〜知っていると教えたくなる「ロゴマークのシークレット」〜
先生が学校で教えたくなる「あの企業ロゴに隠された秘密」
有名企業のロゴマークの由来を調べてみると、それぞれのデザインには深い理由や背景があります。実は、デザイン系のブログ記事では、よくあるテーマなのですが、もう一歩深く掘り下げて調査してみると、意外な発見があったので今回記事を書いてみました。
アップル・ロゴの本当の秘密
世界中のファンが落胆する、デザイナーの衝撃的な告白
ロゴの「リンゴがかじられている」意味は、聖書の『アダムとイブ』の禁じられた果実リンゴのことで、禁断を破った人類の進歩を表している。そして、もうひとつの意味、「bite(=かじる)」と、コンピューターの情報量の単位「byte(=バイト)」をかけていると、日本のメディアでも紹介されましたが、ロゴをデザインしたロブ・ジャノフ(Rob Janoff)さんは、これらの伝説を否定しています。
「がっかりさせると思うけど、リンゴにかじった部分をデザインに入れた理由は、みんながデザインを、チェリー(さくらんぼ)と見間違えないためだよ。それと、象徴的でしょ」とロブ・ジャノフさんは話しています。
アップルのロゴと『アダムとイブ』の関連性は無く、また、本人はデザインした当時、「byte」のことさえ知らず、事実と異なって語られるロゴ誕生の伝説に関心したそうです。
スティーブ・ジョブズからロゴ制作を依頼されたときの指示は「可愛いロゴにしないでくれ」のみで、一切のデザインを任されたそうです。「欠けた部分あり・なし」の2パターンを見せて、結局現在の「かじられたリンゴ」が選ばれました。
参考・Rob Janoff
アップルのロゴの本当の凄さは「黄金比」でデザインされている件!
しかし、この「かじられたリンゴ」のデザインは、実に精巧に計算されていてます。なんと、そのほとんどが「黄金比」で構成されていると、ブラジルのビジュアル・デザイナーThiago Barcelosさんが発見・解明して話題になりました。ロゴは1977年に考案して、コンピューターを使わずに手書きで作成したそうです。
何十年経っても全く廃れない完成されたロゴですね。
フェデックスを有名にさせた矢印
爆発的な口コミを生んだ、デザイン史に残るロゴ
国際宅急便の世界最大手「フェデックス(FedEX)」です。実際にサービスを利用したことがない方でも、この名前や、ロゴをご存じだと思います。フェデックスのロゴは世界的に大変評価が高く、ロゴデザインの特集を組まれるときには必ず紹介されます。
ロゴに隠されたメッセージは、一見分かりづらいですが、EとXの狭間にできる空間が「→」(矢印)の形を模っています。宅急便の「スピード」や「正確さ」を表現しています。
誰かに教えたくなる衝動
ロゴデザインの発注には「100m離れていても、ハッキリ見えるロゴにしてくれ」と依頼されたそうです。
このデザインが提出された当初、フェデックス側はアイデアに関心しながらも「矢印が目立つように色を付けて欲しい」と「→」を強調するように要請しましたが、デザイナーは「とんでもない!」と反発しました。
デザイナー側が主張した、この矢印に色を入れなかった意図が肝で、街中で走っているフェデックスの車のロゴに隠された秘密を「知っていると、誰かに言いたくなる」という口コミの拡散性を狙った、素晴らしいアイデアが込められています。実際に、この口コミは世界中のメディアで、紹介されるまでに至りました。
ちなみに、イスラム圏のフェデックスのロゴには、アラビア語バージョンが存在します。もちろん「矢印」が入っていますが、「矢印」はアラビア語と同様に左の方向になっていて、こだわりが伝わります。
書いていて気がつきましたが、このブログで紹介していること自体、フェデックスの思惑通りになっていますね。。
フェラーリへの挑戦状
「宣戦布告」を表したデザイン
ランボルギーニは元々農業用トラクターを製造販売していた会社でした。事業に成功した社長のフェルッチオ・ランボルギーニは、大好きなフェラーリを数台所有していましたが、フェラーリの品質と乗り心地には、日頃から不満がありました。
ある日、フェラーリの動かなくなったクラッチを、フェルッチオ社長が自ら分解してみると、クラッチの部品が自社のトラクターと全く同じ製品だったことが判明して不満が爆発。
フェラーリ社に出向いて「高級車なら、もっと良い部品を使ってくれ!」と詰め寄ったところ、フェラーリの社長エンツォ・フェラーリが「たかが、トラクター会社の社長が、スポーツカーを語るな」と高慢な態度で一蹴したのが、ランボルギーニ社がスポーツカーを開発する火付けになったと伝えられています。
憤慨したフェルッチオ社長は「俺が、もっと良いスポーツカーを造ってやる」と、フェラーリの顧客をターゲットに、新たに自動車会社を設立したのが始まりです。これ以降、ランボルギーニとフェラーリは、犬猿の仲として知られるようになりました。
対抗心をむき出しにしたエンブレムが支持された
ランボルギーニのエンブレムに「闘牛」が使われている理由は、フェラーリの「跳ね馬」に対抗したのと、「牛はトラクターへの誇り」として語り継がれています。(*実際の理由は、フェルッチオ社長が大の闘牛好きで、本人も牡牛座生まれだからだそうです。)
「因縁めいた逸話」と「宣戦布告のエンブレム」が、男のロマンとして語りつげられ、大成功する要素になったことは間違いありません。
ランボルギーニ第1号車「350GTV」は、当時のフェラーリの性能を、遙かに超えていたそうです。単なるモノマネ自動車会社に成り下がらなかった、ランボルギーニ社の功績は凄いの一言です。また、現在でもトラクターを生産し続けているのも、堅いプライドを感じさせます。
