原付のふらつき運転との接触事故
なんと、女子高生が原付の走行時にパンを食べていたという本当の話です!
事例
山出義信(仮名・76歳)は都会でのサラリーマン生活を終え、余生を生まれ故郷の田舎へ引っ込んで悠々自適の生活を過ごしていた。
秋の夕暮れ、山出はホンダ・Vitsに乗って7kmほど離れたスーパーへ買い物に行き、自宅へ向かっていた。田舎だけに片側1車線道路といっても幅員は広く、両横は田畑が広がる見通しの良い直線道路だった。ふと前方を見ると、原付バイクに乗った高校生らしい女の子が、何とパンをかじりながら時速30km位で片手運転をしているではないか。
「危ないなぁ」と思いながら山出は、加速しながら中央線寄りに原付を避けるように追越を開始したところ、中央線付近で原付が急に右へ寄れて来て原付の右ハンドルグリップがVitsに接触し、女子高生はその場で転倒してしまった。慌てた山出は30mほど先の路肩へVitsを停車させ、女子高生の所へ駆け寄ったが意識がなく倒れたままだったので、携帯で警察へ通報し救急車を要請した。
病院へ搬送された女子高生の意識は救急車内で回復したが、女子高生は顔面に大きな傷を負い治癒後も痕が残る可能性があった。若い女性の顔だけに後遺障害慰謝料を考えると山出が加入していた保険会社の担当者が青くなったことは言うまでもない。
しかも、女子高生は警察の聴取に事故前後の状況を「私は道路の左側を正常に運転していた」と言い張るばかりで、山出のVits側へ寄れたことやパンをかじりながら運転していたことなど、自分に不利な状況をすべて否定したのである。
追越を掛けられた方にも避けて譲る「避譲義務」がある
双方の言い分が食い違うため後日、当事者を現場へ呼んで実況見分が行われた。山出と女子高生が走行していた車線の真中辺りに女子高生の原付の転倒痕があり、衝突時、女子高生の原付が路肩ではなく車線の真中辺りまで進出して走行していたことが判明したのである。
その結果、基本の山出70:女子高生30から、女子高生に避譲義務違反+10を修正し、山出60:女子高生40という過失割合で決着した。女子高生が走行時にパンをかじっていたといった行為は、過失割合算出には全く関係はない。
「顔は女の命」とされてきた後遺障害も男女平等になった
交通事故などで、外貌(頭部,顔面部,頚部等)に傷痕が後遺障害で残ってしまった場合、以前は男性より女性の方が「社会生活において苦痛を受ける」という理由から上位等級に格付けされていました。
例えば、「外貌に著しい醜状を残すもの」の場合、女子7等級に対して男子は12等級とされていましたが、2010年5月の京都地裁の判決で「男女で格差があるのは男女平等を定めた憲法に違反する」とされ、現在では男女間でこうした後遺障害についての格差はなくなっています。