高齢者に多いブレーキの踏み間違い事故データを調査〜原因と対策


駐車場でのブレーキの踏み間違い事故

高齢者がアクセルとブレーキを踏み間違えて、急発進や急加速して店舗や民家などへ飛び込む事故が多発しています。踏み間違いの事故のデータ、原因や防止策について紹介します。

アクセルとブレーキペダルの踏み間違い事故件数の推移と特徴

アクセルとブレーキのペダルを踏み違える事故は、近年多発しているように見えます。しかし、実は2004年の7,660件から2013年の6,402件へわずかですが減少しています。

ただし、全体の人身事故件数が同期間で839,343件から566,357件へ約33%も減少しているのに対して、踏み間違い事故の減少率は小さいので相対的には増加傾向を示しています。6,402件は、平均すると毎日20件弱も起きていることになります。大きなニュースとして報道される事故以外にも多数起きています。

年齢別の踏み間違い事故件数

参考・国際交通安全学会「平成22年度研究調査報告
『平成17〜19年の合計データ』を分析したグラフ

踏み間違い事故を、29歳以下、30歳代、40歳代、50歳代、60歳代、70歳代以上の年齢区分で分けると、年齢別の全交通事故件数に占める踏み間違い事故を起こす比率は、70歳以上が他の年齢層の約2.5倍から約4倍と極端に高くなっています。

なお、踏み間違い事故の絶対件数は、29歳以下がもっとも多く、70歳代以上の1.4倍です。その他の年代でも、極端に低くありません。

踏み間違い事故の年代別の構成比や、年代別の全事故に占める踏み間違い事故件数の比率を調べると、以下の「年代別の踏み間違い事故件数構成比」の表です。

以下のデータはすべて2007年から2009年の3年間のデータです。現在は、高齢化がさらに進んでいるため、高齢者の踏み間違い事故比率、絶対件数の2つともに多くなっていると考えられます。

年代別の踏み間違い事故件数構成比
29歳以下27.4%
30歳代13.1%
40歳代10.5%
50歳代14.1%
60歳代15.4%
70歳代以上19.5%
年代別・男女別全交通事故に占める
踏み間違い事故の構成比
男女合計男性女性女/男
29歳以下1.00%0.87%1.26%1.4
30歳代0.61%0.50%0.82%1.6
40歳代0.64%0.54%0.80%1.5
50歳代0.78%0.62%1.12%1.8
70歳以上2.49%2.43%2.81%1.2

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29歳以下の踏み間違い事故の絶対件数が多いのは、推測になりますが、29歳以下の年齢層の方が車を運転する機会が多いこと。さらに免許取り立てによる運転操作が未熟なことなどが考えられます。また、各年代別で免許保有者数に違いがあるため、高齢者がどの程度、踏み間違い事故を起こしやすいかは絶対件数では比較できません。

そこで、年代別の全交通事故に占める踏み間違い事故の比率を見ると、「年代別・男女別全交通事故に占める踏み間違い事故の構成比」の表となります。

70歳代以上は、突出して他の年代層に比べて踏み間違い事故を起こしています。ニュースで報じられる内容から踏み間違い事故は、高齢者に特有の事故と思いますが、実際はそうでなく比較的全年代にわたって起きています。

高齢者の起こす事故には大事故が多く、マスコミが高齢者の事故を特に大きく取り上げている可能性があります。そのため、踏み間違い事故は高齢者に特有なので、若い内はまったく心配しなくても良いと過信するのは危険です。

全年齢層が起こす可能性の事故であるので、今、まだ若いから心配する必要がないと思っても、踏み間違いをしない運転を心がけておく必要がありそうです。

同様に男性と女性で踏み間違い事故の起こしやすさを比較すると、全年齢層にわたって女性の方が起こしやすい結果が示されています。高齢者が踏み間違い事故を起こしやすいことは、多くの人が認識していると思われますが、男女差が意外に大きいことはあまり知られていません。女性はより注意をした方が良いでしょう。

高齢者が踏み間違いを起こしやすい状況

75歳以上の高齢者が踏み間違い事故を起こしやすいのは、道路上、交差点、それ以外の場所で比較すると、道路、交差点以外の駐車場などで多く起きています。その多さは、道路上の約2倍、交差点の約3倍です。

ところが、24歳以下の場合、道路や交差点以外の場所で起こすのは、道路や交差点の約1.5倍と高齢者ほど多くありません。この倍率は、年齢が上がるごとに増加していきます。そのため、高齢であるほど駐車場で踏み間違えないように注意しなければなりません。

また、場所ではなく車をどのように運転していたときに、高齢者は踏み間違い事故を起こしているかを、後退時、発進時、右左折時、直進時で見てみます。すると、右左折時が少なく、後退時、発進時、直進時に右左折時の3倍から4倍踏み間違い事故を起こしています。

