わき見運転の著しい過失

脇見運転が23歳の若い女性の未来を奪ってしまった悲しい事故でした。

事例

「若い女性は助手席で後ろへ倒れ込み、時々痙攣していました。救急車が来るまでの間、介抱していた男性は『がんばれ、がんばれ』と泣きながら声を掛けていました」事故直後の二人を見た女性はこう語った。


河嶋良一(仮名・27歳)と久保絵里(仮名・23歳)は恋人同士で、その日は河嶋所有のトヨタ・ノアの助手席に久保を乗せデートに出かけていた。

事故は白昼2時頃、周囲に田畑が広がる何の変哲もない国道で発生した。幅8.5mの2車線道路で、路側帯ですら1.5mもの幅がある広い道路である。ただ普通の国道と異なる点は、路肩がコンクリート壁で遮断された自動車専用道路だった。そんな見通しの良い道路の走行(左側)車線を走っていたノアが、時速60km位で左路肩に停車していたトレーラーの後部へ激突したのである。

トレーラーは幅2.5m、全長はトレーラーヘッドも含めると15mにもなる大型車で、広い路側帯を含めても2車線のうち左側1車線をほぼ塞ぐ形で停車していた。

「私がトレーラーに気付いた時はもう20m位しか間隔がありませんでした。それで慌てて右にハンドルを切って追越車線へ逃げようとしたのですが間に合わず、彼女が座っていた助手席側がトレーラー後部の右半分へ衝突してしまったのです」と河嶋は事故状況をこう話し、「車内で彼女と会話に夢中になっていました。それでトレーラーの発見が遅れました」と、泣きながら自分の前方不注視を認めた。

河嶋は軽傷で済んだが、久保絵里は救急搬送された病院で全身打撲で翌日死亡した。

死亡事故の当事者になったら警察での取り調べは犯人扱い

大型トレーラーの運転手・阿部智之(仮名・60歳)は、トレーラーの左後輪6本のうち2本がパンクして走行不能に陥り、ハザードランプを点けて道路上に停止していた。

死亡事故だけに、阿部は警察で4時間にもわたって犯罪者のような取り調べを受けた結果、ケータイの発信履歴から停止2分後に会社へパンクを連絡、その2分後にタイヤ店へ連絡しており、その1分後に河嶋のノアが追突したことがわかった。大型トレーラーが停止してわずか5分後の事故だったわけである。

路上駐車による加害事故は状況により過失割合が増減する

追突なので過失割合は、河嶋100:阿部0が基本判例ですが、トレーラーが停止していた場所は自動車専用道路でもちろん駐車禁止であるため通常なら過失が+10加えられますが、阿部は故障によりやむを得ず駐車しており退避不能であるため-10が修正され、基本の河嶋100:阿部0で決着しました。

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