渋滞車列で起こった出合い頭衝突事故

当たり前の話ですが、交通事故はお互いが相手を認識できない状態で起こりやすいのです。
相手が見えていれば回避措置を取れますが、突然眼前に現れるから止まりきれず衝突してしまいます。

事例

大学生の加島晋太郎(仮名・19歳)は、バイトを終えて片側2車線道路の路肩を90ccバイクで時速30km位で走行していた。2車線ある道路はひどい渋滞で延々と車の列ができていて、いつもの通学路だが夕暮れ時だけに周囲が見にくくなっていた。

営業マンの神山貞夫(仮名・36歳)は加島とは対向車線のセンターライン付近で、ライトバンの右指示器を出して右折の機会を窺っていたが渋滞の列に阻まれていた。営業会議が始まる時間が迫っていたため早く帰社せねばと少し焦り気味だった。しばらく待っていると神山を見かねた渋滞車両のドライバーが少し車間が空いたのを機会に手で「行け」という合図をしてくれたので、神山は渋滞車両の間を縫うようにそろそろと右折を開始した。

2車線目を過ぎようとする時、神山は路肩走行して来るバイクや自転車が気になり左側を目視確認するため時速10km位の徐行をしながら出て行ったのだが、運転席から見ようとするとどうしても車体のフロント部分が前に飛び出してしまう。そこへ加島のバイクがあっという間に走行して来て、神山ライトバンの左前輪付近に衝突したのである。加島は衝撃でバイクから投げ出され、神山ライトバンを飛び越えて交差点角の止まれ標識ポールに激突し路上に落下した。

朝夕の通勤時間帯には必ず路肩走行のバイクや自転車がいる

加島はフルフェイスヘルメットをかぶっていたため頭部に傷は負わなかったが、標識ポールへの打ち所が悪く肋骨3本の骨折、左大腿骨つけ根の骨を粉砕骨折してしまった。通行人が119番したため、5分程度で救急車が現着して病院へ搬送されたが、全治3か月の重傷を負った。

加島も渋滞車両の間に注意しながら走行していたが、夕暮れ時でもあり神山ライトバンのグレーの車体が周囲に溶け込んだ形になり、見えなかったとベッドの上で話している。神山は警察の実況見分などで営業会議に間に合わなかったことはもちろん、罰金はなかったが行政処分で60日の免停になってしまった。

事故類型で最も多い出合い頭衝突、注意していても防げないことが多い

神山も十分注意しながらそろそろと頭を出したのだが、こうしたケースはやはり直進車優先の原則が働く。加島の前方不注視も過失になるが速度違反はなかった。お互い注意しながら走行しているのだが出合い頭事故とはやむを得ず起こるものと言っていいだろう。

事故証明書で記載される事故類型でも最も多いのが「出合い頭衝突」だ。この事故では双方とも過失修正される要素がなく、判例通りの加島30:神山70の過失割合で決着した。

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