対物賠償保険(加入率75.5%)の解説
交通事故で最も多いのは、車両同士の事故です。対物賠償保険は、保険契約している車を運転中に事故を起こしてしまって「他人の車や建物」「公共の電柱」などに損害をあたえ、法律上の損害賠償責任を負った場合に保険金が支払われる保険です。
対物賠償保険の加入率は75.5%(2021年度)です。対人賠償保険とセットで入る人がほとんどです。
対物賠償保険は「車対車の事故」の保険
2018年度の警察庁交通局による交通事故のデータによると、人身事故に限っても車対車の事故が86.1%を占めています。人身事故を含まない事故を入れると、車対車の事故比率はもっと高くなると推測できます。
交通事故を起こすと、ほぼ必ず物損が発生します。
自賠責保険からは物損に対する補償は一切受けられないので、任意保険の対物賠償保険への加入をしておかないと高額の補償を自己負担しなければいけません。
交通事故の物損としては、相手の車に対する損害賠償が圧倒的に多いのですが、車に衝突した衝撃での運転のコントロールが効かなくなり、道路沿いの建物に飛び込んで建物を壊したり、道路標識・ガードレール・電柱を壊したりする可能性があるので高額の補償が必要になります。
対物賠償保険と車両保険の違い
対物賠償保険は交通事故の「相手」の「自動車・物」に対する補償ですが、車両保険は自分が契約している「車」の補償になります。対物賠償保険のみの契約では自分の車は補償されません。
対物賠償保険のシミュレーション
被害者対する損害賠償責任 | 500万円 |
加害者(自分)の過失割合 | 70% |
対物賠償保険補償額の設定 | 無制限 |
例えば、自分の過失割合が70%の物損事故を起こしてしまって、相手に500万円の損害させてしまった場合で考えてみましょう。
対物賠償保険から相手への補償金額がいくらになるのかシミュレーションしてみましょう。対物賠償保険の補償金額は、以下の計算式によって算出されます。
被害者の損害額 × 加害者の過失割合 = 対人賠償保険金の支払い額
今回のケースを計算式に当てはめると…
500万円 × 0.7 = 350万円
対物賠償保険から被害者(相手)側に支払われる金額は350万円になります。損害額500万円の残り150万円は過失割合30%の相手側が負担することになります。
最高補償額を2000万円に設定して保険料を安くすることが可能ですが、これはオススメしません。もしもの高額賠償のために、無制限に設定しましょう。
対物賠償保険に加入するほとんどの人が、無制限を選んでいます。
一般的な被保険者の範囲(保険の補償を受ける人)
- 記名被保険者
- 記名被保険者の配偶者(夫・妻)
- 記名被保険者またはその配偶者の同居親族
- 記名被保険者または配偶者の別居の未婚の子
- 記名被保険者の承諾を得て契約車両を使用または管理中の者
- 記名被保険者の使用者。ただし、記名被保険者が契約車両をその使用者の業務に使用している場合
*運転者限定割引の場合、1〜4だけになります。
自分が酒気帯び運転で物損事故を起こした場合、相手への補償は対物賠償保険が使えると思いますか?
酒気帯び運転で事故を起こした場合
酒気帯び運転を減らすには、自己責任を負わせるために保険から補償するのではなく酒気帯び運転をした者に自己負担させるべきという考えも成り立ちますが、被害者を救済するという立場から補償されます。*もちろん、酒気帯び運転が許される訳ではありません。
対物賠償保険と車両保険との違い
対物賠償保険での補償対象は自分の運転する車で、他人の所有する財産に対して損害を与えた時に補償されます。そのため、自分の運転する車に対しては補償されません。相手に過失があれば、相手の過失分は自分の車の修理費に対して補償されますが、自分にも過失があると全額は補償されません。また、自損事故では全く補償されないので全額自己負担になります。
このような時にも補償してくれるのが車両保険です。
対物超過修理費用特約(対物全損時修理差額費用特約)
対物賠償保険では、補償してもらえる損害額は相手の車の時価評価の査定額まで決められています。一般的に、10年を超えると下取りに出しても「査定額がゼロ」になるケースがあります。しかし、車は年数に関わらず修理代に数十万円かかることもあります。また、査定額がゼロではなくてもその査定額を修理費が上回ることがあります。こうなると対物賠償保険に加入していても自腹を切るしかありません。
この場合、通常の対物補償保険では査定額までしか保証されませんが、対物超過修理費用特約(対物全損時修理差額費用特約)をつけておくと、その査定額を超えた修理費に対して補償されます。保険料も少額なので、示談交渉の際のトラブルを防ぐためにも付けておくと便利です。
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