高齢ドライバー〜運転免許保有者数・死亡事故件数・免許返納件数の各推移
平成30年5月1日現在の国内総人口は1億2649万人で、うち75歳以上の後期高齢者は1779万人で全体の14.1%を占めています。(参考・総務省統計局「人口推計〜平成30年5月報」)
近年、高齢者ドライバーによる事故のニュースが目立っています。総務省統計局と警察庁のデータをもとに後期高齢者(75歳以上)に絞って高齢ドライバーの現状を調べてみました。
このページの目次
後期高齢者(75歳以上)の人口は10年で1.4倍
参考・総務省統計局「人口推計・年齢別人口」より筆者作成
まず、総人口と後期高齢者(75歳以上)の人口の推移をみてみましょう。後期高齢者の割合が10年で1.4倍になってることがわかります。
75歳以上の高齢ドライバーは運転免許保有者の全体の6.6%
グラフ・警察庁「運転免許統計」より筆者作成
運転免許保有者のグラフです。平成29年版運転免許統計によると、運転免許の保有者の総数は82,255,195人で、うち5,395,312人が75歳以上の高齢者で全体の6.6%。後期高齢者の割合が10年で1.9倍になっています。ただし、これには未知数のペーパードライバーも含まれることを考慮しなければいけません。
近年「若者の車離れ」が問題視されているにもかかわらず、意外にも免許保有者の総数は増え続けていることもわかります。
高齢ドライバーが引き起こす死亡事故は増えていない
グラフ・警察庁「平成29年における交通死亡事故 の特徴等について」より筆者作成
このグラフは原付以上の運転者が第1当事者になっている死亡事故件数の推移です。
全交通死亡事故の件数は驚くほど減少傾向にあります。警察庁は理由として「交通安全教育の普及や車の安全性の向上、信号機や道路の改良などが進んだ結果と考えられる」と分析しています。
しかし、これに対して75歳以上の高齢者が加害者(第1当事者)になっている死亡事故の発生件数は横ばいのような状態で、2017年から若干の減少の兆しがみられます。割合でみると10年前の1.6倍になっていますが、「特に高齢ドライバーが引き起こす死亡事故件数が増えているわけではない」ことがグラフでわかります。
交通事故の「第1当事者」とは
第1当事者とは、直接事故の原因をつくった当事者、または、当事者のなかでいちばん過失が重い人を指します。
高齢者の免許返納率は4.7%
1998年から始まった運転免許証自主返納制度ですが、どれくらいの人が自主返納しているのでしょうか?
グラフ・警察庁「運転免許統計」より筆者作成
2017年の警察庁のデータでは…
- 75歳以上で運転免許を持っている人は5,395,312人
- 75歳以上で運転免許を返納した件数は253,937件
75歳以上の運転免許保有者の4.7%が返納していることがわかります。2007年の返納件数は9,379件なので、10年で年間返納件数が27倍に増えています。
運転免許証自主返納制度とは
高齢ドライバーによる事故の多発を受け、未然に防ぐために1998年4月に運転免許証自主返納制度は道交法改正によって導入されました。運転免許を返納した方は運転経歴証明書を取得(要申請)することができます。この制度に加えて、70歳以上の免許証保有者には免許の更新時に講習の受講の義務、75歳以上には認知機能検査を受けることを定められました。
高齢者だけが「安全技術と交通安全の発展」から取り残されている
今回の調査で感じたことは、車の安全性能の向上や交通の改善が進んだおかげで、全体的な死亡事故件数は減少しているのに、75歳以上のドライバーが起こす死亡事故件数があまり減っていないということです。
後期高齢者だけが「安全技術と交通安全の発展」から取り残されている状態になっています。
筆者の勝手な推測になりますが、これが近年の高齢ドライバーによる事故が目立っている原因なのかもしれません。