォームを開発、Nシリーズの基幹車種として2011年に発売されました。軽自動車の開発がホンダの原点だけに、首位奪回を目指したN-BOXにはホンダの独自の技術と矜持(きょうじ)が凝縮されています。
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新型プラットフォームを採用してF-1メンバーが開発
N-BOX登場以前、軽スーパーハイトワゴンのジャンルはダイハツのタントが1人勝ち状態で、軽自動車市場の約3割を占めていました。ホンダはそれまで軽スーパーハイトワゴンの車種を持っていませんでしたが、新型軽自動車を開発するにあたり、あえて新ジャンルを選びました。
ホンダのF-1黄金時代を支えたF-1第2期メンバーが集結してシャーシとエンジン、ボディまでトータルな設計が行われ、エンジンはそれまで軽自動車に使用していたP07A型から構造まで刷新したS07型に変更、フィットで成功したセンタータンクレイアウトを取り入れて軽スーパーハイトワゴンの中でもっとも低い床面を実現しました。
さらにトランスミッションのCVTまでエンジンに合わせて設計しており、軽自動車にありがちなコンポーネントを流用している部分がまったくない新型車種を作り上げました。2012年度上半期には約11.8万台を売り上げ、派生車種のN-BOX+と合わせて軽四輪新車販売台数NO.1を獲得しています。これはタントのユーザーを取ったというよりも軽トールワゴンのニーズを取った形で、軽スーパーハイトワゴンの市場を拡大したことにつながっています。
N-BOXとライバル車スペーシアの主スペックを比較
軽スーパーハイトワゴンのジャンルはタントとN-BOXに加え、スズキが2013年にスペーシアを発売したことで激戦区となりました。ここでは2011年からフルモデルチェンジを行なっていないN-BOXと後発車となるスペーシアの主なスペックを比較します。
N-BOX(Gグレード) | スペーシア(Xグレード) | |
全長×全幅×全高(mm) | 3395×1475×1780 | 3395×1475×1735 |
客室内寸法 | 2180×1350×1400 | 2215×1320×1375 |
車両重量 | 950kg | 860kg |
最高出力 | 43kW(58PS)/6000rpm | 38kW(52PS)/6500rpm |
最大トルク | 65N・m(6.6kg・m)/4700rpm | 63N・m(6.4kg・m)/4000rpm |
JC08モード | 25.6km/L | 30.6km/L |
スペーシアの燃費がいいのはスズキ独自のマイルドハイブリッドシステム、S-エネチャージを採用していること、またボディを軽量化していることによります。燃費効率に関しては各メーカーとも最新技術をつねに開発、投入しているので後発であることがカタログ数値上、有利になります。
ただしボディサイズや客室内の広さ、さらにエンジンパワーに関してはN-BOXが上回っています。軽スーパーハイトワゴンを選ぶ際、燃費を優先するのであればスペーシア、走行性能や車内の快適性を重視するならN-BOXといえるでしょう。
若年層ママから高い支持を受けた数々の装備
軽スーパーハイトワゴンの訴求対象は小さな子供のいる家族なので、N-BOXには訴求対象向けの装備が充実しています。左右分割のリアシートはスライド幅が19.0cmあるので小さな子供をチャイルドシートに乗せたままでも手前に引き寄せれば助手席からケアができます。またリアシートは座面を跳ね上げて背もたれに密着させることができるので、後部スライドドアからA型ベビーシートをたたまずに積載することが可能です。
後部ドア、リアクォーター、バックドアのウインドウはすべてUV約99%のガラスを使用しています。一般的なUVカットガラスは合わせ仕様になっていますが、N-BOXは単板で世界初となるプライバシーガラスを実現しました。強い西日を当てた実験では、従来のプライバシーUVカットガラスに比べて後部席チャイルドシートの表面温度が約2℃違う結果が出ています。
他にもダニアレルゲンやスギ花粉アレルゲンを97%以上不活性化させるアレルクリーンシート、空気の清浄化や美肌効果も期待できるプラズマクラスターを搭載したフルオートエアコンなどを装備しています。これらの家族向け装備やユーティリティ性が若年層の主婦に支持され、2014年度のマザーズセレクション大賞に選ばれました。
パパでも違和感なく運転できるボディデザイン
ライバル車のタントやスペーシアが若年層主婦へアピールするためにエクステリアを女性が好むと思われるソフトなイメージでまとめていますが、N-BOXはボンネットとキャビンを平面構成にしたスタンダードなフォルムに仕上げています。
このデザインであれば男性でも違和感なく運転できるでしょう。ママだけでなくパパも頻繁に運転する機会が多い若年層家族の場合、N-BOXを選べばママよりもパパの方が好んで運転する可能性が高くなります。主導権を握っていてパパを上手に運転できるママ向きの車種といえます。
筆者の主観的所見
パッシブセーフティ(受動的安全装置)ではライバル車に引けを取らないN-BOXですが、アクティブセーフティ(能動的安全装置)では遅れを取っている感が否めません。N-BOXの衝突回避・軽減システム、シティブレーキアクティブシステムはフロント上部に設置したレーザーレーダーで前方走行車との衝突を回避・軽減させる機能しか持っていません。
タントは2015年4月のマイナーチェンジで衝突軽減・回避システムのスマートアシストを進化させたスマアシⅡを搭載しています。これは前方障害物をレーザーレーダーで、人物を単眼カメラで検知、さらに後方の障害物もソナーセンサーで検知して衝突を回避、軽減します。
またスペーシアも2015年5月のマイナーチェンジでディアルカメラサポートを搭載、2つのカメラで障害物や人物を立体的に捉えて衝突を回避、軽減します。現在、ホンダの上級車種には遠方まで届くミリ波レーダーと単眼カメラを備えたHONDA SENSINGという新しいアクティブセーフティが装着されています。アクティブセーフティを重要視して軽スーパーハイトワゴンを選ぶのであれば、このシステムがN-BOXに装着されるまでは候補から外した方が賢明です。
参考・HONDAの安全技術