〜フェラーリを調べると、世界のタバコ事情が分かった〜

フェラーリのサブリミナル広告から見えた「世界のタバコ消費量」

数年前に話題になった「フェラーリのサブリミナル広告問題」と、その延長上で調べることになった、「世界のタバコ事情」について紹介します。今回は2本立てです。

後半の「世界のタバコ消費量を調べてみた」だけを読んでいただいても結構です。


話題になったマルボロの広告問題

あの『同時多発テロ』が起こった2001年9月11日は、F1業界でも激震が走った日でした。

フェラーリのマルボロ広告

それは、「2006年のF1グランプリを最後に、全てのタバコメーカーはF1からスポンサー事業を撤退する」と発表した、モータースポーツのブラックデーと呼ばれた日でした。

ヨーロッパでのタバコ広告は、2006年までに一切のメディアで全面禁止される事になり、モータースポーツも漏れなく含まれていました。


F1の主役的な存在だったタバコ広告は、F1業界から撤退を余儀なくされました。

「サブリミナル広告問題」のあらすじ

しかし、タバコ広告の完全禁止が施行される直前の2005年に、「マールボロの銘柄主であるフィリップモリス社が、フェラーリが運営するF1チーム『スクーデリア・フェラーリ』とのスポンサー契約を、2011年まで更新した」と報道され業界を驚かせました。

フェラーリのバーコード
フェラーリはスポンサーを受けながらも、マルボロのロゴの代わりにバーコードを付けて参戦することになります。(*初年の2007年のみ、タバコ広告が可能なバーレーン・モナコ・中国など限定でマルボロのロゴを表示するも、欧州のテレビで映像として流れ問題視され、それ以降マルボロのロゴは完全に使われなくなります。)

フェラーリ2010年

ところが、このバーコードのデザインが2009年頃から、マルボロのロゴそっくりに改変されることになり、これが「サブリミナル広告問題」に発展してしまいます。

フェラーリのサブリミナル広告

英国王立医師協会の署名なメンバーのひとりが、英国の保健医療省を通して「あのバーコードは、マールボロのロゴを連想させるサブリミナル広告ではないか?」と指摘した抗議文書を、英国政府とF1レースを放送する『BBC』に送りつけ、「フェラーリが、欧州のタバコ広告禁止法に違反していないか」調査するように訴えたのがことの発端です。


サブリミナル広告とは
見た目で知覚できないが、潜在意識にすり込む「意識操作」をサブリミナル効果といい、この効果を利用した広告のこと。欧米ではサブリミナル広告は禁止されている。

当初、フェラーリは「あれは、ただのデザインの一部だ」と突っぱねましたが、問題が大きくなる事態を避けて、速やかにバーコードを撤去することになります。*下の画像は2014年

フェラーリ2014

英誌『F1 Racing』の調査によると、 2005年から2011年までのフィリップモリスがフェラーリに支払ったスポンサー料は推定10億ドル(約1029億円)ということです。これは、F1スポンサー料としては、あまりにも巨額です。



世界のタバコ消費量を調べてみた

このフェラーリの広告問題を調べるうちに、「昨今の世界的な嫌煙運動が広まる中、なぜ、フィリップモリスはフェラーリに10億ドルもスポンサー料を支払えるのだろう?」という疑問がわき起こったので、世界のタバコ事情はどうなっているのか調べてみようと思いました。

■世界のタバコ消費量

世界のタバコ消費量

今年(2014年)の1月に発表された、ワシントン大学が187ヵ国のタバコ消費量を実態調査したデータをグラフにしてみました。

先進国の消費量は減っていますが、開発途上国では順調に増えていることが分かります。

世界全体のタバコ消費量は増えているのです。

BRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)と、開発途上国のタバコ市場が拡大しているようです。


■日本のタバコ消費量

日本のタバコ消費量

日本のタバコ消費量も、厚生労働省の「最新たばこ情報」に年代別データがあったので、同じようにグラフにしてみました。

こちらは、ほぼ想像どおりのデータではないでしょうか。1996年を境に減少しはじめたといわれていますが、顕著に消費量の数値が下がったのは、今から4〜5年前になります。


■日本の喫煙者の割合(男女別)

日本の喫煙者男女比

少し内容がそれますが、男女別で日本の喫煙者の割合データがあったので、グラフにしてみました。1980年当時の日本の男性喫煙者は70.2%と驚く割合です。

男性喫煙者の割合が半分以下に減少しているのに対し、女性喫煙者は2/3までしか減少していないことがわかります。


タバコ市場は6つの企業によって占められている

こちらは、マーケットシェアのランキングです。有名企業6社が、タバコ産業の8割以上を占めています。2010年度の6企業の売上は合計3462億ドルで、純利益は合計351億ドル(約3.6兆円)です。これは、同年のコカコーラ+マイクロソフト+マクドナルド、3社の純利益の合算と同じぐらいになるそうです。

タバコ企業年間売上純利益シェア
1中国国家烟草公司917億ドル160億ドル37.1%
2フィリップモリス・インターナショナル677億ドル75億ドル17.4%
3ブリティッシュ・アメリカン・タバコ581億ドル42億ドル12.0%
4日本たばこ産業/JT659億ドル15億ドル9.6%
5インペリアル・タバコ(英国)384億ドル20億ドル4.9%
6フィリップモリスUSA244億ドル39億ドル2.8%
*「世界シェア」は2008年、その他は2010年のデータ
参考:Tabacco Atlas

ちなみに、2013年度のフィリップモリス・インターナショナルの純利益は80億ドル強で、現在も、より好景気であるようです。タバコ産業は、私たちの想像を遙かに超えて成長していることが分かります。

中国のたばこ


中国の巨大たばこ市場
中国のタバコ市場は群を抜いていて、消費量は年間2兆本以上にのぼり、世界需要の1/3を支えています。

中国のタバコ市場は、輸入制限が原因で外国製たばこのマーケットシェアはわずか3%しかなく、流通している煙草のほとんどが中国産という現状ですが、輸入が自由化される時代に備えて、欧米のタバコ企業はブランドの浸透に努力しているといわれています。

中国のような地場のタバコ産業がシェアを独占している国は多く、欧米のタバコ企業が市場開拓を狙っているようです。


加えて、現在11億人といわれる世界の喫煙人口は、2025年までには16.5億人になると考えられているようです。なるほど、タバコの潜在需要を知れば、フェラーリへの10億ドルのスポンサー料も納得がいくという訳です。


フェラーリはタバコを吸わない

英国のブランド調査会社『ブランド・ファイナンス』は、有名な企業500社(コカコーラ・グーグル・ディズニー・エルメスなど)のうち、2013年の最も影響力があるブランドにフェラーリを選びました。

フィリップモリスは、フェラーリのF1マシンの全広告スペース取得して、その一部を他のスポンサーにまた貸しするという特殊なスポンサーの形態をとっているといわれ、「フェラーリ=マールボロ」というイメージを定着させるブランディングは、成功していると考えられています。(*スポンサー契約は2015年まで延長しています)

フェラーリの創業者エンツォ・フェラーリが残した名言「フェラーリはタバコを吸わない」は、70年代当時、ほとんどのF1チームにタバコ広告が貼られていたのに対して、フェラーリはタバコ広告を拒否し続けたというプライドを表した発言でした。

そのフェラーリが現代では、たばこ企業とスポンサー契約を交わす「唯一のチーム」になっているのは、大変興味深いのではないでしょうか。

オフィシャル・フェラーリ・ウェブサイト


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