〜車の色と交通事故の関係〜

都市伝説「青いクルマは事故が多い」を調べてみました!

野村順一著「カラー・マーケティング論」

知らない方もいると思いますが、「青い車は事故が多い」といわれています。マイナーな都市伝説ですが発端となったのが、野村順一氏の著書「カラー・マーケティング論」です。日本で「車の色と事故」に関して語られるときの参考文献の筆頭です。

この本に紹介されている「自動車の色 事故率ランキング」は、数多くの自動車サイトで紹介されています。自動車のボディカラーと交通事故の因果関係は度々注目されているので、本の内容を詳細を調べてみました。

今回はこの本に書かれている「青いクルマは事故が多い理由」を図解を交えて解説します。

野村順一「カラー・マーケティング論」


自動車の色 事故率ランキング

順位車の色事故率
125%
220%
3グレー17%
4白・クリーム12%
5赤・あずき色8%
64%
7ベージュ・茶3%
8黄・金2%
9その他9%
100%

このランキングは、1968年に出版されたEric P.Danger著「Using Colour to Sell」の資料を参考にしたもので47年前のデータでした。

2048件の交通事故から、自動車を色別に分析されたものです。ただし、場所・期間など、どのように集計したものかは不明です。

「47年前のデータなんてあてになるのか…」と思いましたが、このようなランキングになる原因が、なかなか理にかなう説明になっています。

実は、青・赤・黄がこのように別れているのは、色彩学を学ぶには大変都合の良いデータなので、この「カラー・マーケティング論」で説明されている内容を紹介します。

青い事故車

青い車が事故率1位の原因は「目のレンズの仕組み」にあった?

目がピントを合わせる時、水晶体(すいしょうたい)と呼ばれる部分は、カメラのレンズの役割をします。水晶体を通して、網膜というセンサーに映像を届けています。自律神経によって、水晶体の周りの筋肉が締めたり緩めたりして、水晶体の厚さを調節してピントを合わせていると「カラー・マーケティング論」で解説されています。


水晶体のかたち①

実は、人間の目は色を見るときも、水晶体の厚みを調節しています。


色を見る時も水晶体の厚みを変えている

人間の目は光の波長を感じ取って色を認識しています。「色が違う=光の波長の長さが違う」ということになります。実は、色の波長の長さによってもピントが異なります。これを色収差(いろしゅうさ)といいます。この色収差を解消するために、水晶体の厚みで調整しています。


水晶体のかたち②


左上のグラフのように、人間の目は黄色を基準に、色の波長を感じるとるようになっています。波長が一番長いのは赤、一番短いのは紫になります。赤より長い波長は赤外線、紫より短い波長は紫外線で人間の目では見えません。

色を認識する時にも、波長が長い色ほど水晶体を厚く、波長が短い色ほど水晶体を薄くする仕組みになっているのです。目は「赤色では、実際より近くを見る状態」「青色では、実際より遠くを見る状態」になっています。

チェックポイント①

  • 赤色を見るときの目は、近くを見る時と同じ状態になっている。
  • 青色を見るときの目は、遠くを見る時と同じ状態になっている。

色収差で感じる「進出色・後退色」

色収差によって、赤色は他の色より手前に感じてしまい、青色は他の色より後ろに感じます。赤は実際より近く・大きく見えるので進出色・膨張色に、青色は実際よりも遠く・小さく見えるので後退色・収縮色に分類されます。これはPCの画像でもそのように見えます。


①と②の画像を比べると、赤と青の距離は①は離れているように感じ、②は張り付いてしまっている印象で、距離感が少し不自然ではありませんか?
進出色・後退色01


①の赤色は手前に飛び出て見えますが、②の青色は後ろに下がって見えます。
進出色・後退色02

赤色と青色の距離感には7mの差がある

東京工業大学の塚田敢博士が、直径15mmのランドルト環(視力検査用のCマーク)を用いた被験者実験によれば、平均で「黒地に赤」は最大距離35mでCの方向を視認できたのに対して、「黒地に青」は28mの結果になり、赤と青の色収差には7mの差があることが立証されました。


色収差の実験01

参考・塚田敢「色彩の美学」

チェックポイント②

青い車は、色収差によって実際よりも遠く・小さく見えてしまい視認距離も短い、最も距離間を見誤ることが多いので「事故率が高い=事故が多い」と結論されている。

では、「黄い車が赤い車よりも、事故率が低い」のはどういうことなのでしょう?

黄色を見るときは正しい距離で見えている

黄色の車

色収差がない黄色は、水晶体の厚みでピントを調節することなく認識できます。

黄色を見るときの目は、見たままの状態で正しい距離のピントで見えているので、距離やスピードを見誤ることが少ないのです。

さらに、黄色は目のセンサーになる網膜に、インクがにじんだように映り込む性質があるために、実際より大きく見えます。

ちなみに、ランドルト環の実験では「黒地に黄」の視認距離は51mもあり、黄と青の距離感には実に23mもの差があります。


色収差の実験02

チェックポイント③

黄色いものを見るときの目は、正しい距離で見えている。視認距離も長く、さらに実際より大きく見えているので、最も安全な車の色だと考えられている。


最後に…

色収差によって距離感が異なることにより、事故が起こりやすいor起こりにくい車の色があることは、ある程度説明できると思います。しかし実際のところ、「事故を起こす」の本質的な要因は、ドライバー自身の運転技術や注意力が最も深く関わるのではないでしょうか。


スマホなど「ながら運転」をする方はよく見かけますが、筆者は、高速道路でスポーツ新聞を読みながら運転しているドライバーを見たことがあります!

「危険運転」と「車の色」は関係ありませんから!!




アメリカでは「赤い車は自動車保険の保険料が高い」という都市伝説のような噂があります。

これは「赤い車を選ぶユーザーは、スピードを出す傾向がある」ということからですが、全くのデタラメで、車の色で保険料は変わりません。

近年の「人気色ランキング」では、①白②黒③シルバーの順で、青は4位です。青はやっぱり人気色です!

参考・車の人気色ランキング

ページの先頭へ