事故相手の心証を悪くすると立場も悪くなる

事例

高梨勇夫(仮名・37歳)は、訪問販売のため住宅街を20km位の速度で周囲を見回しながら走行していた。ある交差点で、主婦の矢口京子(仮名・32歳)が自転車に乗って左の幅員2mほどしかない狭い路地から突然出てきたので、高梨は慌ててブレーキを踏んだが間に合わず、矢口の自転車前輪に高梨のライトバンの左前部がコツンと当たってしまった。それほど大きな衝撃ではなかったため、矢口はスローモーションのようにゆっくりと左側へ自転車ごと倒れ込んだ。

高梨はすぐに降車して「大丈夫ですか!?」と声を掛けたところ、矢口は「びっくりしましたが、ケガはなさそうです」と答えながら立ち上がった。

その言葉に安心した高梨は「私もびっくりしましたよ。奥さんが突然飛び出してこられるのですから」と言うと、この言葉が矢口の気に障った。「私は飛び出したのではないですよ。路地から交差点へ出るのに一旦止まって左右を確認していたら、あなたの車が当たって来たんじゃないですか!」私には過失がないと矢口は怒り出した。

「とにかく警察を呼んでくれ!」と矢口が捲し立てるので、高梨は携帯で警察へ通報した。

警官が来て実況見分が始まったが、自転車の前輪がやや歪んだ程度で当事者双方にケガなど無く、警官は物損事故で処理しようとしたが矢口は転んだ際に左膝と左肘を傷めたらしくて痛いと言い出した。警官は「お医者さんで診てもらって診断書を提出してください」ということになり、実況見分後、高梨は矢口の住所氏名を控えて現場を離れ矢口は歩いて帰宅した。

外見上ケガもない相手が全治3週間 被害者の心証で決まるケガの度合い

高梨にしてみれば矢口が路地から飛び出してきたことは間違いなく、高梨も前方不注視があったことは認めるが速度もすぐに止まれる徐行状態だった。加入している保険代理店に訊くと「それなら、過失割合は高梨さん70:相手30です」というが、矢口自転車が左右確認のため停止状態だったとすると、高梨に100%過失があることになる。

代理店は続けて「物損の過失割合より、相手さんの診断書が心配ですよ」と脅された。4日後、高梨は警察から呼び出しを受けて出頭したところ、矢口のケガが左膝、左肘打撲で全治3週間と聞かされて驚いた。事故現場で別れてから、高梨はお見舞いの電話一本もしていなかったことが矢口の心証を悪くしたようで、人身事故扱いになってしまった。

全治2週間以内ならOK。15日以上ならキツイ罰金と行政処分が

最終的に、この事例では高梨さんは罰金こそ免れたものの前歴無しで減点6、一発で免停30日になりました。交通事故の減点は、道路交通法に定める違反点数プラス相手のケガの度合いで決まります。矢口さんの診断書が全治1か月以上だったら罰金15万円~30万円というキツイお仕置きも付いてくるほどでした。

事故相手が歩行者や自転車などの交通弱者の場合、できる限り下手に出て相手の心証を良くしておくことが大切です。

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