24歳以下と比較すると、大きな違いは、高齢者は後退時に24歳以下よりも、約5倍多く起こしています。一方、他の場合は、24歳以下の2倍から3倍と後退時より少ないことです。

このことから、高齢者は、駐車場などで場所で、後退時の発進にもっとも多く踏み間違い事故を起こしていることがわかります。

高齢者が踏み間違いを起こす4つの理由

車をゆっくり運転しているときは、「もう少しスピードを出そう」あるいは、「危険だからブレーキをかけよう」と頭で考えます。しかし、時間的に余裕のある場合でも、その後の動作は多くの人が無意識、無条件、反射的にアクセルペダルを踏んでいます。時間的に余裕があると、踏み間違ってもすぐに修正できます。しかし、時間的に余裕がないとパニック状態になりブレーキを踏むつもりで、そのままアクセルペダルを踏み続けて事故が起きています。

その理由として、以下の4つの理由が考えられています。

①運転免許取得時の反復練習

無意識、無条件、反射的にペダル操作をするのは、運転免許の取得時に練習によるものです。

②アクセルペダルに足をおき、またもっとも使用するのがアクセルペダル

車の運転でのペダル操作で、もっとも多く操作するのはアクセルペダルであり、足をアクセルペダルに常に、軽く触れています。そのため、とっさのときにもっとも反応しやすいのはアクセルペダルを踏むという行為になりやすいからです。

③危険を感知すると無意識に足で体を突っ張る人間の本能

ジェットコースターなどでスピードが出ると反射的に足を突っ張って体を守ろうと反応します。車の場合も、スピードが出て怖いと反射的に思うと、ブレーキを踏む前に無意識にアクセルペダルにかかっている足を踏み込んでしまう可能性があります。

④高齢者はアクセルやブレーキを踏まねばならない状況で踏み間違いする確率が若者に比べ高い

財団法人 国際交通安全学会が高齢者と若者に分けて、ペダルの踏み間違いを起こす確率をいろいろな状況で実験。その結果、より複雑な状況下になるほど高齢者は若者に比べ、約3.5倍の人が踏み間違いをしたことが分かっています。

このため、パニック時の反射的な行動では、つい操作に慣れているアクセルペダルを踏むため踏み間違いによる事故が、高齢者で特に起きるのではないかと考えられています。

車の構造上もブレーキペダルのすぐ横にアクセルペダルがあります。ブレーキとアクセルは運転の基本動作として、相互に使うので非常に合理的な配置です。また、事故を避けるには、とっさのブレーキやアクセル操作も必要なことからも合理的な配置といえます。

しかし、人間は錯覚で間違った動作をすることもあるという前提では、正反対の動作を車に与えるペダルが近くに配置されているというのは、安全上は好ましくありません。


高齢者の踏み間違い事故を防止が難しい理由

踏み間違い事故で多いのは、以下のようなケースです。

  • ゆっくりと発進したが、突然、子どもや犬・猫が車の前に飛び出して、慌ててブレーキペダルを踏んだつもりでアクセルペダルを踏み込んだ。
  • 後退発進でアクセルペダルを踏む感覚が前進とは異なっていたので、思ったよりスピードが出た。ブレーキを踏もうとしたが誤ってアクセルペダルを踏み込んだ。

このように最初は、冷静な発進ができても、何らかの突発的な状況に対して、正しい対応ができていません。突発的な事態に対して、人間は無意識、無条件、反射的に行動します。この体にしみこんだ動作、本能的な動作、高齢による判断能力衰えなどの原因は簡単に修正して、踏み間違いを防止するのは容易ではありません。

常日頃からブレーキを踏むとき、ブレーキを踏み込むという意識をはっきりさせてブレーキを踏む癖をつけると、突発的な場合も少しは踏み間違いを減らせる可能性があります。また、発進する際にAT車であればアクセルを踏み込まないで動かすようにする。

また、周囲に危険がないかを十分に注意して車を発進させることも有効です。しかし、そのように注意しても防ぎきれない突発的な事態が生じたときの踏み間違いが事故につながっているので、対策として十分ではありません。

人間の無意識、無条件、反射的な誤操作を防止する方法

完全に踏み間違い事故を防止するには、踏み間違い防止装置をつけると万全です。その装置は、アクセルとブレーキがひとつになったペダルです。このペダルでは、踏み込むと常にブレーキペダルを踏み込んだことになります。

アクセルペダルを踏み込みたいときは、足を横にずらさねばなりません。ペダルを踏み分ける動作が1種類ではないので、踏み間違える心配がありません。アクセルペダルを踏みこんだ状態にしているときに、誤ってこの踏み込むと、アクセルの踏み込み状態はキャンセルされ、ブレーキペダルを踏んだ状態になり暴走が避けられます。

法律的にも問題なく車検も通る装置です。ナルセ機材という会社が「ワンペダル」という名称で販売しています。シングルタイプ17万円。ダブルタイプ20万円(いずれも税抜き、取り付け費別途)です。(阪木朱玲)

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