見通しの良い交差点でも衝突事故が起きるコリジョンコース現象とは


見通しの良い道路がほぼ直角に交差する交差点で出会い頭に起こる衝突事故は、「田園型交通事故」または「十勝型交通事故」と呼ばれます。

2015年度の交通事故による死者数は約4,100人ですが、その約1割にあたる400人ほどが、このタイプの交通事故で亡くなっています。非常に多い死亡事故がなぜ見通しが良いにもかかわらず起こるのかについて説明します。

人間の目・脳が誤認して引き起こす事故

コリジョンコース現象

この交通事故は、周囲が田畑だけのような非常に見通しの良い平地で道路がほぼ直角に交差する交差点で起こります。互いに交差点に近づく車は、障害物がないためハッキリとお互いの車からは見えているはずです。

交差点のはるか手前では見えていなかったとして、交差点に近づくにつれて必ず視界に入ります。しかし、見えているにもかかわらず双方の車が同じスピードで交差点に進入することで起きる事故です。

なぜ、見えているはずの車が認識できないかというと、同じスピードで車が交差点に同時に進入してくると、お互いに相手の車は止まっているように人間の脳が誤認識するからです。そのため、同じタイミングで交差点に進入してきているとは考えずに、そのまま進入することで事故が起こります。特定の人にしか起きない特殊な錯覚ではなく、すべての人の目・脳で起きる誤認です。

そのため、たまたま同じ速度で同時に交差点に進入しなければ起きない、特殊な条件下での事故でありながら、見通しの良い道路であるためスピードが出ているという条件も加わって全交通事故の死亡者数の約1割を、この事故が占める怖い事故です。そして誰にでも起きる可能性があります。

コリジョンコース現象とは

この錯覚は、コリジョンコース現象と呼ばれ、車同士だけでなく、船、飛行機でもほぼ直角に交差するときに、条件が同じであれば起こる錯覚です。人間は、前方正面から約20度から30度以上外れた斜め前方向の視野は、周辺視野と呼ばれ認識する能力が、前方を見るときに比べて劣ります。

そのため、同じスピードで同時交差点に進入する条件だと、止まっているように誤認します。本来であれば交差点に近づくにつれて、相手の車がどんどん大きく見えてくるので接近していると分かるはずです。しかし、周辺視野で見ている場合、近づいているとは認識できず止まっていると認識します。

コリジョンコース現象を回避するには

コリジョンコース現象を回避するには、360度見通しの良い一般道路を走行するとき、特に前方に交差点ありの標識を見たら、前方だけを見ないで左右の斜め45度の角度方向も正面に見るようにすることです。なお、高齢になるほど周辺視野の機能は低下していくので、高齢者はより注意深い運転をしなければなりません。(阪木朱玲)

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