〜消去法で導かれた「最も安全な場所」〜

飛行機・電車・自動車の「最も生存率が高い座席や場所は?」

乗り物の事故は様々な要因に左右されるので、残念ながら確実に安全な場所はありません。ここで紹介するのは、専門家の実験・研究データや、事故統計から選ばれた「生存率が高い場所」で、そのほとんどは、消去法で導かれたものです。100%の安全を保証するものではありませんが、雑学として読んでください。

以下の3つの乗り物について調べてみました。

  1. 飛行機の座席
  2. 電車の車両と位置
  3. 自動車の座席

飛行機のキャビン

飛行機はどの座席でも同じか?

米国ディスカバリーチャンネル・英国チャンネル4などが、共同制作したドキュメンタリー番組『Plane Crash』は、航空史上最大の事故再現実験を試みました。ボーイング727を使用して、少数の生存者が残る事故を想定したハードランディング(=硬着陸)をメキシコの砂漠で行い、主に「機体の耐破壊性」「機内の衝撃の流れ」「不時着時の姿勢の効果」を調査しました。

ハードランディング

(引用・Discovery Channel

実験は通常の3倍の降下率で、地面に叩き付けられるように強行着陸させました。接地後、地面を滑りながら機首のコックピット部分が折れ曲がり分離して大破。このことから、機首部は分裂しやすい構造的な欠陥がある事がわかりました。また、エンジンは停止せずに動いたままの状態で機体は停止。

*ボーイング727のエンジンは翼下ではなく、機体の後に付いているので、破損具合は機体によって若干異なると考えられています。

どの座席が最も安全なのか?

この実験から、正面から受ける重力加速度(G)は、前方から後方にかけて1/100秒単位の時間差で突き抜け、この力は後方に行くにつれ弱まることがわかりました。結論からいえば、最後尾が最も生存率が高いことになります。


■座席の列によって衝撃の強弱がある
機内の衝撃
重力加速度の測定では、前方は12G(重力の12倍)で恐らく即死状態、中腹部は8Gで重傷から軽傷、最後尾にかけて6Gまで下がる結果になりました。この結果から、後方の列の衝撃が最も弱いことがわかります。

*例えば、F1レースの高速コーナーや、激しい減速時にかかる重力は5Gに達するといわれ、体重の5倍の重力が身体にのしかかり、体内の血液が偏るので訓練なしでは気を失うといわれています。強行着陸と事故直後の機内の様子は、下の番組トレイラーで見ることができます。

『Plane Crash』番組トレイラー(2分28秒)

実際に、機体の中腹部までは壊滅状態でしたが、最後尾のエリアは、ほぼ原形を留めたままでした。しかし、機内のどの場所でも天井が崩れ落ち、堅く重い金属部品が乱れ飛び、ケーブル類が剥き出しなり機内の宙を暴れ、頭部に致命的なダメージを受ける可能性が高いことがわかっています。

また、この実験によって「不時着時の姿勢(Brace position)」は、生存率を高めることを立証しましたが、頭部と両足に注意しなければならないことがわかりました。

不時着時の姿勢のポイント

不時着時の姿勢

「不時着時の姿勢」は、身体が衝撃時に前方に放り出されたいために考案されたポージングです。シートベルトを装着して、できるだけ上半身を低くしなければいけません。

注意点は、頭や首を守るためにも、頭の上で両手を組む必要があります。また衝撃によって足が前の座席に潰され、骨折する事例が多いので、両足は前席の下に潜らせてはいけません。


非常口近くの座席
数百人の乗客に対して、非常出口の数は限られています。火災が発生すると、機内に煙りが漂い視界が悪くなってしまいます。また、極度のパニック状態になっていると考えられることから、搭乗する際には非常口の場所を確認しましょう。番組では、非常出口から5列以内の座席を確保することを推奨しています。

  • なるべく、最後尾に近い列の座席を選ぶ
  • 非常口から5列以内を選ぶ(非常口の場所を覚えておく)
  • 不時着時の姿勢は、頭部と両足に注意する


電車

電車の先頭車両は危ない?

一般的に先頭車両は、衝突事故や脱線事故などで、最も危険だといわれています。最後尾の車両は、信号機の不良時などで、停止中に追突される危険性がありますが、実は、鉄道事故の中で衝突・追突事故は極めて少なく、脱線事故がほとんどを占めます。2014年9月25日現在で、2014年の国内脱線事故数は8件、衝突事故1件です。(参考・運輸安全委員会

何番目の車両がよいのか?

イリノイ大学の研究によれば、「先頭と最後尾の車両は、衝突・追突する危険性があり、真ん中の車両ほど横転しやすくなる」とのことです。中でも先頭車両は特に衝突・脱線する可能性が高いので、「消去法でいけば、真ん中の車両から後ろ2両目(10両編成だと、7両目)あたりが最も無難ではないか」と述べられています。

(参考・QUANTITATIVE ANALYSIS OF FACTORS AFFECTING RAILROAD ACCIDENT PROBABILITY AND SEVERITY

車両内での場所

車両の構造上、最も揺れるのは連結部に近い車両の両端です。この部分はオーバーハングと呼ばれ、車両の重心を支える支点(車輪)の外側になるので、特に揺れやすくなっています。反対に、最も揺れにくい部分は車輪の真上になり、しかも頑丈に造られています。

オーバーハング

また、モーターが付いている車両は重量があり重心が低くなるので、揺れには強いといわれています。車両の種類を表す記号「モハ」とは、モーターが付いている普通座席の車両を示します。例えば、10両編成では、うち4~5両がモーター搭載車両になります。



車両内での場所
側面追突や車両横転を考慮すれば、窓側から離れた方が良いということになります。また、新幹線のようなクロスシート(横座席)の場合は、進行方向と反対に向いている座席が、衝突時に進行方向に身体が投げ出されないため、より安全といわれています。

  • 通勤電車などは、真ん中から2両目あたりの車両を選ぶ
  • なるべく、車両の車輪の真上にいるようにする
  • クロスシートの場合は、進行方向と逆を向いている座席


自動車と子供

自動車の後部座席はより安全

自動車で最も安全な座席は、一番嫌われる3人がけ後部座席の真ん中だといわています。ただし、シートベルト着用が条件なので、真ん中の座席にシートベルトが無い後部座席の場合は、窓側が安全になります。*米国の運輸省は「13歳以下の子供は、後部座席に座らせるべき」と提唱しています。

ニューヨーク州立大学の調査では、後部座席は運転席・助手席よりも59〜86%危険度が低く、後部座席の中で、真ん中のシートは、窓側より25%も低くなると発表しています。また、車種や排気量、各座席のエアバックの有無は関わらず同じようなデータになるそうです。

(参考・University at Buffalo

チャイルドシートは後部座席

チャイルドシートを設置する場合も、やはり後部座席真ん中が良いとされています。助手席は、衝突・追突時にはエアバッグが開き、圧迫されて危険です。また、助手席に後ろ向きに装着するのは大変危険です。

チャイルドシート使用率は低い

警察庁とJAFが合同で毎年調査している「チャイルドシート使用率」によると、チャイルドシートの使用率は年々高まっていますが、61.9%(2014年)と低く、そのままシートに着席させてケースも多く、懸念されています。

(参考・はじめての自動車保険ガイド

  • 自動車の最も安全な座席は後部座席の真ん中
  • シートベルトの設置が無い場合は後部座席の窓側
  • チャイルドシートは必ず後部座席に

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