ペプシの奇妙なブランド戦略
何かと脚光を浴びたロゴ
ペプシのブランディングと広告は、50年間以上「BBDO」という米国最大手の広告代理店が担当してきましたが、2008年のロゴデザインの変更を区切りに、Arnell Groupという、DKNY・サムスン・クライスラー等の企業を、ブランディングで成功に導いた経緯がある広告代理店に乗り換えた事で、関心が集まりました。
新しいロゴの制作にペプシはArnell Groupに、100万ドル(約1億円)支払い、制作期間は5ヵ月かけられました。(*うち1ヵ月間、制作者は日本を含めたアジアに、ロゴの構想を練る修行の旅に出かけたそうです)
新ロゴの発表は世界中で大規模に行われましたが、なによりも、メディアの興味を引き付けたのは、同時に公開された27ページのデザイン制作資料でした。
この『BREATHTAKING Design Strategy(息を飲むほどのデザイン戦略)』と題された公開資料が、映画「ダ・ヴィンチ・コード」を彷彿させるような内容で、話題になりました。
ー以下が資料です
資料の概要
- 過去のペプシのロゴマークや、ボトル・缶製品など、デザインの伝統を徹底的に解析、「ペプシDNA」として、未来へ継承を示している。
- 黄金比・ピタゴラスの定理など、人類5000年に渡るデザイン哲学を研究して、最も美しくデザインされている。
- 相対性理論・重力学など、「万有引力」に基づいて考案されていて「消費者がロゴに引きつけられるパワー」が込められている。
- 角度によって表情が変わる「スマイル・フェイス」は、製品によっても若干異なるデザイン。
- 宇宙学・磁気流体力学・風水学・地球の磁場(じば)なども反映されている。
リニューアルで大騒ぎした割には、前のロゴとあまり変わっていないことに加えて、公開資料が「緻密に考案されたデザインのようだが、バカバカしい」「訳が分からないけど、面白い」など、賛否両論の論議を呼びました。そして、この論議がさらなる口コミを生み出しました。
実は、総費用1200億円のキャンペーンだった
ロゴデザイン料が100万ドルと巨額だった事が注目されましたが、実はこの費用は「大海の一滴」だったといわれています。
その理由として、世界中のペプシの巨大広告や、自動販売機を全て新しいロゴデザインへの差し替えと、リニューアルキャンペーン費用には、「120億ドル(1200億円)のコストがかっている」と経済評論家が分析しています。
ロゴデザインに100万ドルを投じて不可解な資料を公開したのは、ロゴのリニューアルを起爆剤とした、ペプシに興味を引かせるためのバイラルキャンペーン(口コミを意図的に広める仕組み)だったといわれています。色んな意味で、人々に興味に巻き込むブランド戦略ではないでしょうか。
グーグル誕生の秘話
学生ベンチャーから始まったエピソード
最後にGoogleを紹介します。まず、「Google」という名称になった経緯が面白いです。 元々「Google」という単語は存在しない造語です。語源になったのは、世に存在する最大の数の単位「Googol(グーゴル )」という「10の100乗」を意味する数学用語です。ちなみにGoogolは、「万・億・兆・京・・」などの漢数字では存在しません。
「膨大な数の情報から、探したいものを見つけ出す」という意味が込められています。
10,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000
となり、0が100個つくわけです。
では、なぜ「Googol」が「Google」になったのでしょう?
創業者のラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンは、スタンフォード大学の博士課程に在学中に「ウェブ検索エンジン」に関する論文を共同執筆したあと、大学を休学して検索エンジン会社を設立することになりました。
社名を考えているとき「一番大きい数の単位ってなんていうんだろう?」と、ネットで天文学的な数の単位をリスト化したサイトを探し出しました。
そのサイトで「最大の単位」として紹介されていたのが、「Googol」のスペルを間違った「Google」でした。 2人は「Google」を社名として気に入りましたが、後日になって、友人からの指摘を受けて「Google」が、ミススペルだったことを知ることになりますが、「まあ、これでいいや」と、そのまま採用したと明かしています。
Googleのロゴは無料のデザインソフトGIMPで作られていた!
グーグル・ロゴのオリジナルは、会社として設立した1998年に創業者のひとりセルゲイ・ブリンが、無料のデザインソフトGIMPで作ったものです。
1999年にはロゴマークの商標登録のために、当時スタンフォード大学でデザイン学科の講師で、トランプカードでデザイン賞を受賞した経験があるRuth Kedarさんに依頼して、より洗練されたデザインに仕上げられています。
ロゴの”L”だけが緑色になっているのが特徴です。「Googleのロゴは、色の三原色(青・赤・黄)で構成されているが、“L”の緑色は『Googleはルールにとらわれない』という経営哲学が込められている」と説明されています。意外と面白い発想ですね。
Ruth Kedarさんは、「あの学生2人が作った会社が、まさかここまで成長するとは想像もしなかった」と依頼された当時を振り返るそうです。彼女がデザインしたロゴを商標登録した直後には、グーグルは驚異的な急成長を遂げ、今日に至ります。