被害者の思いを加害者にぶつけられる「被害者参加制度」とは


死亡事故など重い、あるいは悪質な交通事故では、被害者や被害者家族の気持ちは金額的な補償がなされても、まったく納得ができません。裁判は、残念ながら被害者の気持ちを尊重した進め方ではなく、ある意味では事務的に進められていきます。

従来、交通事故の裁判に限らず被害者は裁判で気持ちを述べることはできませんでした。しかし、被害者の気持ちが無視されていけないということから、2008年12月1日から始まったのが被害者が裁判で気持ちを述べられる被害者参加制度です。納得できないときはこの制度を利用することで、気持ちが多少なりとも安らぐことが期待できます。被害者参加制度について解説します。

被害者参加制度とは?

被害者本人や遺族が、裁判所の許可を得て、刑事裁判に参加できる制度のことです。この制度は、一定の刑事裁判に参加する権利はありますが、義務ではありません。「参加する/しない」は自由です。

加害者の顔を見ることも、そばにいることも、同じ空気を吸うことも嫌という被害者もいますから当然のことです。ただし、すべての交通事故裁判に参加できるのではありません。交通事故裁判では、加害者が「危険運転致死傷罪」「自動車運転過失致死傷罪」および「業務上過失致死傷罪」に問われている場合のみです。

被害者参加制度を利用のための手続き

被害者参加制度を利用のための手続きは以下のようにして行われます。

  • 事件を担当する検察官に参加を申し出る。
  • 申し出を受けた検察官が、裁判に参加することに対することに対して意見を付して裁判所に通知。
  • 裁判所は被告人や弁護人の意見を踏まえて裁判への参加を許可するかどうかを判断。
  • 裁判所が許可して参加できます。

被害者参加制度でできる6つのこと

被害者参加制度を利用すると以下のことが可能になります。

  1. 第1回の公判前に事故の刑事記録の閲覧や書き写すことが可能です。
  2. 傍聴席でなく検察官側の席に座って裁判に参加できます。また公判の期日も考慮してもらえます。
  3. 検察官に対して意見を言い、検察官がその意見を取り入れない場合、検察官は被害者にその理由を説明してもらえます。
  4. 被告人に対して直接質問ができます。
  5. 被告人に対して情状酌量を求める証人について質問ができます。ただし、有罪無罪を決める犯罪事実ではなく、刑の量刑を決める情状に関する質問のみです。
  6. 被害者の心情を裁判官に訴えること、被害者が考える被告人対する求刑を最終意見陳述として述べることが可能です。

これらの権利を行使することで裁判の進め方を事務的ではなく、ていねいに行わねばならないと裁判官と検察官に強く意識させられます。特に、事故の被害者が死亡している場合、加害者側の主張に沿って裁判が行われる危険性がありますが、これを防止できます。

被害者参加制度を利用しても、気持ちが晴れることはないと思われますが、加害者の事故後の態度が満足できない場合、この制度を利用すると気持ちを多少でも軽くできます。そのような場合には積極的に利用したい制度です。(阪木朱玲)

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