どちらかが嘘をついている衝突事故

事例

桧山紀子(43歳仮名)は母の介護に行くため、東西に延びる高速道路高架下に沿った国道を西から東へ走行し、ある交差点の停止線手前の右折レーンで右折合図を出しながら信号が変わるのを待っていた。右折するのは国道と片側1車線の県道が交わる交差点だった。

和田信也(34歳仮名)は、取引先回りを終えて時速50km位で国道を東から西へ走行していた。夕方でもあり西日が眩しく感じられた。

二人がいる国道は真中に幅約15mの高速道路の高架がある。それを挟んで片側3車線の上下線がある幹線道路で、和田は高架南側に沿った下り線を西から東へ交差点を越えて直進しようとしており、桧山は高架北側の上り線から右折して南下するつもりだった。この交差点では、前方信号が赤になった後、「青色の右」が出たら県道へ右折できるようになっているが、高架のコンクリート桁が交差点の前後まで迫っていて、右折する桧山からは対向車線への見通しが大変悪かったのがこの事故の遠因になった。

事故は、対向車線を横切って右折を終えようとした桧山の車に和田の車が激しく衝突。桧山の車は1回転して交差点南西角まで吹っ飛んで大破し、和田の車は高架西側のコンクリート桁に激突して右側面が大きく損傷した。

双方が「自分側は青」と主張する信号がある交差点の事故

これほどの事故にもかかわらず二人は打撲程度のケガで済んだが、困ったのは実地検証に来た警察だった。当事者双方が「自分側の信号が青だったから交差点へ進入した」と主張したからである。

桧山は前方の信号が赤に変わり、「青色の右」が出たので発進し時速20km位で右折を開始したと話し、和田は前方が青信号だったので時速50km位で交差点へ進入したと話しているが、西日が眩しかったので信号がよく見えなかったとは言わなかった。

多くの目撃者はいたが、すべて衝突音を聞いてからそちらへ目を向けた人ばかりで、警察も事故直前の信号の色がどちらの主張が正しいのか判定できなかったのである。信号機は正常に動いており、和田が嘘を言っている可能性が高いのだが確証が出なかった。

当事者双方が加入する保険会社同士の話し合い

この事例のように、双方の言い分に違いが起きた場合は、双方が加入する保険会社が調査を入れ事故原因を究明しようとします。しかし、原因が究明されない限り過失割合が出ないので、後は保険会社同士の話し合いになります。こうした当事者双方の主張が異なる事故が増加しているため、ドライブレコーダーという新しい機器が開発されました。

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