ハイドロプレーニング現象で起きた事故の責任はどうなる?
ハイドロプレーニング現象は、水がたまった道路上を車で高速走行するときにブレーキ、ハンドル操作が効かなくなる現象のことです。事故が起こる可能性が非常に高く危険な現象です。道路が水を吸収するようになってから起こりにくくなっていますが、高速道路でも一般道でも、まだ水がたまる場所がたくさんありこの現象が起こる可能性があります。
ハイドロプレーニング現象が起こる理由や起きたときの事故の過失責任、およびハイドロプレーニング現象になったとき、できるだけ被害を小さくする方法について説明します。
ハイドロプレーニング現象とは
ハイドロプレーニング現象はとは、車が水でぬれた路面を高速で走行すると、路面とタイヤの間に水が入り込み、水が潤滑剤の働きをして、すべりやすくなる現象のことです。
タイヤは路面と接触したときに生じる摩擦力があることで、車輪の回転で進み、ハンドル操作で方向を変えて走行できます。タイヤと路面の摩擦力がなくなるとタイヤは空転し、氷の上のように滑りやすくなります。この現象が起きるとブレーキややハンドル操作が効かなくなります。
しかし、ハイドロプレーニング現象は、一定の条件下で、誰にでも起こる物理現象です。このような事故の場合、過失を問われなかったり、過失割合が低くなったりすることがあります。事故が起きたときのために、過失が問われない場合もあることを知っておく必要があります。
ハイドロプレーニング現象を予測して運転する義務と過失責任
ハイドロプレーニング現象が起きることは広く知られている現象のため、ドライバーに危険を予測して回避する義務があります。そのため、この現象で事故を起こした場合、重い過失責任を通常は問われます。
しかし、十分な注意をドライバーが行っていても、ハイドロプレーニング現象が起きていることがドライバーに予測、認識できなかった場合、事故が起きたことはドライバーにとって不可抗力で過失がないとされた裁判例が実際にあります。無条件に過失があると判断してしまうと損をする可能性があります。
ハイドロプレーニング現象が起こる速度と対処方法
過失を軽くするよりも事故を起こさないことの方がより重要です。ハイドロプレーニング現象は、路面が滑りやすい状態のときに高速走行という条件が重なったときに起こります。
路面が滑りやすい状態は、路面に水たまりがあるときや、雨が降り始めのときに泥などが水分を含みクリーム状になったときに起こりやすくなります。また、タイヤが摩耗して溝が浅くなっている場合や、タイヤの空気圧が低いときも起こりやすくなります。
タイヤの種別が違っても起こりやすさが異なり、正常なノーマルタイヤでは時速80キロ以上、スタッドレスタイヤでは時速60キロ以上で起こりやすくなるといわれています。
日頃からタイヤの状態を認識し、滑りやすい路面に注意を払い、タイヤの状態が悪ければ雨に日には速度を控えめにした運転をすることで、ハイドロプレーニング現象を回避できます。
もし、起きても何もしないことがベスト
それでも、ハイドロプレーニング現象が起きたら、ついブレーキを踏みたくなりますが、「ブレーキを踏まない」「ハンドルを切らない」「シフトダウンしない」の何もしないことがベストな対処法です。何をしてもコントロールが効かないので、ハイドロプレーニング現象が起きやすい高速道路では自然に減速するのが、大きな事故を防げる可能性がもっとも高くなります。
一般道路では、進行方向に車や人がいる場合もありますが、クラクションで危険を早めに知らせる方法しかありません。ブレーキやハンドル操作をしてスピンすることで、運よく車や人を回避できる可能性もありますが、より大きな事故になる可能性もあります。
一般的に、高速走行している状態では、先を走行している車も同じ速度で走行している可能性が高く、人も前方にいない可能性が高いので、何もしないのがベストです。何か操作して運よく回避できたとしても、それは結果論でしかありません。(阪木朱玲)